ホルスト「惑星」 : ショルティ

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大量購入LPから最初に聴いたのがショルティ/ロンドンフィルによるホルストの「惑星」。ジャケットはなぜか横尾忠則さんによる斬新なデザインのもの。それだけでなく中には同じデザインの大きなポスターまで入っている。帯が付いていないのでなぜこういうことになったのかまったくわからない。知っている人がいたら教えてください。

ライナーノーツは諸井誠さんによるもので中央部分にはショルティ自身から日本のリスナーに向けた「惑星」の解説付き。大きな企画物以外、こうした例はあまり記憶にない。すでにこの時点で10数種のLPがリリースされているので日本人にとって「惑星」が珍しかったわけでもないだろうし。いずれにしてもショルティの楽曲解説からは曲への思い入れを感じるだけにシカゴ響との再録がないのは少々残念。この録音で十分やりきったということかもしれない。(ちなみにこのライナーノーツにはショルティに加え、諸井誠さんの楽曲解説、さらには裏面全面と楽曲解説が3つも載っている。)

演奏はショルティらしく変化球なしの真っ向勝負という感じ。火星のテンポはかなり速く感じるが実際の演奏時間が極端に短いわけではない。諸井誠さんも解説しているが、他の指揮者であれば一瞬ためて演出する部分をインテンポで演奏するので結果として非常にスピーディに感じる。スコアを見たことはないが、ショルティがスコア通りであるというのが諸井評である。

スコアに忠実かどうかはそれなりに大切な部分かもしれないが、お気楽リスナーにとってみると結果として演奏がどう聴こえるかの方がはるかに大事。その点でもこの演奏はおそらく誰が聴いても十分楽しめるものだと思う。ロンドンフィルの演奏はシカゴ響に比べて多少軽量級だが、技術的には完璧である。キングズウエイホールで収録された録音もプロデューサーがウィルキンソンでもあり不満は感じない。名演名盤だと思う。

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駆け込み

消費税が上がるのは97年以来、実に17年ぶりのことだ。前回の引上げの時は同じ頃にアジアの金融危機が来たり山一證券が破綻したりして経済は大荒れだったが、今回はそんなことがないことを祈る。

と、社会派的に話を始めたが、一市民的には今日が消費税増税前最終日ということで、いろいろ買い物をした。正確に言えば、先週中盤以降、物欲まみれの生活であった。いつか買う物なら3%上がる前に買っとかないと。まさに「今でしょ」である。

スーパーではトイレットペーパーが品切れになったり、米や水といった生活必需品が猛烈に売れたらしい。心情的によく理解できる。私の場合、物がオーディオ製品なので必要性には乏しいかもしれない。そもそも私の場合、すでに人並み以上にお金を費やしているのだから、尚更だ。

が、とにもかくにもかなりいろいろ買ってしまった。無事にボーナスも出たことだし、ここは自分へのご褒美ということで良しとしよう。

品物が届いたら少しずつここでも紹介していこうと思うが、端的に言えば、一度使ってみたいと思っていたアームやカートリッジを複数買った。昨日久しぶりに聴いてCDも凄く良かったのでデジタルを捨てることはないが、どんどんアナログの沼に嵌っているのは間違いない。

加えて今日、中古LPを20枚まとめて買ってきた。いつものディスクユニオンに行ってみたら、今日の品揃えは私の趣味にピッタリだったのだ。〆て6,000円くらいだったから、これが明日だったら150円くらい高かったはずだ。あー、なんてお得だったんだろう。。。レコードをクリーニングしながら幸せを噛みしめている。

ブルックナー交響曲第5番 : アーノンクール

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今日最後の棚卸はアーノンクール/ウィーンフィルのブルックナー第5番。この組み合わせの第9番の演奏が録音を含めてかなり良かったので期待して購入したSACD。神保町のディスクユニオンで新品が捨て値で売られていた。ラッキーであった。

9番には付録としてアーノンクールの解説付きで4楽章の演奏が収められていたが、こちらは本番の演奏と同じくらいの長さでリハーサルが収められている。このシリーズ、ずいぶんサービスが良い。

9番でもそうだったがここでのアーノンクールの解釈は至極まっとうである。ハース版+ノヴァーク版+ノヴァーク改定版といういかにも理屈っぽい版の選択だが聴いててほとんど気にならない。(と思う。もしかしたら「ながら」聴きだったからかもしれない。)

終始安心して聴いていられる演奏だ。ヴァントの演奏に比べてもティンパニは効果的に使われており、合わせて低弦に弾力と力を感じるバランスである。全体の録音バランスはヴァント盤よりこちらの方が良い。とはいえ、オーケストラもホールも違うので録音そのものの問題ではないかもしれない。

終楽章、最後の盛り上がりは非常に良い。ティンパニが盛大に下支えする中、少しずつ減速しながら大きなフィナーレを作る。外連味があって個人的には好きな演奏である。大変満足の一枚だった。

ブルックナー交響曲第5番 : ヴァント

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ヴァント/ベルリンフィルによる交響曲選集の中で最初に録音された演奏。エソテリックが企画に参加して日本でSACD化されている。

実に良く考え抜かれたテンポ、構成だと思う。最初から最後までどの部分を切り取っても納得。ヴァントのブルックナーはもっと若い頃の録音も含めて外れはないと思うが、ここではやはりベルリンフィルを振っているのが大きな付加価値になっていると思う。化粧の少ないライブ録音らしく、細かいところで技術的に完璧ではないが、全体を通じて余裕を感じる演奏である。

この曲の演奏を一枚だけ選ぶとすれば、この演奏かな。不満を言うとすれば、BPOが余裕過ぎて最後の盛り上がりでもテンションがそれほど高くならないところだが、プロフェッショナルな演奏であることに変わりはない。繰り返し聴いても飽きることのない素晴らしい演奏だ。

録音は普通に良い。エソテリックのSACDシリーズはあまり印象が良くないが、この録音では特に不満は感じなかった。強奏時のここぞという時にパワーがもう少し感じられればなお良かった。

ハイドン交響曲第93番、94番、95番 : セル

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外は雨。ここしばらくの暖かさも一息ついて少し肌寒いくらいの気温だ。ゴルフに行くのは見合わせてゆっくり音楽を聴くことにした。

ここのところずっとレコードばっかり聴いていてせっかく届いたCDを聴く機会がなかったので今日はCDを聴いてみよう。取り出したのはセル/クリーブランド管の演奏によるハイドンの後期交響曲集。そもそもはセルのベートーヴェンに興味があったのだが、覗いてみたHMVでこの交響曲集を発見して方針転換。4枚組で2500円弱、買わずにはいられない安さである。

