Laughin' to Keep from Cryin' : レスター・ヤング

LaughinCryin.jpeg

寒いなあ。そろそろヒートテック着ようかなあ。と思いつつ、昔はそんなものなくても大丈夫だったんだから、まだ着なくても大丈夫いと思い直したり。。一度着てしまうと暖かくなるまでやめられない機能性下着を着始めるタイミングが毎年早まるばかりの自分に焦燥感を感じたり。。って、下着くらいで大袈裟な、と思われそうだが、実際、毎朝、悩んでいる。年々、自分がひ弱になっているのではないかと自問自答しながら。

そもそもヒートテックっていつ頃登場したんだっけ。自分の記憶では冬のゴルフで初めて機能性下着を着て感動したのが2004年くらい。その時着たのはミズノの製品で、ユニクロから出たのはもう少し後だったと思っていたのだが、調べてみるとヒートテックの登場は今から15年前の2002年らしい。へえ、そんな前からあったんだ。

天気予報によれば明日明後日は雨っぽい。でも、気温は多少上がりそうである。せめて今週末までは普通の下着で頑張ろうか。

なんて、おっさんのやせ我慢の話はこのくらいにして、久しぶりにディアゴスティーニのジャズLPの話。早いものでシリーズ30枚目を越え、最近届くものは僕にとって未知のLPばかりになった。今月届いたのがレスター・ヤングの"Laughin' to Keep from Cryin'"。

まずもってタイトルが良い。「上を向いて歩こう」にも通じるものがある。音楽も切なく哀しい感じが見え隠れしつつ、すべてを包み込んで優しい感じ。解説を読むとレスター・ヤングは薬物とアルコールで健康を害して、50歳になる前に亡くなったようだ。駆け足の人生を過ごした録音時48歳のレスター・ヤングの演奏はもっと年上の大ベテランのような趣きである。トランペットの二人の演奏も素敵。58年録音のステレオ録音だが、音楽そのものも含め、全体的にもう少し前の時代のような雰囲気を醸し出している。「Laughin'」というよりはすべてを受け入れた穏やかな笑顔が思い浮かぶ。良いアルバムだと思った。
スポンサーサイト

R・シュトラウス「ばらの騎士」抜粋 : バーンスタイン

バーンスタインばらの騎士

昨日の夜は風が強く、時折家が揺れるくらいの突風が吹いていた。関東地方でも雪が降るかもという予報が出ていたのでもしかしたら初雪かと思ったのだが、朝起きてみれば雲が風に吹き飛ばされて綺麗な青空だった。日中、気温は低かったが、穏やかな天気の一日であった。

僕がオーディオを置いている部屋は家の西の隅にあって、南向き(座っている場所から見て右側)と西向き(真後ろ)に出窓がある。したがって早朝以外日中は日光が降り注ぐ。出窓は常時レースのカーテンを閉めている。厚手の生地のカーテンもあるのだが、これを使うと太陽の光が完全にカットされるだけでなく、紺とベージュの縞模様なので色合い的にも部屋が暗くなるので、これまでずっと使わずにいた。

昨日の晩、風が強くなるとともに気温が下がって部屋が寒々としてきたので、エアコンを点けると同時に珍しく両方の出窓の厚手のカーテンを閉じてみた。すると、どうだろう。まず、風の音が一段静かになった。が、驚いたのは、それだけでなく音楽が聴きやすくなったことだ。背景が静かになっただけでなく、これまで何度も左右のバランスが悪い(常に多少右スピーカー側が強い。)と感じていたのが、ずいぶん緩和された。これまで試しに出窓に吸音材を置いてみたこともあったのだが、カーテンほどの効果は感じられなかった。一日中、暗いのは気に入らないのだが、当面、音楽鑑賞中はカーテンを閉めておくことにした。

音の良さに気を良くして聴いたのがバーンスタイン/VPOの「ばらの騎士」抜粋。カラヤンとウィーン国立歌劇場が喧嘩別れしたおかげでバーンスタインにオペラのお鉢が回ってきて大成功。それが後年、DGに残したVPOとの数々の名録音に繋がっていく。これまでバーンスタインの振ったオペラは「トリスタン」以外、全曲を聴いたことがなかったが、この抜粋LPを聴いて「ファルスタッフ」と「ばらの騎士」のCDを買うことにした。

