Another Mind : Hiromi

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上原ひろみさんのデビューアルバムである「Another Mind」を久しぶりに聴いた。いやあ、何度聴いてもすごい演奏である。全曲作曲編曲とも本人によるものだが、スピード感あふれる演奏に加え、このメロディメーカーぶりも素晴らしい。

脇を固める人達もきっともの凄い人達ばかりなのだろう。一糸乱れぬ超絶技巧、生身の人間が実際に一緒に演奏しているとは思えない鉄壁の演奏である。

久しぶりに聴いたのは借り物のプリアンプの実力を試すことが目的だったのだが、いつの間にかそんなことはどうでも良くなってしまった。まさに天才の煌き。

以前、スピーカーを買った時にもこのディスクで試聴した。切れ味鋭くて粒立ちの揃ったとても良い録音である。
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ベートーヴェン交響曲第7番 : クライバー

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クライバーの7番にはレコードデビュー当初のウィーンフィル盤もあるが、こちらは82年5月に行われたバイエルン国立管弦楽団とのライブ録音。ベーム追悼コンサートとして4番とともに演奏・収録されたが、チャリティ目的で早々にレコード化された4番と違って、この演奏は長らくリリースされなかった。4番同様にオルフェオレーベルから発売されており、マルチチャンネルありのハイブリッドSACDになっている。企画物を除くとクライバーのSACDはほとんどないのでその点でも貴重だと思う。

SACDステレオレイヤーで聴いてみた。ライブの雰囲気そのままに拍手から始まる。会場からのノイズも結構聞こえる。演奏が始まると4番と同じように抜群のテンポとリズム感で冒頭からぐいぐいと引き込まれる。フルサイズのオーケストラにしては全体に軽やかな響きだが、クライバーの指揮との相性はすごく良い。木管の響きが特に美しい。

第2楽章は実にスピーディでかつ緊張感に溢れた演奏である。一瞬の淀みもない。ここでもオーケストラはクライバーの指揮にきっちり付いていく。部分部分ライブならではの危なさもあるが、それすらこの演奏の魅力と言える。最後の弦のピチカートが鮮やかで印象的。

第3楽章もすごい迫力。中間部の強奏時は全力だ。弦楽器が細かいパッセージを受け渡していく時の畳みかけ感がすごい。すごいすごいと思っているとほとんどアタッカで最終楽章に入る。その後はもう興奮のるつぼだ。これでもかこれでもかという感じでどんどん音楽は盛り上がり、そしてフィナーレ。

最後の拍手、遅れてのブラボー、足踏み。聴衆も大興奮の超名演。

輸入盤だからなのか、もしかしたらすでに廃盤なのか、この演奏はレコ芸の名曲名盤500では1点も得点していない。対照的にウィーンフィル盤は1位に選ばれているが、興奮と感動から言うと個人的にはこちらが上だと思う。

CDレイヤーで聞くとオーケストラの広がりが薄れ、楽器の分離が悪くなる。良くも悪くも音が荒っぽい。その分、ライブ演奏の危うさみたいなものは増して聴こえる。どっちにしても演奏の素晴らしさを伝えるには不足なし。名盤。

東南アジアの片隅で

今回の出張では東南アジアのとある国を訪れた。将来の会社の成長を考えた時に最も大きな可能性を持つ発展途上のマーケットを実際に訪れて、今後、わが社の製品をどうやって展開していくかを考えるのが出張の目的である。

実際に訪れた国に会社として特別な関心があるのではなく、発展の初期にある国の一つの例として具体的なイメージを持つことが目的だったのだが、実際に訪れてみると感慨深いものがあった。

シンガポールで乗り換えて目的地の空港に降り立ったのは夜遅かったのだが、途上国に共通して空港はやたらと賑わっており、ロビーから外に出ると何するとはなく、たくさんの人々が佇んでいる。会社が用意した車に乗ってホテルに向かったのだが、空港からホテルへの道筋はヴェトナムよりも立派だ。夜遅いのが幸いしてさしたる渋滞もなく国際的にチェーン展開しているホテルに到着。ロビーも立派でチェックインカウンターでのやり取りは癖の少ない英語である。日本人であることがわかると「日本の漫画はすごい。」と言う。入国前はどんなところなのか想像がつかずかなり不安があったのだが、ここまでのところなんの問題もない。水だけ気を付ければ意外と大丈夫かなと思った。

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翌朝、ホテルの部屋の窓から下を見下ろして撮影した写真である。こうしてみると途上国とはいえ首都の中心部はそれなりに発展しているように見える。

翌日からは市内のあちこちを訪れた。我々の乗るバスは冷房が付いていたが街中を走るバスや車の多くにはエアコンがないようだ。窓を開けて走っている車が多い。人口増加が著しいだけあってあらゆるところに人混みがある。ヴェトナムがバイク天国であったことに比べると四輪自動車が多い。
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日中は曇り空が多い。空気は湿っていて毎日雨が降った。どちらにしてもからっと晴れるような季節ではなかったようだが、曇り空はどうやらスモッグが理由のようだ。人口増加と経済成長に伴って増加の一途をたどる車の排気ガスが最大の汚染要因と聞いた。地方にさしたる産業のないこの国では毎日1,000人が地方から首都に流入する。流入人口だけで1年に40万人人口が増える計算だ。そうした若い流入人口はほどなく子供を産み育て始める。都市計画もなく無秩序に建物が建ち、流入者達は劣悪な住宅環境で生活を開始する。現地の手配でそうした家庭をいくつか訪問した。この国で本格的にビジネスを展開することを考えると実際の生活を知る必要があるからだ。