一枚目に収録されているのが93番~95番の3曲。93番冒頭の序奏が終わり主題が始まってすぐに「買って良かった。」と思う。ミンコフスキの愉悦もヨッフムの風格もないが、ハイドンの交響曲の一つの極みがここにある。

快適なテンポ、完璧な演奏、自分勝手な悪ふざけを徹底的に排除した立派な演奏だが、よく言われるような「冷たさ」や「機械的」な要素は私はみじんも感じない。作曲者への敬意と愛情に満ちた全力投球の演奏だと思う。素晴らしい。

60年代後半と決して新しくない録音だが、リマスタリングされていて快適に聴ける。絶対、お買い得のセットだと思う。

人間ドック前夜

30代の中盤くらいまで、年に一回の健康診断をほとんど受けたことがなかったのだが、ちょうどその頃今の会社に転職してからは受診しないと相当うるさく言われるので毎年人間ドックに行くようになった。振り返れば会社の取り組みは実にありがたいことだ。

幸い、今まで大きな問題が見つかったことはないが、毎年一回人間ドックに行ってチェックを受けるのは精神的にも安心感がある。

そういうわけで感謝しているのだが、毎年一回、人間ドック前夜から当日にかけては毎度のことながら快適とは言えない状況で過ごすことになる。九時以降食事禁止、十二時以降は水もたばこも禁止。たばこはともかく、前日の十二時以降人間ドック終了まで一滴の水分も取らないのは逆に身体に悪いのでは、と毎年思う。

毎朝、風呂に入るのが習慣なのだが、ここで汗をかいて人間ドックが始まったらまずは検尿だから、水分を出す一方だ。そのせいか、人間ドックの日は毎年調子が悪い。。。大げさなだけだろうか。

Ortofon SPU E GM

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Nelson holdに付けたMC30WをRigid Floatに装着して快適に音楽を聴いていたのだが、いつものハードオフにOrtofonのSPUの中古が売られているのを発見し、これまた例のごとく衝動買いした。

OrtofonのSPUといえばアナログ好きならおそらく知らぬ者のいない有名カートリッジ。とか言っても、私自身が知ったのはつい最近のことである。社会人になる前にはアナログが絶滅危惧種になっていたので、もっぱらLPを聴いていた学生時代は存在すら知らず、今年に入ってから貪欲に情報を収集する中でSPUのことを知った。MCカートリッジの元祖であり、それ以降のカートリッジは多かれ少なかれ影響を受け、今でも多くのレコードファンが使っていると聞いていつかは試してみたいと思っていた。

このカートリッジ、今でも現役で購入できる。価格は安くはない。一番スタンダードのSPUが実売6万円台で一番高いクラスのものは20万円近い。しかし、モダンなMCカートリッジに30万円超のものも数多いことを考えると安いとも言える。(言えないか。。。)まあ、しかし、私の場合はやはり中古で購入した。価格は3万円。最近のオークションの落札価格より安かった。

歴代のSPUは見た目が同じようでも相当数のバリエーションがあり、同じ型番でも古い方が良いと言う人もいる。オルトフォンが日本法人を作って以降のSPUはそれほど人気がないようだ。私が買ったものはその人気がない時代に属する。

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この写真の下にあるように「SPU E GM」と記載されているのだが、これは一般にSPU-GEと呼ばれている種類のSPUだと思う。(違っていたら詳しい方、教えてください。)

とにもかくにもNelson Holdを外してSPUを付けてみた。このカートリッジは重量級なのでアームの錘をかなり後ろに下げてようやくバランスが取れる。追加の錘をViv Laboratoryに発注してもっと根元でバランスをとった方がベターかもしれないが、一応、ノーマルでもきちんと使える。Nelson Holdに比べるとスクエアの形状だけにアジマスの調整はしやすい。レコードに下ろすのもこっちの方が楽である。

最初に聴いたのはスタンゲッツのJazz Samba Encore!これは非常に録音が良いレコードだが、冒頭の女性の声に続いてゲッツのサックスが流れた時に「これは凄い!」と思ったのだが、喜んだのはその瞬間だけで、その後しばらくは何を聴いても失望だった。

MC30Wに比べて高音も低音もきちんと出ない上に高音が耳に障る。カートリッジを替えた時は素性がわかりやすいピアノと室内楽をよく聞くのだが、スメタナ四重奏団の演奏するシューベルトの弦楽五重奏曲はまるで知らないうちにヴァイオリンを安物に替えてしまったように薄っぺらくいらいらする音をまき散らすばかりだった。

いくらなんでも実力を出していないと思って、水平を確認したり、裏側の白いカバーを取り外したり、リード線の接続を確認したり、針圧を重くしたり軽くしたりいろいろ試してみたのだが、大きな変化はなかった。所詮、50年前のオールドタイマーなのか、それとも外れの個体を引いたか。

それでもあきらめきれずに聴き続けていたところ、少しずつ音が変わってきた。中低音は厚みを増し、高音は太めの温かい音に変化してきた。設計の新しいMC30WやAT-F7に比べてレンジは狭く感じるが、長時間ずっと聴いていても疲れない。もっと聴きたいと思う音だ。きっとこのSPUは長い間使われずにいたのだろう。ダンパーが固くなって本来の性能が発揮できずにいたのが、少しずつほぐれてきたのかもしれない。

カートリッジに限らず、オーディオはずっと同じ機材を聴き続けていると耳のエージングが進んで音の善し悪しが良く分からなくなってくる。1週間くらい連続で聴いた後にMC30Wに戻してみた。

一言で言えばMC30Wの方がオーディオ的スペックは高い。ワイドレンジだし一つ一つの音をより細密に再生する。考えてみれば新しいだけでなくこっちの方が定価も高いのだから実力がないのもおかしな話だ。このカートリッジで聴くレコードも実に魅力的で良い音である。

しかし、結局、一日聴いた後にSPUに戻してしまった。何が理由かと言うとうまく説明できない。また元に戻すかもしれないが、今のところ、SPUで音楽を聴きたい気分である。

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ブラームス ピアノ協奏曲第2番 : ポリーニ/アバド

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ポリーニ/アバドの組み合わせでブラームスのピアノ協奏曲第2番は2回録音されている。このLPは76年に録音された旧録音。その後、アバド/ベルリンフィル、ティーレマン/シュターツカペレドレスデンとも演奏しているが、いずれもまだ聴いたことがない。3回も録音しているところからして、ポリーニはこの曲に思い入れがあるのだろう。

ポリーニ、アバドともまだ若い頃の録音だけあって実に歯切れの良い演奏が聴ける。ポリーニのピアノは見事に粒の揃った打鍵できらきらとした響きだ。アバドとの息もぴったり。オケがウィーンフィルというところも良い。