冒頭のホルン一発でワクワクうきうきするような演奏である。「ばらの騎士」の筋書きはなんとなくしか知らないが、今のご時世ではいろいろお叱りを受けそうな内容である。登場人物、すべてが謝罪会見を求められよう(笑)。ま、お話である。愛と喜び、人間の弱さ、哀しさといった様々な要素を慈愛に満ちた音楽が見事に描写していく。オペラの満漢全席。バーンスタインとVPOの調理は素晴らしい。CBSとDECCAのコラボレーションが実現したのは対カラヤン/DGで利害一致したからだろうか。ジョン・カルショウ率いるDECCAのエンジニアチームが録音というすごいおまけ付き。名盤。

シューベルト交響曲第9番「グレート」 : ワルター

DSC_0304.jpg

ワルター・ステレオ大全集から引き続きシューベルトの交響曲集を聴いた。このセットには5番、8番「未完成」、9番「グレート」の3曲が収録されている。

ところで、このブログではずっと「未完成」を8番、「グレート」を9番と表記しているが、どうも最近は「未完成」が7番、「グレート」が8番と呼ばれることもあるらしい。ウィキペディアによれば国際シューベルト協会が1978年に目録を改訂して以降、そういう付番になっているという。このLPは71年の発売なので当然、「未完成」が8番、「グレート」が9番になっている。78年と言うと僕がクラシック音楽を聴き始めた頃にはすでに改訂後である。それ以来、ずいぶん時間が経っているが、割と最近の録音でも9番「グレート」となっていたりして紛らわしい。今後もこの曲を取り上げる時にはLPなりCDの表記に従うことにしよう。

さて、ワルターのシューベルトだが、昔、何度か聴いたことがあるのは「未完成」だけで5番は初めて聴いた。そもそもシューベルトと言うと普段「未完成」と「グレート」くらいしか聴かない。クライバーが録音してなかったら3番は一生聴かなかっただろう。そんな状況で聴いたのだが5番の演奏は素晴らしかった。こんな良い曲なのかと驚いた。思わず2回聴いたくらいである。続いて聴いた「未完成」は期待が大きすぎたのか正直言って驚きはなかった。それに前の持ち主が「未完成」ばかり聴いたのかちょっとノイズも多めだった。で、次に「グレート」を聴いているのだが、これはもう最上級に素晴らしいと思った。

なんというか、陽だまりのような、明るくて朗らかで暖かい演奏である。明るいけど眩しすぎず、朗らかだけどうるさくなく、暑苦しくもなく本当にちょうどいい塩梅の、幸せな演奏だ。ワルターのこの曲の録音はこれ一枚らしいが、こんな素敵な演奏がステレオ録音で残ったのはこれまた幸せなことである。59年録音だが演奏を楽しむになんの不満もない。名盤。

ハイドン交響曲第100番「軍隊」 : ワルター

DSC_0304.jpg

去年までは年末前の11月がやたら忙しくてこのブログの更新も滞りがちな月の筆頭だったのだが、1月の異動後初めて迎えた11月は幸せなことに今のところ時間に余裕がある。昨日に続いて今日の昼食後も空き時間があったので、連日のレコード社詣でとなった。3階のクラシックフロアに上がるとレジにいたのは昨日と同じ店員さん。まっすぐボックスセットの並ぶ棚に向かって見上げると、まあ当然だが、昨日買わなかったワルター大全集がそのまま残っている。2割引セールは昨日までと知っていたが、あと三巻、値札のとおり、1枚当たり500円で買うかどうか考える。その間おそらく5秒くらいか。

