ストラヴィンスキー「春の祭典」 : ロト

ロトストラヴィンスキー

「春の祭典」を初演当時の楽器と奏法で再現したというロト/レ・シエクルの録音。2014年度のレコード・アカデミー賞を受賞している。そもそもストラヴィンスキーの作品が初演時には現在と異なる楽器を想定していたという事実が驚きだった。考えてみれば確かにすでに100年以上前の出来事ではあるが、ちょうど中間に当たる60年代の演奏は楽器も奏法も現在とさほど変わらないような気がする。管弦楽はどこかで歩みを止めてしまったのだろうか。

この演奏、最初に知ったのはakifuyu102さんのサイト(「音楽いろいろ鑑賞日記」)だったと思うのだが、遅ればせながらCDを入手。HMVのサイトを見ると最初のファゴットから驚愕なんて書いてあるもんだから、どれだけ違うのだろうと思って聴きだしたのだが、出てきた音は期待過剰で肩透かし。響きが素朴な感じはするものの極端な違いはない。聴き続けていくとなるほど管楽器も弦楽器も響きが透明で全体に軽やか。「春の祭典」に少し「プルチネルラ」をブレンドしましたみたいな感じ。

映像を見れば印象もずいぶん違うが、この録音、そうした違いを楽しむよりもロト/レ・シエクルの演奏そのものが実に素晴らしい。管楽器はところどころスコア通りに吹くこと自体難しそうに聞こえるが、快速なパッセージ見事にこなしているし、ノン・ヴィヴラートの弦はモダン楽器以上に妖しい雰囲気を醸し出している。ライブ録音だけに全体を通じてスリリングな緊張感が漲っていて全曲あっという間である。とても良い演奏。
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マーラー交響曲第9番 : バーンスタイン

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マーラーの交響曲の中で9番が一番好きなので、この曲についてはもう何度も取り上げているが、その中で以前記述したことを今日は修正したい。

バーンスタインの9番にはNYP、BPO、ACO、IPOと4種類の録音がある。その中で一番最近リリースされたイスラエル・フィルとのライブ録音を聴いた時に書いた記事の中で、有名なBPOとのライブ盤を一言で言えば「イマイチ」と書いたのだが、今日、限定盤として販売されているSACDバージョンを聴いたところ、印象がガラッと変わってしまった。

まず、このバージョン、おそらく今までとは違うマスタリングだと思う。もちろん、SACDなのでDSD化されているが、それより重要なのは従来盤に比較してはるかにライブ感がそのまま収録されている点である。冒頭から聴衆ノイズのレベルが高い。一方、楽器の音は手持ちのCDに比べてダイレクト感が減っている。CDの編集の時にはオーケストラの音圧を高めて相対的に聴衆ノイズを減らしていたのだろうか。また、従来のCDでも聞こえたバーンスタインの声がより鮮明に聞こえる。それはオケに対する指示に聞こえることもあるし、ここ一番という時に唸り声だったり、あるいはメロディを口ずさむような声だったりいろいろだが、CDの時より存在感が大きい。

結果的に、このSACDからはバーンスタインとBPOの世紀の一期一会という雰囲気がビンビンと伝わってきた。不思議なもので、ノイズが多いにも関わらず、こちらの方がずっと演奏に没頭できるし、第一楽章からこんなに緊張感漲る演奏だったかと驚く。結構退屈してしまうことの多い中間楽章も手を変え品を変え変幻自在の音楽だし、何と言っても最高なのは最終楽章。バーンスタインの唸り声に続いて弦楽器が総奏するところなんてまさに鳥肌が立つ。確かにこれは良い演奏だ。