アシュケナージ/ハイティンク/ウィーンフィルの組み合わせと比べるとこちらの演奏は遥かに若々しく鮮烈な印象だが引き換えに落ち着きや深みがもう一つと感じるのも事実。その後の2度の録音でどんな演奏を披露しているのか興味深い。

録音は十分鮮明だが、時として高音域がきつめ。デッドな録音がそれを助長している。


ラヴェル「ダフニスとクロエ」: ブーレーズ

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演奏時間の短さゆえか、「ダフニスとクロエ」は第3場の「日の出」以降を抜粋した第二組曲がやたら有名だが、この曲は全曲版で聴く方が圧倒的に良い。曲が面白いので誰の演奏でも(といってもオーケストラの技術的に問題がないことが前提だが)それなりに楽しめる。

このブーレーズ/NYP盤は私が初めてこの曲を聴いたLP。1975年の録音で高校生の時に購入したもの。ジャケット写真に惹かれて買ったCBSソニーの2000円シリーズだ。今思えばこれはダフニスなのだろうが、高校生の私は沖田浩之に似ているなあと思っていたのを思い出す。

演奏は精緻で繊細。録音は独特。最初から最後まで一枚薄いベールがかかったように響く。靄がかかったような幻想的な響きである。オーケストラの厚みには欠けるが、ラヴェルの色彩感豊かなオーケストレーションを堪能できる。合唱は完全にオーケストラと一体化している。個々の響きは決して冷たくないのに全体的にはひんやりとした印象を受ける。エスプリという言葉がぴったりくる演奏だ。

ブーレーズは後年ラヴェルの管弦楽曲を再録していてこの曲もBPOとの演奏で聴けるが、個人的にはNPOとの演奏の方が好み。良い演奏である。

シューベルト交響曲第9番「ザ・グレイト」 : ショルティ

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「ザ・グレイト」の名前にふさわしい堂々たる演奏である。クリスプで歯切れが良く、カラッとした響きで明るく爽やかに聴かせる。リズミカルでメロディを引き摺らないので深みに欠けると感じる人もいるかもしれないが、そういう深刻系の演奏は他の人に任せておけば良い。

ウィーンフィルもショルティの指揮に良く応え、万全の演奏をしている。響きが明るくウィーンフィルのイメージと少し違う。初期のデジタル録音の影響か、そういう意図で演奏した結果かわからないが、これはこれで悪くない。機能的にはアンサンブルなど実に見事だ。

ショルティの指揮は基本、あらゆる曲においてインテンポでストレートでリズム重視なので、一本調子で情感に乏しいと批判されることが多いが、私自身は、結果として不要な化粧や垢を落としたピュアな音楽が聴こえてくることを好ましく感じる。「ザ・グレイト」の演奏も愛聴盤の一枚だ。繰り返し聴いても飽きが来ない。

この演奏では繰り返し記号を忠実に守っており、また、最終音はアクセントではなくディミニュエンドで終わる。「未完成」は最近の演奏のようにアクセントではなく消え入るように終わるほうがそれらしいが、「ザ・グレイト」の終楽章はそれまでかなり盛大な演奏が続くので最後がディミニュエンドなのはちょっと不思議な感じだ。

録音は81年。デジタル初期の録音のせいか、少し高音寄りで中低域が軽いが、解像度は高く感じる。

メンデルスゾーン/チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 : ミルシティン

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メンデルスゾーンとチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲という超有名曲2曲の定番のカップリング。ナタン・ミルシティンが68歳の時の録音。68歳というとヴァイオリンでソリストを務めるにはけっこうな年齢だと思うが、演奏はみずみずしく切れ味も良い。ライナーノーツを読むまで、もっとずっと若い時の録音だと思っていた。

チャイコフスキーもメンデルスゾーンもテンポは早め。しかしセカセカとした感じはなく、メロディの歌わせ方、聴かせ方には堂々とした風格を感じる。どちらの演奏も良いが、やはりお国のものであるチャイコフスキーの方がより優れていると思う。

こちらはまだ正真正銘若手だったアバドが指揮するウィーンフィルの伴奏がまた非常に良い。時に畳みかけるような加速を見せたりして、大ベテランソリスト相手、かつ、大オーケストラ相手でも思い切りの良い演奏を聴かせてくれる。全体を通じて素晴らしい伴奏だが、特にチャイコフスキーで聴こえる木管の音色がとても気に入った。

数えきれないほどの演奏が手に入る両曲だが、この演奏はとてもハイクオリティだ。録音も良い。

ベトナム出張

月曜日から出張で初めてベトナムのハノイを訪れた。

成田からハノイまで行きが5時間半、帰りは4時間半。思いのほか近い国だ。首都にしてはこじんまりした空港だが、現在、新しい国際空港を隣に建設中。新空港開業後は今の空港が国内専用になるそうだ。

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経済発展中の国らしく古い街並みと真新しいビルが混在しているが、上海やバンコクに比較するとまだまだのどかな景色である。空港から街に続く道路は高速道路かと思ったのだが、途中で歩行者や牛まですれ違ったので普通の道路なのだろうか。

4泊4日(1機中泊)の日程だったが晴れの日はなく、基本は曇りで時々霧だったり雨だったり。埃っぽいだけでなく大気も汚れているようなので曇っていたのはスモッグのせいなのかもしれない。

現地法人が押さえてくれたホテルは開業したばかりで市街地からは少し離れていたが、実に立派なものだった。

ほとんど自由になる時間がなかったのだが、夜中の帰り便に乗るまでの時間、旧市街地をぶらぶら歩いてみた。人口9000万人の国に3500万台あるというバイクの数が凄い。右側通行だが対向車がいなければ容赦なく対向車線一杯を使い車とバイクが入り乱れて走る。てっきり一方通行だと思って油断していると反対側からバイクが来て肝を冷やす。

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フランスが統治していた影響からかヨーロッパのようにロータリーが多く、車にバイクが連なってぐるぐると回るのを見ているとなんとなく水族館で回遊する魚を思い出す。交差点では赤信号で止まったバイクがまるでレースのスタートのように信号が変わるのを待って整列している。壮観だ。外国人には到底運転できない無秩序の中にもベトナムの人達には一定のルールがあるようでぶつかりそうでぶつからない。と思っていたらタクシーに乗っていると何回か当たっている音がした。ある程度の接触はお互い気にも留めないようだ。

信号が少ないので道を横断するのは一苦労だ。現地の人達はどんなに激しい往来があっても何食わぬ顔で道を渡る。一定のペースでゆっくり歩けば相手が避けるのがルールらしい。小さいころからの教育で日本人には一歩を踏み出すのが恐怖だが、決して止まらず焦らず一定のテンポで歩くと確かに向こうがきちんと避けてくれる。慣れてくるとこれもまた楽しい。