「2割引で良いですよ。」

僕の心中お見通しのごとく、店員さんから声がかかって、勝負あり。結局、お店に並んでいた七巻のうち、手持ちのマーラー選集以外、六巻をまとめて買ってしまった。

ハイドンとシューベルトのレコードが収めれたボックスは全集八巻のうちの第六巻に当たる。4枚組だがハイドンは88番と100番のカップリングの一枚のみ。背表紙の日焼け具合がほとんど同じなので、今回購入した六巻は一人の持ち主がまとめて売ったものと思ったのだが、帰って良く見るとこのボックスだけ帯とワルターのポスターが付いていないので別の売り主なのかもしれない。実際、ハイドンに針を落とすと昨日のモーツァルトとは明らかに盤面の状態が違う。パッと見たところ綺麗なところは同じだが、針を落とすと特に外周部分でプチプチとノイズが入る。手荒に扱った様子はないが、それなりに聴き込んだレコードと言う感じがする。

ワルターのハイドンは手持ちのCDボックスにもあるはずだが、聴いたことがなかった。88番から聴き始めたが、最近の細身でシャープなハイドンの演奏はもとより、デイヴィスやドラティ、さらにはヨッフムの演奏でも聴けないなんとも懐かしいような心地の良い演奏が聴ける。「軍隊」も同じで聴き始めてすぐにゆっくりとしたテンポに驚かされる。でも、ゆっくりゆったりとしているからと言ってのろまな感じもしない。絶妙な味付けである。解説は故宇野功芳氏が書いているが、なるほどこういうのを「ロマンティック」な解釈と言うのか。で、あれば、ロマンティックなハイドンもぜんぜん悪くない。これまた素晴らしい演奏である。

モーツァルト交響曲第36番「リンツ」 : ワルター

DSC_0303.jpg

今日は仕事に余裕があったので、お昼ご飯を食べた後にふらふらとレコード社に寄ってみた。新入荷の棚をぱらぱらと見た後に気になる作曲家のコーナーをちらっと見たのだが、特にこれと言ったものなし。さあ、帰るかと思って棚の上を見上げるとワルターのステレオ大全集がずらりと並んでいるではないか。今まで気づかなかった。

マーラーから始まってブラームスまで全八巻のうちベートーヴェンの「その2」を除いた七巻が揃っている。マーラーは家にあるのでブルックナーとブラームスを手にしてレジに向かったところ今日はセールで2割引だと言う。ちょっと考えてモーツァルトも買うことにした。本当は全部買いたかったくらいだが、三巻、14枚のレコードでも十分重いので止めた。

帰宅してうちにあるマーラーのBOXと比べたのだが、今日買ったものは保存状態が良かったらしく背表紙の色がぜんぜん違う。モーツァルトの箱を開けると経年変化で紙にシミはあるが、盤面はすこぶる綺麗。それほど聴かれていないようである。元気がないと聞く気が起きないモーツァルトだが、良いレコードが手に入って気分が良いので早速一枚目の「ハフナー」と「リンツ」を聴いた。

「ハフナー」ももの凄く良いのだが、裏返して聴いた「リンツ」は個人的にはもっと良かった。「何これ!良い!」って思わず口に出してしまうくらい良い。序奏から典雅で弦楽器が艶やかだし、木管の響きも柔らかくてすっかり惹き込まれる。そこに絶妙なテンポで第一主題が出てくるのだが、下で支える低弦の刻み方がまた素晴らしい。てな感じでいつまでも滔々と良いのである。録音も59年というステレオ初期のものとしてはとても充実している。ある程度ヒスノイズはあるが、高音の耳当たりが良くて、むしろ60年代から70年代のCBS録音より聞きやすい。名盤。

マーラー交響曲第9番 : クーベリック

DSC_9715.jpg

このところ同じことばかり書いているようだが、今日も寒くて傘が手放せない一日だった。雨は決して嫌いではないが、こう毎日毎日降り続くとさすがに太陽が恋しい。世の中、行楽シーズンなのか最近、新幹線やターミナル駅には団体客の姿が目立つが、こう雨続きでは旅行も大変だろう。しかも、週明けには台風が上陸するかもしれないと言うではないか。10月の台風は被害が大きくなりがちと聞くので要注意だ。

今日は午後、外出したまま直帰したので、ふだんより早く帰ることができた。カートリッジをMC30Wに交換して以来、最近は再びレコードを聴くことが増えた。”音色”と言うが、音と色の間には相関があるのだろうか。音色の「色」は「色々」と一緒で種類という意味かもしれないが、そうであってもなくても、一定の音から色を連想してしまう。僕にとってMC30Wの色は落ち着いた赤色系である。秋の色だ。今の季節にちょうど良いのである。

