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休憩時間

マイルス・デイヴィスの「On the Corner」がお気に入りで、「ちょっと音楽聴こうか」という時に何気なくレコードを手にすることが多い。このアルバム、聴いていただければわかるが、冒頭に出てくるメロディというかフレーズが発展しながらずーっと繰り返される。マイルスのトランペットをはじめとしてトラックごとに総勢10名くらいのセッションだろうか。これが1972年、昭和47年にリリースされたのだから、その先進性に改めて驚く。

アルバムの感想を繰り返そうという話ではなく、そんなお気に入りのアルバムなので、つい最近、CDも買ってみた。電子的な処理をふんだんに含んだ作品なのでデジタル処理されたCDも面白かろうと思って聴いてみた。果たして聞こえてくる音楽はそんなに違わない。厳密に言えば楽器のバランスが違ってリズムセクションの音が強調されていたり、CDはトラックが進むにつれなぜか入力レベルが高くなったりといった違いはあるのだが、出てくる音楽が全然違ったりはしない。なのだが、一点だけ大きく違う。と言っても巷間オーディオファンの間で時に厳しく議論されてる高尚な音の違いの話ではなく、当たり前の話なのでがっかりしないでほしいのだが、CDには休憩時間がないのだ。

「休憩時間って何?」と思われるだろう。A面とB面の間の時間である。レコードはトラック2までがA面、そこで盤面を裏返す必要がある。強制休止である。2曲目が終了するとおもむろに立ち上がり、日によってそのまま裏返して聴き続けることもあれば、そこでトイレに行ったり、飲み物を取りに行くこともあるし、時間がなければそこで終わりにしたりする。いずれにしても、トラック2とトラック3の間には物理的に休止が入るのだ。翻ってCDはもちろんトラック1~4までが連続して再生される。CDはいつでも停止することができるが、能動的な停止が求められるので、停止する時は通常聴くのを止める時である。

この違いから何が起きるか。きわめて個人的な話であるが、「On the Corner」のCDは非常に退屈である。トラック3以降はこちらの集中力が途切れる。いつまでも同じような音楽が続いて苦痛だ。その結果、CDを買って以来、最後まで聴けたことがない。反対にクラシック音楽を聴いている時、レコードは煩わしいと感じることがある。起承転結、最後まで一気通貫で進んでほしいと思う時に盤面をひっくり返したりするのは興ざめである。レコードとCD、僕にとっての分け目は意外とこんなことかも。
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鋭い!

ばけぺんさん こんばんは。

鋭いところをついてきましたね(笑) 実は私も最近CD再生復活して感じるのですが ジャズの場合CDで聴くと途中で飽きちゃう場合あるんですよね~
長尺ものもあるのですが大抵は曲は短く 短編小説みたいなものでしょうか。

それに引き換えクラッシックは長編小説さながらの物語のような構成が多いのでA面、B面途中で裏返しとなると興ざめしちゃいますよね。

音楽を心地よく聴くのはこの休憩時間、間合いが重要なのかも?

ご賛同いただき光栄です。

キタサン、こんばんは。コメントありがとうございました。

良かったです。こんなローファイな話に賛同していただけて(笑)。でも、ジャズやクラシックの小品がCDよりレコードに合うのはメディアのオーディオ的品質からと言うより、仰る通りこうした短編小説を収録するにはCDの収録時間が長すぎるからだと思うんですよ。