ホテルの朝食も市街地で食べた夕食も料理はとても美味しかった。ただし、現地の人が普通に食べる店には入るチャンスがなく、価格はそれなりである。自分へのお土産にシルクのネクタイを5本買った。1本だいたい1500円。5本で日本なら安めのネクタイ1本分だが、おそらく現地価格を考えると高いのだろう。日本語が達者なお店のお嬢さんは終始にこにこ顔だった。

市街地の路地はごちゃごちゃと活気があって歩くだけで楽しい。何十年か前の日本もきっとこんな感じだっただろう。

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町中いたるところで電線がものすごい状態になっている。みんな自分勝手に電線を繋いでしまうのだろうか。

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身体は疲れたものの、なかなか楽しい出張だった。

就活

昨日は我が社の就活イベントがあり、休日出勤だった。

会社概要を説明する役目を仰せつかったので我が社に興味を持つ大学生の前で話をしたのだが、毎年のことながら、これから就職しようという若者達は清々しくて熱心そのもの。話をしている自分の方がはるかに彼らにインスパイアされる。

就職活動の時期も時代によって変わるが、今の時代、大学3年生に対して話をしているのだが、かなりの割合の学生がすでに内々定をもらっているらしい。就職協定があるものの、すべての会社がそれを守っているわけではないようだ。

翻って自分の時はどうだったかと考えたのだが、呆れてしまうことにいつからどのくらいの期間、就職活動したか、すっかり忘れてしまっている。4年生になっていたことは間違いないと思うが、何月頃だったろうか。景気の良い頃だったので、内定をもらった後はいわゆる拘束にあって行きたくもないリゾートに行ったことは覚えている。その時、台風だったのだから9月くらいか。

最終面接で後ろ向きに座らなければ合格だと言われた時代に比べて最近の就職戦線は実に厳しい。参加者全員が本気でうちを志望しているわけではないが、それでもこうしたイベントの参加者のうち、実際、うちの会社に就職できるのは20人に1人くらいしかいないらしい。

来年の4月には彼らがみな、希望に満ちて就職されることを願ってやまない。

ストラヴィンスキー「春の祭典」 : バーンスタイン

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バーンスタインによる「春の祭典」最初の録音。

先日聞いたMTTやアバドの演奏に比べるとリズムの処理がイマイチで時々つまづきそうになるが、なんとも熱い演奏である。多少、縦の線が狂っても気にせず前へ前へと進む。オーケストラ全体に力が漲っている。ヨーロッパのオーケストラとはまた一味違う重々しさと暗さを伴ったNYPの響きがおどろおどろしくてなかなか良い。ティンパニが終始力いっぱい大活躍なのがちょっと微笑ましい。まだ、この曲が現代音楽だった時代のやる気を感じる。

全体を通じ、バーンスタインの思い入れたっぷりの演出でオリジナルのバレエ音楽ではなく標題音楽としてとても面白く聴ける。こうした曲は巨匠としてヨーロッパで活躍した晩年より圧倒的に若い頃の演奏の方が良い。

58年の録音なので半世紀以上前の録音だが音はとても鮮明。ステレオ初期であるせいかステレオ感を強調するような左右の楽器の振り分けである。久しぶりに新盤のLPを購入したが、価格はCDの2倍以上した(苦笑)。

サン・サーンス交響曲第3番「オルガン付き」 : アンセルメ

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エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団の演奏によるレコードは私がクラシックを聴き始めた頃にはずいぶんポピュラーで、デッカによる鮮明な録音と相まって、特にバレエ音楽やフランス物については定評があった。

このサン・サーンスは62年の録音だが、発売当時から優秀録音として名高いものだったようで、78年に再発された手元のLPの帯にも「16Hzで揺がすオルガンの超重低音!」とある。演奏もさることながら、オーディオ装置のチェック用としても重宝されていたようだ。

どうもこういう形でのPRが徹底していたせいか、個人的にはアンセルメ/スイス・ロマンド管の演奏はあまり興味がなく、メディアを問わず録音を購入したのはこれが初めてだ。こう言いながら自分自身、半分くらいはプレーヤーのテスト用としてという気持ちだった。

しかしながら、聴いてみるとこの演奏、とてもレベルが高い。オーマンディ/フィラデルフィア管の演奏と同様、何か他とは大きく違う特徴があるとか、解釈が面白いとかいうことはほとんど感じないのだが、しかし、盛り上がるべきところはきちんと盛り上がり、正しいテンポで最後まで立派な演奏を聴かせてくれる。この曲が聴きたくなった時にまずはこの演奏を聴いてみようか、間違いないから。と思うような演奏である。

なるほど62年の録音としては鮮明な音だが、各楽器を少しクローズアップし過ぎだと思う。マルチマイクで収録されたのだと思うが、遠近感がやや不自然でオーケストラの各奏者が横にずらっと並んでいるように聞こえる。ただ、録音のせいで演奏がスポイルされることはない。録音を前面に出すよりもっと演奏にスポットライトを当てるべきだと思う。

Rigid Float (2)

Rigid Floatを導入して1週間が経過したが、この間、導入時の興奮が冷めてくるどころか聴けば聴くほど音が良くなる(ような気がする)ので、気が付けばかなりの長時間レコードを聴いている。

MA-707Xも決して悪いアームではないと思うのだが、直接比較してしまうと格が違うと言わざるを得ない。棲み分けを考えてMMカートリッジを付けてみたりもしたのだが、手持ちのカートリッジが2M Redなのでオルトフォン同士の比較となってしまうこともあり、いよいよ勝負にならない。AT-F7との組み合わせはスッキリと整理した音になるので深夜に小さな音でBGM的に聴くぐらいしか今のところ使い道を見いだせないでいる。

Rigid Floatは置き場所の自由度が高いのだが、私のプレーヤー設置環境ではアームをプレーヤーの向かって左側に置くしかない。最初は向かって左手前に置いたが針を落とすところの真下にモーター回転部があるのがなんとなく気になって左奥に置いてみた。ところがこうすると針をレコードに落とす時に外周部に上手く落とせない。はじに落としすぎて針がレコード盤から滑り落ちたり、手前過ぎて曲の途中に針を落としたりと使い勝手が悪く、結局、最初の位置に戻した。ちなみに音を聴く限り、モーターの影響はなさそうだ。

最初は見た目で適当にアジマス調整したのだが、その後、真剣に再調整した。Nelson Holdの頭頂部にあるネジの頭にプラスチック製の軽い水準器(ウェルフロートに付いてきたもの。)を乗せて水泡が真ん中に来るように微調整。これは結構大変な作業である。針圧計で測ったところ重さがちょうどMC-30Wの適正針圧と同じ2.3gだったので、ゼロバランスを取ったアームの上に水準器を置き、針を盤面に落とした時の水平バランスを確認してはパイプの角度を微調整することを繰り返して調整した。調整後は(たぶんに精神的な影響もあると思うが)より好ましいステレオ感が得られるだけでなく、内周部の歪みが少なくなった。