クーベリックのマーラー9番は去年の暮に一度取り上げた。そこでも書いたのだが、この演奏は僕の中で9番の標準器みたいな位置づけになっている。迷ったらとりあえずこれを聴くので今までに何度も何度も聴いている。であるにも関わらず、今日、ようやくはっきり自覚したことがあった。この演奏、オーケストラが対向配置なのである。

何を今さらですよね、すいません。

でも、毎回、音楽に没頭し過ぎたか、「ながら」が過ぎたか、とにかく、今まで明確にそれを認識したことはなかった。でも今日は冒頭から「あれ?」の連続だった。第二ヴァイオリンは右側から聞こえるし、コントラバスは左側から聞こえる。よくよく聴いてみると、この曲は第二ヴァイオリンがリードする部分がずいぶん多い。冒頭、右からヴァイオリンが聞こえるので、恥ずかしながら、途中で左右の接続間違ってないか確認したくらいである。

聴き終えて思うのは、この曲、対向配置の方がはるかに演奏効果が高いのではないかということである。両翼でヴァイオリンが呼びかけ合う中でヴィオラやチェロがそれぞれのメロディを紡ぐところなんて本当に素晴らしい。クーベリック盤を初めて聴いて以来、30年以上経過してようやく気付いたというのも間抜けの限りだが、今日、さらにこの演奏が好きになった。

ベートーヴェン交響曲全集 : ショルティ

DSC_0300.jpg

高校入学祝いでお祖父ちゃんに買ってもらったレコードの一つがようやく見つかった。ショルティ/シカゴ響のベートーヴェン交響曲全集。9枚組で13,500円とある。この全集、最初のレコードセットは76年に発売されたものでジャケット写真がベートーヴェンの胸像である。ショルティがジャケット写真のこちらのセットは82年発売とあった。

このボックスセットは物置の奥に食器やらタオルやらに紛れて段ボールの中に入っていた。外箱は埃だらけ、開けてみると残念ながらブックレットは紛失している。内袋も何やら積年の塵で汚れている。が、とにかくレコードは9枚すべて確認できた。1枚目のレコードから洗いつつ、聴いているのだが、1番、8番、エグモント序曲、2番と収録された最初の2枚は盤面がとても綺麗だったのに、3枚目の「英雄」は2回洗ってもプチプチとうるさい。「英雄」はたくさん聴いた記憶がある。聴いた分汚れがひどいのか、あるいは、聴き方が悪くて溝を傷つけてしまっただろうか。当時のことだから針なんて無頓着だった。針圧調整もろくにした記憶がない。針交換もせいぜい一度か二度か。中古レコードで買ってこれだったらすごく残念だと思うが、自分の思い出なので傷もなにやら愛おしい(笑)。

実はこの全集、行方不明になったと思い込んでいたので、1番を除く奇数交響曲と「田園」は単品の中古LPを集めている。CDでも全集を持っている。が、ノイズのない同じ音源で聞くよりも今日のレコードは良い音に聴こえる。要は気持ちの問題である。

R・コルサコフ 「シェエラザード」 : ストコフスキー

DSC_0297.jpg

今日も雨。16度と気温も低め。6時に目は覚めたが、しばし、布団の中で過ごした。

ご飯の後、打ちっ放しに行った。うちから車で15分くらいのところにあるこの練習場は朝10時まで入場料が不要である。何時から開いているのか知らないのだが、コースに行く前の人も含め、入場料無料の時間帯はそこそこ賑わっている。今日は特に混んでて一階席はほぼ満席だった。来ている人は常連客が多く、みな顔見知りのようだ。僕はそういうのが苦手なので自分から話しかけることはない。幸い、みんなほっといてくれて、話しかけられたこともない。おかげで練習に専念できる。今日はまた新しいことを試してみたのだが、存外にうまく行った。今度こそ良い感じ。かも(笑)。。