ショスタコーヴィチ交響曲第10番 : インバル

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インバルは若い頃すでにフランクフルト放送響と組んでブルックナーとマーラー、さらにウィーン響と組んでショスタコーヴィチの交響曲全集を録音している。大曲目白押しのこの3人の交響曲全集をすべて録音した指揮者というだけでも珍しい(というか唯一ではなかろうか。(とこの記事を書いた時に思ったのだが、ハイティンクもそうだった。。))というのに、都響とチェコフィルを指揮して再度マーラー全集を録音した上、最近、都響単独で実に3回目の全集を完成した。都響とはブルックナーの交響曲も録音を重ねているし、実に精力的である。

都響とのショスタコーヴィチは4番の演奏がレコードアカデミー賞を受賞するなど高い評価を受けている。4番はウィーン響との演奏を持っていて気に入っているものだからまだ都響との演奏は聴いたことがなかった。が、今日、都響との10番を聴いたところ、これが確かに優れた演奏だったので、近々、4番も買おうと思う。

先に結論を書いてしまったが、都響とインバルの演奏はこの曲の魅力を余すところなく存分に描き出している。この演奏に聴く都響の技術の高さにも驚かされた。指揮者の指示に一糸乱れることなく万全のアンサンブルで対応している。正直、こんなに上手なオーケストラだったとは知らなかった。ダイレクトカット盤を販売したり同じ演奏のワンマイク録音盤を併売したりとオーディオ的なところに強いこだわりを持つExtonレーベルだけに録音も素晴らしい。これは名盤である。

シベリウス交響曲第1番、第4番 : デイヴィス

先週から悪化した風邪がなかなか治らない。まとめて何日か安静にしていればすぐに治りそうなのだが、そういう時に限って仕事の予定が込み合っていたりして思うように行かない。体調に不安を感じつつ、今週はちょっと久しぶりに大阪出張に出かけた。羽田を離陸後しばらくしたら右側に富士山が綺麗に見えた。

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富士山も見事な雪化粧だったが、大阪も思った以上に寒かった。天気は良かったものの風が冷たい。二日間あちこちと顧客訪問しているうちに恐れていたとおりすっかり風邪をぶり返してしまったようだ。ということで今週末は外出を控えて睡眠補給と体力回復に努めることにした。

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今日はいつもよりずいぶんゆっくり起きた後、のんびりと音楽鑑賞と読書をしながら一日を過ごした。何枚かCDを聴いたがその中で最も印象に残ったのがデイヴィス/LSOによるシベリウスの交響曲第1番と第4番。デイヴィス/LSOにはセッション録音の全集もあるが、これは2006年と2008年に行われたライブを収録したもの。

デイヴィス/LSOのシベリウスは90年代のセッション録音も素晴らしい。その前のBSOとの演奏も含めてこの人のシベリウスに外れなしである。第1番も第4番も悠揚としたテンポの中、スケールの大きな演奏が展開される。すでに80歳前後の録音になるが、演奏に弛みは一切ない。

音楽のツボを押さえた演奏で盛り上がるところは盛大に盛り上がる。金管も打楽器もなかなかの迫力だが、最強音の後に続く静かなパッセージの美しさがこの演奏をとても上品なものに仕上げている。名盤。

R・シュトラウス「アルプス交響曲」 : ハイティンク

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先日のメータ盤に続いてハイティンク/LSOによる「アルプス交響曲」を聴いた。LSO自主制作盤はゲルギエフのマーラーやコリン・デイヴィスのシベリウス等、何枚か所有しているが、演奏・録音ともに優れているものが多い。今のシステムでは聞けないのだが5.1ch録音も収録されている割には価格も手ごろ。アプローチが異なるとはいえ、BPOもぜひ見習ってほしい。

この録音が行われた段階ですでに80歳に手が届きそうなハイティンクであるが、演奏はもう見事としか言いようがない。若い頃の録音に比べれば多少テンポが落ちていると思うが、高齢化に伴う緩みではなく、まさに円熟の為せる業だと思う。不要なデフォルメは一切なく、淡々とした指揮であるが、音楽は自然に盛り上がる。実に感動的。録音も良い。