Nelson Holdへのカートリッジの取り付けでは、MC-30Wとシェルの間にオヤイデのカーボンスペーサー(1mm)を一枚入れている。これは前回記事に載せたReview記事で薦めていたものだが、音質の改善効果もさることながら、こうしないと頭頂部のネジでカートリッジ上部が凹むこと間違いなしである。そのうちカートリッジを売ろうと思っているわけではないが、なんとなく傷をつけることに抵抗がある。このスペーサーの音への影響は確認することができないのでよくわからない。

アームのパイプにゴムのリングが二本はめられていて、このリングの位置を変えることで響きのコントロールが可能になっている。こんなもので音が変わるのか疑問だったが、大胆に前後させてみると確かにある程度音に影響があることがわかった。乱暴に言えば、根元側に寄せると響きが多くなり、カートリッジ側に寄せると響きが抑制され一層鮮明な音になる。デフォルトがアームをちょうど三分の一ずつ区切るような間隔だったものを今は1:2:3くらいの間隔にしている。真剣に追い込んではいないが、現状で満足している。

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このアームのもう一つ素晴らしいところはハム音がまったくないところ。試しにアース線を外してしまってもまったくハム音はしなかった。取り説にはハム音がなくてもアース線を結ぶことで音質が改善することがあると書いてあったので一応、繋いではいるが。RCAケーブルも好きなものが使えるし、すこぶる使い勝手の良いアームである。

プッチーニ「ラ・ボエーム」 : カラヤン

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カラヤン/BPOにパヴァロッティ、フレーニ、ギャウロフといったスター歌手を揃えた「ラ・ボエーム」。1972年の録音。非常に有名な録音だが、全曲を通して聴いたのは初めて。デッカ制作の重量盤LP2枚組。

オペラは言葉がわからないと本当のところはよくわからないと思う。外国人が歌舞伎や能を見てもセリフに込められた細かい感情を理解するのは難しいのと同じことだ。(日本人にとっても歌舞伎や能の言葉はわかりづらいが文章で読めばわかる。)

それでも舞台を観に行くと雰囲気はよくわかる。私にとって「ラ・ボエーム」は実際に舞台を観たオペラの中で、感動した数少ないオペラの一つ。ベタなストーリーだが、おかげで難しいことを考えなくても音楽に入り込みやすい。

LPやCDでオペラを聴くと映像がないのでさらに共感しづらいのだが、この演奏には心底感動した。まずもってカラヤン/BPOの演奏が凄い。微に入り細にわたってこの悲劇を描き尽している。もともとプッチーニの曲は良い意味で大衆的、歌謡曲的なのだが、カラヤンの手にかかるととんでもなく立派な音楽になる。

パヴァロッティの歌も最高だ。声質と役がマッチしているようだし、良い声で朗々と歌ってくれる。最高のオーケストラをバックにパヴァロッティが高々と歌い上げるところで何度も鳥肌が立った。人の声の力はやっぱり凄いと実感させてくれるような歌である。

フレーニのミミも当たり役ということで素晴らしいのだと思うが、正直言って、ソプラノの善し悪しというのはどうも良く分からない。一言で言えば、心地良い歌声であり、病に倒れる主人公の歌唱としてまったく不満はない。

デッカの録音は極めてクリア。劇場で聴いているほど間接音はなくダイレクトな録音だが、とげとげしいところはなく、この演奏のレベルを引き立てている。総じて素晴らしい演奏であり、録音だと思う。

メンデルスゾーン「真夏の夜の夢」 : 小澤

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akifuyu102さんのブログ「音楽いろいろ鑑賞日記」で推薦されていた小澤征爾/ボストン響による「真夏の夜の夢」。もともと大好きな曲の上、このCD、ジャケット写真も素敵なので早速、HMVで購入した。珍しいナレーション付きの全曲版であり、国内盤は吉永小百合さん、私が購入した輸入盤はJudi Denchがナレーションを担当している。

序曲から繊細でリズミックな演奏に心を奪われる。ボストン響の音色も優しくホールトーンを十分含んだ録音も良い。何より小澤征爾さんの指揮がここでは素晴らしい。全体的にきびきびとして若々しく、オーケストラの隅から隅まで表情豊かに音楽を盛り上げる。94年の録音なのでもう20年以上現役盤だが、つい最近までこんな良い演奏があるとは知らなかった。

序曲の次のスケルツオの終わり頃、唐突に結構な音量を持ってナレーションが始まる。ナレーション入りのCDは初めて聴くので通常こういうスタイルなのかどうか良く分からないのだが、正直、ちょっと驚いた。Judi Denchの英語が英国訛りで早口、かつ、詩の朗読なので何を言っているかはほとんどわからない(笑)。ただ、ブックレットに英語の台本もついているので英語の勉強には良い。キャスリーン・バトルとフレデリカ・フォン・シュターデの独唱はすごく良い。加えて合唱も上出来である。

ナレーションと演奏の息もぴったり。なのだが、国内盤は吉永小百合さんのナレーションということは、演奏とナレーションは後で合成しているということなんだろう。そうであったとしても不自然なところは全くないので違和感なく演奏を聴いていられた。

優秀な録音も含め、この演奏には死角がない。買って良かった!と思える名演奏。

ウェルフロートボード

Viv LaboratoryのRigid Floatを導入以来、一層充実したレコード鑑賞ができるようになった。もっと音が良くなるかもしれないと思って、当初の設置場所からラック上をあちこち動かしたり、トランス、フォノイコライザー、ケーブルの組み合わせをいろいろ試したりしている。

高さ合わせのために10cm角の木製ブロック(YAMAMOTO製)を使っているが、これをABAのマグネシウム製インシュレーターに変えたらどうなるかと思って試してみた。

このインシュレーター、元はといえばレコードスタビライザーとして購入したのだが、スタビライザーとしては使い勝手が良くない。真ん中に開いている穴がスピンドルに比べて太いので、使い方には中に制振シートを貼り付けてくださいと書いてあるのだが、中心を保ちながら穴の内側にシートを貼るのが一苦労だし、ようやく貼れても穴が小さくなりすぎたりで非常に使いづらい。結局使わなくなってしまったが、この製品は四個一組でインシュレーターとして売っているものをスタビライザー用に分売しているだけなので、アームの土台にしても間違いではないだろう。