今日の午後は、オーディオショップの人が買取に来ることになっている。何度も来てもらうのも恐縮なので一回ですべて売却すればいいのだが、こういうのも相場が大事でそのショップに同じ製品の在庫がある時は買取価格が渋い。しばらく見ていてその製品が売れたタイミングで見積りしてもらうと多少高くなったりする。そこで売る。で、今日、引き取りに来てくれることになった。

引き取ってもらう製品の元箱を取りに物置に行ったついでに救出してきたのが、このレコード。"Phase 4 Stereo"シリーズの一枚。4チャンネル録音と紛らわしいが、これはあくまでステレオ録音のはず。20チャンネルのマルチトラック録音を4チャンネルにミックスダウンするような話だったと思う。バーチャルサラウンドの走りみたいな企画である。聴いてみるとなんとなく位相がおかしい感じで不自然。普通のステレオ録音の方がいいかな。

ストコフスキーが「シェエラザード」を振ると言うと外連味たっぷりのドギツイ演奏を期待したくなる。それが、おそらくこのLPを買った理由でもあったと思う。もちろん、1,500円の廉価盤だったことも理由の一つだ。本当はコンドラシン/コンセルトヘボウの最新録音が欲しくてたまらなかった。(ちなみに、「シェエラザード」が出るまで、すでに晩年のコンドラシンの名前すら聞いたこともなかった。当時、ショスタコーヴィチなんて1番と「革命」以外、周りの誰も聴いてなかったのである。)

実に久しぶりに聴いてみるとこの演奏、普通に良いので逆にびっくり。10チャンネルだか20チャンネルもあるので楽器群ごとに録音されているのだろうか、かなりデッドで乾いた音がするのと、例のPhase 4のために位相がおかしい上、左右の分離が良すぎて違和感がすごいのだが、そうした録音が変なだけでストコフスキーとLSOの演奏は非常に立派なものだ。もちろん、「シェエラザード」の物語に合わせてサービス精神たっぷりの濃い口仕上げだが、迫力がありつつデリケートな名演奏である。

何十年も放置されていたにも関わらず、時間をかけて洗ったらノイズ一つなかった。テープに比べてレコードって丈夫である。

マーラー交響曲第1番 : ワルター

DSC_0295.jpg

僕がマーラーを聴き始めた頃、80年代の初めになるが、当時はCBSからバーンスタイン、フィリップスからハイティンク、DGからクーベリック、DECCAからショルティがすでに全集をリリースし、アバド、レヴァイン、テンシュテットが次々と新しい録音をリリースしていた頃である。マーラーに直接師事したことのあるワルターとクレンペラーの演奏は当時も確立した評価を受けていたが、新しいマーラーに比べて時代遅れのものと思い込んでいた。そもそもクレンペラーは「大地の歌」、ワルターに至っては38年録音のVPOとの9番が定番として推薦されていたが、田舎の中高生には渋すぎた。と言うようなわけで昔はあんまりワルターのマーラーを聴かなかったのである。

とは言え、この「巨人」はレコードを持っていた。しかし、もっと録音が新しい他の演奏に比べて冴えない音だし、コロンビア響の演奏もなんだかもっさりしているという感想しかなかった。ステレオ装置もしょぼかったし、コロンビア響はオケの規模が小さく、音も薄いという評論に洗脳されていたこともある。

僕の中でワルターのマーラーの評価がガラッと変わったのは5年前くらいのことだ。CBSからマーラーの交響曲集が格安で発売されたので買ってみたところ、それまでの印象を完全に覆す演奏に驚いた。一体、昔の自分は何を聞いていたのか。最晩年とは言えワルターの指揮に緩みはなく、コロンビア響の演奏にも何ら不満は感じない。その後、ワルターのCDはジョン・マックルーア自身がデジタル化した初期のものが一番と知ったのだが、まだそれは聞けていない。でも、このボックスセットでも音楽を楽しむには十分だと思う。