時間が余っちゃうもんだから余白に別テイクを収録しましたってCDもジャズには多いですが、いくら良い演奏でもずっと聴いていると飽きちゃいますよね。

そういう部分を抜きにすれば、レコードもCDも両方、普通に聴いている分には十二分に良い音がすると思います。

振り返れば反省頻り

ばけぺんさん、こんばんは。
とっても面白いお話で、自分の場合はどうなんだろう、と、振り返ってみました。私の場合は、ばけぺんさんも御存知の通り、PCオーディオでクラシック音楽を楽しんでいまして、さて、その聴き方は、と言うと。恥ずかしながらこれが結構不真面目な聴き方をしてるんですね(^^)。
ある時は幻想交響曲の第2楽章だけを繰り返し聴いたり、またある時は無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番の7、8曲目だけを繰り返したりとか、とにかく全曲を一気通貫で聴くことがマジ少ないです。通して聴くのはブログ記事投稿に先立って聴く時と、あとは他のブロガーさんの紹介記事で聴いてみたいと思った時ですね。すみません。休憩時間のお話から何だかそれてしまいました。
そうそう、再生ソフトで一元管理されたライブラリーから同じ曲を異なる演奏家で聴き比べたりして楽しんでもいますね。

No title

こんばんは。
自分もクラシックが中心ですのでLPを聴くときはちょっと気になります。
ちょっと逸れるかもですが、例えばチャイコフスキーの後期交響曲集(4-6番)の2枚組を買うと、ほとんどの盤で5番がディスク1と2に跨ってしまってます。これが非常に気に障って仕方ないです(笑)。

akifuyu102さん、こんばんは。

こんばんは。コメントありがとうございました。

恥ずかしながらなんて、とんでもないです。PCオーディオならではの聴き方で、便利な操作で好きな音楽を繰り返し聴けるのも新しいメディアの利点ですよ。CDチェンジャーなんてのもありましたし、僕の旧車にも付いてますが、これはこれで便利快適です。

クラシックにせよ、他の音楽にせよ、メディアで聴くことのメリットは好きな時に好きな音楽を好きなだけ聞けることだと思いますので、そういう楽しみ方は全然ありだと思います!

> そうそう、再生ソフトで一元管理されたライブラリーから同じ曲を異なる演奏家で聴き比べたりして楽しんでもいますね。
これなんて、特に楽しそうです!

七味とうがらしさん、こんばんは。

こんばんは。コメントありがとうございました。

> ちょっと逸れるかもですが、例えばチャイコフスキーの後期交響曲集(4-6番)の2枚組を買うと、ほとんどの盤で5番がディスク1と2に跨ってしまってます。これが非常に気に障って仕方ないです(笑)。

そうなんですよね。盤面ひっくり返す以上に複数枚にまたがるのは興ざめですね。でも、最近、よく買うボックスセットだとCDでもこれが起きがちです。大した手間ではないのですが、収録された音楽の間とアクションのバランスが合わないというか。。ちょっと意味不明なコメントかもしれませんが。。

No title

ばけぺんさん
すいません、続きます。
自分はそこに作り手と買い手(聴き手)の良心、愛情のようなものを感じます。
曲を途中でぶった切ることについて、ぶった切られることについてどう感じるか?
CD3枚組にするべきですよね。ホントなら。
なんて偉そうに云っていますが、でもやっぱり2枚組、というか安いほうを買っちゃいます。
それほど音質にこだわらない盤、演奏であれば単売盤を探すこともあります。

七味とうがらしさん、こんばんは。

こんばんは。コメントありがとうございます。

昨日の夜、ばたばたとコメントしてしまって勘違いしていたことに気付きました。七味とうがらしさんのコメント、2枚組のCDの話でしたね。すいません、きちんと読まず。。

> 自分はそこに作り手と買い手(聴き手)の良心、愛情のようなものを感じます。
> 曲を途中でぶった切ることについて、ぶった切られることについてどう感じるか?
> CD3枚組にするべきですよね。ホントなら。

いや、本当、そう思います。収録時間が合えばどう組み合わせても良いってもんじゃないと思います。

> なんて偉そうに云っていますが、でもやっぱり2枚組、というか安いほうを買っちゃいます。
僕もまったく同じです。3枚組を2枚の価格で売ってくれるといいですね(笑)。
実際、CD作成の原価なんて微々たるものだと思いますし。
一方、曲によってはぎりぎり1枚で収まる長さのものもありますが、これを1枚にするか2枚にするかの判断基準てなんなんでしょうね?レコードの場合、あまり長時間録音すると音質に問題が生じますが、CDでも同じようなことがあるのでしょうか?
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