高さが木製ブロックの半分の5cmなので、TD321Mk2の下に敷いてあったウェルフロートボードを一旦外した。私が使用しているのは逸品館ブランド(Airbow)で販売されているアナログ用ウェルフロートボードである。このボードの高さは6㎝弱なので、これを外せば、アームをインシュレーターに乗せて高さ調整できる。

ガラス製ラックにマグネシウムインシュレーターを置くと表面の摩擦力が足りずにくるくる回ってしまうので、とりあえずテープで仮に固定した。位置を合わせてレコードを何枚か聴いてみる。

うーん、ずいぶん響きが豊富。というか、ちょっとエコーが効きすぎである。音がやわらかで太いのは悪くないのだが、ピントまで少し外れてしまったような感じだ。マグネシウムの土台に交換することで音が締まるのではないかと想像していたのだが、かなり方向が違う。はっきり言って失敗。何が原因かわからなかったので、このままの状況でAT-F7+MA707Xの方の音も聴いてみた。こちらも思ったような音でない。とすると原因は外してしまったウェルフロートボードの可能性が高い。

一旦、CDプレーヤーの下に敷いていたボードを再度、ターンテーブルの下にセット。念のために水平を確認して、アームの位置を決め、再度聴いてみる。もちろん高さが足りないのでインシュレーターは木製ブロックに交換した。

音が出てすぐに違いがはっきりわかる。ぜんぜんスッキリである。もやもやが取れてピントが合い、それでいてきちんと響きも出る。そもそもフローティング構造のトーレンスの下にさらにフローティングボードを置いて意味があるかな?と思いつつ、アーム導入と一緒に導入したボードだが、ずいぶん大きな効果があることがわかった。高さの問題があったとはいえ、新しい機器を導入するときにいっぺんにすべてを交換してしまうのはいつもの悪い癖である。いつの間にかフローティングボード込みの音が標準になってしまっていたようだ。

それにしても、マグネシウムインシュレーターはまた失業になってしまった。どう使ったら良いだろうか。



ムソルグスキー「展覧会の絵」 : フェドセーエフ



フェドセーエフ/モスクワ放送響による76年の録音。メロディアによる原盤をビクターが制作したレコード。フェドセーエフは確かこの曲を再録しているはず。

非常に個性的で良い演奏である。冒頭のプロムナードのトランペットからしてたっぷりとエコーを効かせて優美かつ朗々と歌っており、聞き手をぐっと惹きつける。休みなしに続く小人では打って変わって弦は激しく動き回り金管は咆哮する。各曲のテーマに沿ってわかりやすく性格付けされており、色彩感も豊か。ブラスセクションのパワーはソ連のオーケストラならではだ。

録音はホールエコーたっぷりでまろやか。ただし、時々牙を剥く金管の響きは生々しい。

ちなみにジャケット裏面は宇野功芳氏による解説で「「展覧会の絵」の本命登場」の見出しに続き、かなり情熱的に演奏を誉めちぎっている。主観的な批評とはいえ、この人以上に読んで面白い演奏批評を書ける人もいないと思う。日本ではショスタコーヴィチの「革命」に続くフェドセーエフ2枚目のLPということで、この時44歳のフェドセーエフはまだ無名に近かっただろうから、これだけ明確に演奏を誉めるのは大したものだ。

VIV LABORATORY RIGID FLOAT

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機器の入れ替えで新しく仕入れた製品がもう一つ到着した。VIV LABORATORYという日本のメーカーが製造するRigid Floatという名前のトーンアームだ。

VIV LABORATORY サイト

私は最近、このメーカーのことを知ったのだが、まだ若い優秀な技術者の方が今までの常識に捉われず革新的なオーディオ機器を開発製造している。そうして生み出された製品は国内のみでなく海外でも非常に評判が良い。日本人としてなんとも誇りに思う。プレーヤーは国産のVictor、KENWOODを売却してThorensに走ってしまったが、アームはマイクロ精機に加え、このメーカーの製品を買って日本を盛り立てて行きたい!という大義名分を錦の御旗にして、プレーヤー到着後、満を持して注文した。正直に言えば、このアームをなんとしてでも購入したいという気持ちが機器入れ替えに迷う私の背中を押した理由の一つであった。

Rigid Floatは今までのどのトーンアームとも違って、アームの支点が液体の上に浮いている。しかもカートリッジを含め先端までひたすらストレートでどこにも角度がついていない。丸い円盤をどうスムーズにトレースするかという、何十年にもわたって世界中のメーカーが取り組んできた課題に対し、まったく新しい回答を示したアームである。さらに技術的なことに興味のある方はメーカーのサイトや次のリンクを参照にしていただくと良いと思う。

Rigid Float Review

こういうアームはおそらくアナログ道何十年という人が購入するのだろう。その点、私はこの道たった3か月なので技術的なことはわかったようなそうでもないようなといった感じだ。レビューを見てこれは良い製品に違いないとは思ったが、そもそもどうしてもこの製品が欲しかったのはもっと単純な話である。とにかく「長いアームが欲しい。」それだけである。。。ロングアームは何が良いのか?理論的には普通のアームよりトラッキングエラーが少ないとか言えるようだが、そんなことよりもずっと大切なことがある。それは何かといえば、ロングアームは格好良いという事実だ。人それぞれ好みがあるだろうが、私は絶対ロングアームの方が格好良いと思う。

市場に流通しているロングアームというとSME、オルトフォン、SAEC等々いろいろなメーカーのものがあるが、新品で手に入るものは少なく、金額的には相当張る。中古もオークション等でたくさん出ているのだが、程度の問題はもちろんのこと、アーム単体で考えるならともかくどのターンテーブルと組み合わせるのかが非常に悩ましいし、組み合わせによってアームの土台を考えなくてならない。古いものが多く、初心者は手を出さないせいか、それぞれのアームの取り付け方の解説みたいなものもあまり資料がない。どうにも参入障壁が高いのだ。特定のメーカーのターンテーブルとロングアームのセットで買えばこうした問題はないのだが、どのメーカーでもロングアームは上級者コースらしく、最低でも70~80万円コースである。

ということで、妄想しては現実的に挫折していたのだが、ネットで情報収集している時に運良く見つけたのがRigid Floatだった。このアームは長さが3種類あって、普通の長さの9インチモデルに加え、7インチと13インチモデルがある。ブログで拝見する導入事例はこのアーム以外例を見ない7インチのショートアームが多い。俊敏に反応する上、改造しなくてもターンテーブル上にぽんと置けるからかもしれない。