いつもながら前置きが長くなったが、オーマンディの次に聴いた「巨人」がワルター/コロンビア響の演奏。ワルター没後10年に企画されたワルター大全集の中の一つで、ワルターがステレオ録音したマーラーがまとめれている。"SX68 Sound"とあって、これはノイマンのSX68カッティングマシーンを使用して作成されたレコードのシリーズらしい。昔も今も高音質を謳っていろいろな工夫が続けられているのである。せっかくなので手元のCDとも聞き比べてみたが、なるほどLPと比較すると少し生気が削がれて痩せてしまった印象である。せっかくふっくらとして可愛らしかったのにダイエットし過ぎで不健康の一歩手前と言う感じ。聞き比べしなければそんな風には思わなかったが。

ワルターのマーラーに対する敬愛が滲み出ているような演奏である。テンポも程よく、生き生きとしたフレージングで年齢を感じさせない。第2楽章終盤でティンパニが低弦と一緒にリズムを刻むのにびっくり。他の演奏では聴こえたことがない。(ちなみに、いつもスコアから演奏を深く考察されているunagiさんのブログに行ってみたら、過去記事でこの部分について触れられていた。さすがである!)

これまた5、6年前だと思うのだが、「題名のない音楽会」で素人がオーケストラを指揮する企画を観た。名物企画らしい。たくさんの人が自分の指揮姿をビデオで撮影して応募するようなのだが、僕が見た時、放送された指揮者の一人が小学生(?)だった。小さな男の子である。その時の音楽が「巨人」の終楽章。他のファイナリスト達は短時間で司会の佐渡さんに止められてしまったのだが、この子の演奏だけはなぜかストップがかからずフィナーレを迎えた。

おかしな話だが、この時の演奏は僕の聴いた「巨人」の中でもベストの一つである。奇跡的な名演だったわけではない。むしろ演奏には大きな問題があった。とにかく一生懸命振っているのだが、テンポが遅く、さらにだんだん遅くなっていく。が、オーケストラは迷走一歩手前の演奏を必死に支えている。全員が小さな指揮者の夢をかなえるために全力の演奏だった。ゴールまで、もう少し!ほら、もう少し!てな感じで最後まで辿り着いた。エンディングも綺麗ではなかったが、そんな小さなこと誰も気にしていない。今でも全身を使ったその子の指揮ぶりを覚えているくらいである。

ワルターの「巨人」の終楽章を聴きながら、なんとなくその時のことを思い出した。ド素人、それも子供とワルターを同列にするとは何事だとお叱りを受けそうだが、もちろん、そんなつもりはない。ただ、どちらかと言えばじっくり進むワルターの巨人を聴きながら、コロンビア響が必死になってワルターの棒について行く様子が目に浮かんだのである。ワルターの芸術をステレオ録音で残すために編成されたオーケストラである。ともに歴史を作る両者の思いが結実したこの演奏、他に代えがたい魅力的な演奏である。名盤。

マーラー交響曲第1番 : オーマンディ

DSC_0294.jpg

今日も昨日に続いて涼しい午前中。僕が住んでいる辺りでは雨が上がって今日は一日曇り空のようだ。

コーヒーを飲みながらレコードを聴く。オーマンディ/フィラデルフィア管によるマーラーの「巨人」。昔から珍しい「花の章」付の「巨人」として有名な演奏である。オーマンディのマーラーを聴いたことはほとんどないのだが、「巨人」に加えて「復活」、「大地の歌」それに第10番全曲の録音が残っている。(ほかにもあるかもしれないが知らない。)

この演奏は「花の章」が出版された翌年に録音されているので、あるいは「花の章」付の初録音だろうか。オーマンディはストコフスキー同様、いろんな曲のアメリカ初演を行っているので、これもその一環だろう。ちなみに第10番の方はクック版第2項の唯一の録音とのことである。

演奏はオーマンディらしく、とても端正で流麗なものである。全楽章通じて弦楽器が支配的で金管楽器と打楽器が抑制的なので迫力には乏しい。バーンスタイン的粘りとは無縁の折り目正しい演奏であっさり味である。この辺りは好みだと思うのだが、このアルバムの最大の問題は(個体特有かもしれないが、)録音が良くないところ。高音がキンキンするし、強奏時には歪っぽい。どうもオーマンディのRCA録音は今一つなものが多い。普通の音で聴いたらもっと良い演奏のような気もするので残念。
プロフィール

ばけぺん

Author:ばけぺん

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
Since 3/28/2013
検索フォーム
リンク