R・シュトラウス「ドン・キホーテ」 : カラヤン

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カラヤンがBPOとEMIに録音したR・シュトラウスの管弦楽曲をまとめた3枚組のSACDボックスセット。いずれもシングルレイヤーの限定盤である。カラヤンのR・シュトラウス録音は何種類か存在するが「家庭交響曲」はこの録音しかない。「家庭交響曲」の演奏をSACDで聴きたいがためにこのボックスセットを買ったようなものだ。

せっかく買ったのだが、シングルレイヤーなのでSACDプレーヤーでしか聴けない。最近はずっとPitRacerを聴いててSACDは聞かなかったのだが、今朝、ちょっと動作に気になる点があったPitRacerを点検に出したので、これを機会に今日はたまっているSACDをSCD-DR1で聴くことにした。

最初に聴いたのが「ドン・キホーテ」だったのだが、カラヤン/ロストロポーヴィチ/BPOの演奏を最新リマスタリングされたSACDで聴くというのは何とも贅沢で「悦楽」といった感じである。

カラヤンの「ドン・キホーテ」には古いフルニエとの演奏もあり、節度があって品の良いそちらを推す人も多いと思うが、こっちの演奏は超大物揃いの一大娯楽作品という感じの仕上がりで聴いてて実に面白く楽しい。R・シュトラウスの豪華なオーケストレーションを堪能するのには最高の一枚だと思う。名盤。

ブラームス クラリネット五重奏曲 : 東京カルテット

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東京クァルテットにクラリネットのジョン・マナシーを加えたブラームスのクラリネット五重奏曲は2011年の録音。

以前、シューベルトの弦楽五重奏曲を聴いた時もそう感じたが、東京クァルテットの演奏はとても上品で、はかない旋律を慈しむように優しく奏でる。クラリネットのマナシーは写真ではまだ若い奏者に見えるが、四重奏に合わせてか、声高に主張することなく落ち着いた演奏を聴かせてくれる。

組み合わせのピアノ五重奏曲ともども静かにじっくりと聴くのにふさわしい素敵な演奏だ。一つ一つの楽器を強調しない自然な録音も好印象。

シューマン交響曲第4番 : サヴァリッシュ

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サヴァリッシュのシューマンと言えばドレスデン国立管弦楽団と録音した全集が有名だが、この第4番はバイエルン放送響とのライブ録音。2003年のミュンヘン・オペラ・フェスティバルでの演奏だが、ライナーノーツによれば、この録音はバイエルン国立歌劇場から80歳を祝ってサヴァリッシュに贈られたということだ。

サヴァリッシュの指揮は非常にみずみずしく、とても80歳の指揮者が振っているとは思えない。盤石の解釈で流れるように演奏が進むが、決して単調にならず表情は豊かで細かい。それに打楽器、特にティンパニのスパイスが効いていて実は熱い演奏である。ライブ録音で聴くサヴァリッシュはスタジオ録音とまた違った一面を見せてくれる。

第三楽章まで細かい変化はあるものの基本的にインテンポで進んでくるが、終楽章の導入部で一度ぐっとテンポを落とし、主題でまたテンポを上げる。この辺り、指揮者によってはあざとく感じてしまいそうなものだが、サヴァリッシュの演奏はあたかもそれが必然といった説得力がある。もっと単純に言うと、聴いてて実に気持ち良い。このまま快速に最後まで行くかと思うと最後でもう一度ぐっと溜めてからフィナーレを迎える。いや、これはなかなかの名演である。

併録されているのはバーバーの交響曲第1番。初めて聴く曲でハッキリ言ってよく分からなかった。もう少し聴いてみないと何とも言えない感じ。最新の優秀録音と比較すると抜けがもう一歩と言ったレベルの録音だが、十二分に演奏の素晴らしさを伝えてくれる。