とにかく「長いアームが欲しい」私は脇目もふらずに13インチモデルに注目した。デザインは好き嫌いが分かれそうである。メカニカルビューティが好きな人はあまり気に入らないだろう。私はこのデザイン、嫌いではない。しかし、何より決定的だったのがその設置方法である。このアームは基本的に「そこに置くだけ」なのである。素晴らしいではないか!正確に長さを測ってねじ穴を開けたり、図面を描いてアームボードを注文したり、そもそもプレーヤーの中に手を突っ込んだりしなくても良いのだ。ケーブルも通常のRCAケーブルが使える。これなら将来、プレーヤーを交換してもほとんどあらゆるものに対応できる。高さと設置スペースだけ考えれば良いのだから。

在庫がありそうなのはヨドバシカメラだけだったのでヨドバシに注文した。ヨドバシならポイントもあるし、翌日には品物が届く。製造開始からマイナーチェンジを二回経て最新版はRigid Float Haと言うモデル名だが、ヨドバシの在庫はRigid Float Hである。aはアジマスの意味なので、それがないということは垂直方向のカートリッジの向き調整ができないことになるが、もうこうなると待っていられない。そもそも真っ直ぐ取り付ければ良いのだからと自分に言い聞かせてあるものを購入した。カラーは黒銀と黒金があるが、後から追加された黒銀には値引がなく、黒金は多少安かったのでそっちを選んだ。計算上、10cmくらいかさ上げの必要がある。Rigid Floatの底面は直径9㎝の円形なので10㎝角の木製ブロックも合わせて購入した。

金曜日に注文したので品物は昨日届いた。注文後、「お取り寄せ」になったので最後の一つだったようだ。東京の配送センター発ではなく仙台から発送になっている。仙台店にあった在庫ということだろうか?メーカー名の記載もない長細い白い段ボール箱に入っている。輸送箱の中にさらに内箱があり、それを開けるとまず黒い液体の入った注射器が二本。この液体をトーンアームの下にあたる部分に注入してアーム全体を浮かせる。あとは本体と錘と説明書が入っているだけ。

置き場所を決めるためのテンプレートはL字型の非常にシンプルなもの。これをプレーヤーのスピンドル軸にはめて、針の場所を示す小さな穴に針位置を合わせ、あとはそのテンプレートの向き通りにアームをセットする。こう書くと簡単なのだが、結構繊細な作業である。アームリフターの高さや位置も自分で決めないといけない。自由度が高いだけにある程度自分で考えなければならない。とはいえ私みたいな初心者にも難しい作業は一つもない。ただただ繊細なだけだ。

私の購入したプレーヤーはアクリルカバーがアフターマーケット製品で左右が開いている。カバーを閉めても左右からアームが入れられるので好都合と思ったのだが、実際に置いてみるとアームをアームレストに置いた時にどうしても干渉してしまうことがわかった。厳密には本当にぎりぎりのところで上手く置けそうなのだが、引き換えに自由度を損なう。しばし考えてアクリルカバーは外すことにした。カバーなしの方が音も良いだろう。

アームに付属するNelson Holdというプロレス技と同じ名前を持つシェルにカートリッジを付け、位置決めし、アーム本体とリフターの高さを調整する。だいたいいいかなと思って全体を眺めてみると目視でも明らかにカートリッジが垂直になっていない!アジマス調整できないのに全然ダメじゃないかと思ったのだが、改めてアームを観察してみるとパイプの下側にネジがついている。なんのことはない。届いたアームはHaだったのだ。ヨドバシの表記は間違いだが、あるいは気にしていないだけかもしれない。ネジを緩めてパイプを少し回転させてアジマスを合わせる。可動部分が多いのでフレキシビリティが高いのだが、これは同時に調整部分が多いということでもある。

とにもかくにも設置した形がこれ。

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木製ブロックの手前に写っている半透明の定規みたいなものが位置決め用テンプレートである。今の置き方だとすぐに位置が変えられる反面、何度もアームを上げ下げしているうちに微妙に位置がずれるのでテンプレートは仕舞わずに常備している。トーンアームからのケーブルはオヤイデのRCAタイプのフォノケーブル。これをトランス経由でLHH-P700のMM入力で受けている。カートリッジはAT-F7とMC30Wの両方を試したみたがMC30Wの方が合う。ロングアームでアームの質量もあるせいか、ある程度の重さがあり針圧も高めのカートリッジの方が合いそうだ。他方、マイクロのアームは軽量でハイコンプライアンスなのでAT-F7はとても合う。

ネット上のレビューを読むと聴き始めた直後から好印象という記事が多いのだが、正直言うと最初は??という感じだった。悪くないけど、MA-707Xとそんなに違わないような。振り返ってみれば最初に付けたカートリッジがAT-F7だったことが第一印象が良くなかった理由の一つだと思うが、その瞬間思ったのは「この程度のプレーヤーでは宝の持ち腐れだったか?」ということ。このアームのことを記事にしている皆さんのターンテーブルはかなり立派なものが多い。開発者の方はハードオフで8,000円で購入したプレーヤーを使用しているという記事に勇気づけられてはいたのだが、安くてもリジットなDDプレーヤーと違ってトーレンスのプレーヤーは組み合わせる機器の違いに良い意味で鈍感そうだ。

嬉しさ半分、懸念半分といった感じで昨日は寝たのだが、新しいオーディオ製品が所期の性能を発揮するにはやはり少し時間がかかるようである。朝からずっと雨降りの今日はのんびりと音楽を聴いて過ごしているのだが、嬉しいことに最初の印象からぐんぐん良くなってきている。とにかく響きが良い。一番好きなのは弦楽器。潤いがあり余韻が豊富でうっとりするような音を出してくれる。それでいて音にはしっかりとした芯があり、立ち上がり立ち下がりが早く、団子にならない。最強音時でも余裕を持って再生してくれる。外周部から内周部まで音の劣化が少ないのもこのアームの特徴だ。この点、マイクロと比較するとRigid Floatの圧勝である。今までの常識ではこの点が最大のネックのはずなのにすごい性能だ。インサイドフォースキャンセラーもないが、なんの問題もない。がっちりトレースしている。トーレンスのプレーヤーはモーターとアームが同一の基盤に乗るのを嫌って分割フレームになっているが、今の設置形態ではアームとモーターとターンテーブルはそれぞれが完全に分離している状態なので、これも良い影響を与えているに違いない。とにかくこのアームの良さはTD321Mk2でも十分にわかる。適当なサイズの木製ブロックを土台にしてぽんと置いているだけだが、それでもすこぶる音が良いのだ。

グールドの演奏するバッハの平均律クラヴィーアを聴くと、一音一音、粒立ちの揃ったピアノの音が実にきれいに響く。グールドの鼻歌もご機嫌に聞こえてくる。実に優れたアームだと思う。

マーラー交響曲第7番「夜の歌」 : ショルティ

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ショルティ/シカゴ響のマーラー交響曲全集の中でも名演の一つ。ただし、この曲のサブタイトルである「夜の歌」からおどろおどろしい陰鬱な闇夜を想像する方はお気に召さないと思う。

満月で照らされた明るい夜の歌だ。第一楽章冒頭の弦楽器も金管も雲一つなく、しっかりはっきりと聴き取れる。その後も明快に豪快に音楽はぐんぐんと進む。シカゴ響の演奏も相変わらず完璧だ。ショルティの前のめり気味な指揮によく応えている。

中間楽章の二つの夜曲は楷書的な筆致で描かれるが音色は優しく美しい。スケルツオももちろん完璧。この曲で私が一番好きなのは終楽章。冒頭のティンパニの連打から気分爽快である。なんとも能天気なマーラーだが、マーラーが精神的に病んでいたからといって、彼が作曲した曲はすべて屈折して演奏しなければならないわけでもあるまい。聴き終えて元気になれる健康的なマーラーである。

シカゴ響のアンサンブルはいつもながら素晴らしい。録音も非常にクリア。名盤だと思う。

英盤の2枚組LPを購入したのだが、内袋から覗いたレーベルに「3」と「4」と書いてあるのを見て驚いた。検盤しなかったのだが何かの間違いで2枚目が2枚入っていたのかと思ったのだ。録音時間の兼ね合いだと思うが、このLPは1枚目の表面→2枚目の表裏→1枚目の裏面という順番で再生するように演奏が収録されている。つまり「3」は2枚目の表面、「4」は1枚目の裏面である。個人的にはこの形は初めてだが、ライナーノーツに注意書きの一つもない。この曲を初めて聴く人が疑いもなく第1楽章→第5楽章→第2楽章~第4楽章という順番で再生したりしなかっただろうか?きっと変な曲と思ったに違いない。

ストラヴィンスキー「春の祭典」 : マイケル・ティルソン・トーマス

マイケル・ティルソン・トーマス/ボストン響による「春の祭典」を聴いた。録音は72年。MTTが若干28歳の時の録音ということになる。今まであまり考えたことがなかったが、これって結構すごいことではないだろうか。なお、MTTはこの曲を含むストラヴィンスキーの管弦楽曲を現在も音楽監督を務めているSFOと90年代後半に録音している。

28歳の指揮者とは思えない緻密な演奏だ。どちらかというとインテンポで抑制的に淡々と進む感じだが、全曲を通じてリズムの切れは鋭く、難曲をやすやすと演奏している。

50年代、60年代には演奏が至難の曲というイメージだった「春の祭典」は70年代以降、たくさんの録音が出てきて一気に一般化が進んだ。「春の祭典」の演奏史では60年代のブーレーズによる録音が転換点として歴史に残ると思うが、この演奏はそれとは違った意味でエポックメーキングだと思う。「そんなに大騒ぎするような曲ではないですよ。」とでも言わんばかりに汗一つかかずクールに演奏している感じだ。

ボストン響の演奏も素晴らしい。少しデッドな録音のおかげでオーケストラの音が混濁せずそれぞれの楽器の音がクリアに聴きとれる。アバドの演奏の方が総じて優秀だと思うが、それより4年前に残されたこの演奏も実に見事である。

オーディオ機材の入れ替えあれこれ



レコード導入以来、CDをめっきり聴かなくなった。それに、狭いスペースにレコードプレーヤー、CDプレーヤー、アンプがそれぞれ複数あっても場所を取るだけだし、稼働していない機器もかわいそうだ。ということで一念発起して機材の整理整頓をすることにした。それぞれ複数導入した時には使い分けを念頭に置いていた。実際、そうして複数の機材を聴く音楽の種類やその日の気分で上手に使い分けしている人もネット上ではたくさん拝見するのだが、私の場合、全然上手くいかなかった。一つの機材が気に入ったら一番気に入っている機材しか使わない。どの音楽を聴いても気が付けば結局その組み合わせしか聴かないのだ。

思い立ったら吉日である。機材の購入元に加えいくつかのオーディオショップで買い取りの見積もりをお願いして、一番見積もりの高かったショップに機材を引き取ってもらった。最近、メジャーになってきたショップだが、見積もりの返事も引き取りも実に素早い。若い方だったが、いかにもオーディオ好きで機材の確認がてら一緒に音楽を聴くのもなかなか楽しかった。あれやこれや小物も含め稼働率の低い機材は全部売った。

SM-SX10もQL-A7もKP1100も売った。後ろ髪引かれる思いだったが、また違うプレーヤーを買ってしまったので仕方ない。新しく来たのはこれである。

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トーレンスのTD321Mk2。プレーヤー選びに悩んでいた時期に新品を買うならトーレンスと思っていた。手始めにオークションでQL-A7を買ったので楽しい回り道をしたが、レコード趣味も本格化してきたので程度の良い品を見つけて導入を決めた。プレーヤーの購入費用はSM-SX10の買取り価格でお釣りがきた。

本当はこのプレーヤーの到着後に買取り業者が来るはずだった。トーレンスの音を聴いてからKP1100を売るか最終判断しようと思っていたのだが、先日の雪のせいで順番が逆になり、プレーヤー2台が先に行ってしまった。トーレンスのプレーヤーはベルトドライブだしシャーシが分割されてターンテーブル部分はバネで浮いているフローティング構造。全然違うメカニズムなので万一、気に入らなかったらどうしようと心配だったのだが、まったくの杞憂だった。

一言で言うと響きが全然違う。ピアノやヴァイオリンの倍音成分がずっと多い。エコーが増えて特にクラシックはこちらの方がずっとしっくりくる。良い悪いを判断できるほどの耳はないが、好き嫌いで言えば圧倒的にこっちが好みだった。

ボディは分割されているうえにフローティングなので持ち上げるとぐにゃぐにゃと頼りない。ターンテーブルも二重構造で内側の小さいテーブルをベルトで回して外側のターンテーブルを回転させるのだが、このモーターの部分もKP1100のように洗練された工業製品とは違ってなんともしょぼい。しょぼい故に手直ししながら長い間使えそうだ。

このプレーヤーはもともとトーンアームが付いていない。一番多いのはSMEのアームのようだが、私が購入した個体にはマイクロ精機の古いアームが付いてきた。MA-707Xというアームで国内ではなく海外市場向けのものらしい。

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ストレート形状のアームでカートリッジシェルは専用モデル。このシェルはリード線が直付けになっていて交換できない。加えてリード線がかなり老朽化している。切れたら自分で修理は難しそうである。お店の人はこのアームは国産でも出来が良いと言っていた。音が良いのはプレーヤー自体の影響よりもこのトーンアームの影響の方が大きいのかもしれない。

考えてみれば12月から毎月、月末に新しいプレーヤーを買うという暴挙だった。これでしばらくプレーヤーの購入はお休みにしよう。。。と思っている。
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