シューベルト ピアノ五重奏曲「ます」 : 田部/カルミナ四重奏団

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akifuyu102さんの「音楽いろいろ鑑賞日記」で田部京子さんの演奏が紹介されていたのをきっかけに彼女がカルミナ四重奏団と共演したシューベルトの「ます」を購入した。田部京子さんにはずっと興味を持ちつつ、実際に演奏を聴くのはこれが初めてだ。

最初の全奏で音の良さにちょっと驚く。まさに現場の空気まで伝えるような良好な録音だ。次に感じたのはコントラバスの音の太さ。出しゃばる一歩手前でとても存在感がある。引きずらず弾むように聴こえるコントラバスが全曲を通じてしっかりと演奏を支え、良いスパイスになっている。

田部さんのピアノは芯がハッキリした清潔な澄んだ音を聴かせてくれる。ピアノは常に音楽の中心にいるが決して目立ちすぎず、絶妙な一体感をもって演奏が展開する。ヴィヴラートを抑えた弦楽も音色が綺麗で品が良い。全体に軽やかで若々しい演奏だ。

なるほど彼女の演奏の評価が高いのも良く分かるといった演奏だった。演奏良し、録音良しの素晴らしいアルバムだと思う。

マーラー交響曲第1番 : ゲルギエフ

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僕にとってゲルギエフはどうも得体の知れない指揮者だ。いつ頃からか彗星のように現れてあっという間にスターになったが、これまで「これは!」と思った演奏にあまり当たったことがない。まだそれほど注目される前に録音した「くるみ割り人形」はなかなか良かったような気がするのだが、評価が高かった「春の祭典」は個人的にはイマイチ。しかし、最近、飛行機の中で聴いたブラームスの2番はすごく良かった。ということで、この人の演奏は当たるも八卦当たらぬも八卦だ。

このマーラー交響曲全集は半年以上前に購入したのだが、ちょうどその頃からアナログばかり聞くようになったのでようやく昨日開封した。10枚組SACDが4,000円台という破格の値段。ネット上の評価も割れていてなかなか興味深い。ひとまず番号順に聞くことにした。

聴き始めてまずは録音レベルが低いことにびっくり。SACD層で聞いているのでレベルがそもそも多少低めになっているとはいえ、相当ヴォリュームを上げないと音が小さい。出力小さめのMCカートリッジで聞いている時と同じかそれ以上にヴォリュームを上げてようやく落ち着くくらいのレベルの低さだが、最後まで聞くとその理由もわかる。

第一楽章は一見、奇を衒ったところのないごくオーソドックスな演奏だが、クレッシェンドするときは必ず加速し、静かな部分はかなりじっくりとしたテンポを取る。上下左右に音を散らさない自然な録音だが、ホールのせいかエコーが少なく、切れが良いとも言えるし、ブツブツ切れ気味とも言える。ティンパニと大太鼓は容赦なくぶっ叩く感じ。

第二楽章、速いところは速く、ゆっくりなところはかなりゆっくりとメリハリがついた演奏。ホールの残響がやはり気になる。このホールでゆっくりたっぷり演奏するのはけっこう大変そうだ。

第三楽章の最初のコントラバスはたぶん独奏でないと思う。あえてたどたどしい感じの演奏がほとんどなのでずいぶん印象が違う。ここのテンポも速め。全体的にすっきりと洗練された感じだが、これはこれで悪くない。

ここまで、ずっとヴォリュームをもう少し上げようかどうかと思っていたのだが。終楽章が始まると最初のティンパニ・大太鼓ドカーンでびっくり、目が覚める。ヴォリュームを上げるどころか絞らないと聴いていられない。ここまで来て、大太鼓とティンパニが明確に聴き分けられる実に鮮明な録音であったことが判明。防音設備完備の方にはお薦めだが、ここに照準を合わせたような録音レベルは普通の家では厳しい。それにしても、ここまで打楽器優位の演奏は初めて聞く。楽章全体通じて表情豊かな良い演奏だが、一番印象に残るのはどうしても太鼓という感じだ。

結論。ゲルギエフという指揮者はやっぱりよく分からない。
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