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そのうちの一つとして、写真の奥で微笑む女性の家庭をお邪魔した。ご覧のようなバラックだ。写真ではイメージが湧かないが、ここは田舎ではなく首都のど真ん中である。上からは見えないが、最初の写真のような街並みの一本奥の道筋にはこうしたバラックが無数に存在する。

彼女は数年前にご主人と一緒に首都にやってきた。生まれ故郷には仕事がなく、夫婦で仕事を求めてここに住み始めたという。まだ小さな子供が二人いて、ご主人がマーケットで店番をして家計を支えている。月給の半分は家賃で残りは食費でほとんどなくなるという。二人は日本で言えば義務教育を途中で放棄してしまったが、教育の重要性は理解しており、子供二人には教育を受けさせたいと考えている。この国の公立学校はレベルが低く、どんなに苦しくても私立の学校に入れたいと考えている。窓がなく、裸電球一つに照らされて昼でも薄暗い部屋で、彼女はしかし場違いなくらいの明るさで笑顔を絶やさずそう教えてくれた。

ちなみにこのバラックは言ってみれば長屋みたいなもので、全部で7世帯が共同生活している。台所とトイレは共同。水は写真に写っている蛇口がすべて。ここからは日本人が飲んだらたちどころに病気になるような水しか出てこない。

ここ1年ばかりご主人の調子が思わしくなく、なかなか良くならないので2か月前に医者に行った。彼女達にはとても高額な薬を4錠買って飲んだが、お金が続かないのでそれきりだと言う。しばらくお金を貯めてからまた薬を買おうと思う。彼女はそう言いながら飲み終えた薬のパッケージを見せてくれた。見慣れない形の銀色のパウチだ。たまたま非番でその場に同席していたご主人は、僕達に、薬を飲んだら良くなったと言った。通訳は、本人達は理解していないが重い病気だと僕たちに英語で伝えた。微笑みを浮かべて次の質問を待つ彼女に僕は何を聞いたら良いのかよくわからなくなり、しばらくしてお礼として持参した手土産を渡すとその場を後にした。結局、何もできなかった。

僕達の訪問に際して英語と現地の言葉の通訳をしてくれたのは現地の学生達だった。僕と同行した通訳の女性は眼鏡をかけていたが、そのフレームにはPRADAのロゴが付いていた。こちらが恥ずかしくなるような綺麗な英語を話す。親の職業を聞くと銀行に勤めていると言う。彼女は経済学を学んでいる。まだしばらく大学に残って勉強し、その後は留学も考えていると言った。

終戦直後、焼け野原の東京にも同じようなバラックがたくさんあったことだろう。僕の祖父や父親の世代はそこから始めて今の近代的な日本を構築した。今回の訪問で、それがいかに凄まじい発展であったか実感できた。日本でははるか昔から教育が大切にされてきたし、富をみんなで分け合うことが美徳とされてきた。たった数日間の滞在だが、この東南アジアの小国の現在はそれとはだいぶ違っているように見えた。あの夫婦の小さな子供達は悪循環から抜け出せるだろうか。

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夜中便でシンガポールに移動した。早朝のシンガポールは青空で、アーリーチェックインしたホテルの窓からは朝焼けに彩られたベイエリアが見えた。とても綺麗だ。あまりのコントラストに目が眩む。

今回の出張の当初の目的にまだ答えは出せていない。アジアの途上国では80%の人々が1日5ドル以下で生活していると聞いた。それを考えるととてもうちの製品を買ってもらえそうにない。今のところ帰国して思うのは、自分が日本に生まれてつくづく幸運だったということばかりである。

ヘッドシェル

トーンアームとカートリッジの組み合わせで思いのほか音が変わることがわかったので、ダイナミックバランス型のIkedaとFRにはオルトフォンのSPUやDL-103のような針圧重めローコンプライアンスカートリッジを組み合わせ、スタティックバランスのRigid Floatにはそれ以外のカートリッジを装着することが多かったのだが、Rigid Floatもどちらかと重量級のカートリッジの方が合うことが多く、そうすると軽量カートリッジはSMEに合わせるしかないかと思っていた。

最近、ふと、重めのシェルと標準的な針圧/コンプライアンスのカートリッジを組み合わせてみたらどうなるかと思い、オーディオテクニカのAT-LH18/OCCというヘッドシェルにAT-50ANVを装着してIkedaのアームで鳴らしてみたら、何のことはない、あっけないほど簡単に良い音で鳴り出した。考えてみればDL-103proもFRのFR-S/3という64Sの標準シェルに付けてから見違えるほど良くなったのだが、その時は当時は少し変わったシェルの形状とか材質が効いているのかと勘違いしていた。(少しは効いているのかもしれないが。)

レコードを聞き始めてからヘッドシェルで音が変わったと思った初めての体験はフェーズテックのCS-1000というやたらに高いシェルを使った時なのだが、この時もきっとこの材質や形状がよく考え抜かれているから音が良いのだろうと勝手に思っていた。(それも少しは貢献しているかもしれないが。)他方、同様に高価なオヤイデのカーボンシェルは全然ダメだった。この時は、カーボン製ヘッドシェルの音質は自分に合わないなどと思っていたのだが、今考えれば重量バランスが合わなかったのが問題だったのではないかと思う。

FR-3/Sは自重が20g近い。FR-64sはユーザーがSPUを使うことも想定しているだろうから、カートリッジ込で30gくらいを念頭に置いて開発されているのではないだろうか。IkdeaのアームはSPUよりさらに重い同社のシェル一体型カートリッジを想定しているせいか、軽めのシェルとカートリッジの組み合わせではそもそもゼロバランスが取れない。同社の単体のヘッドシェルの自重も16g~18gと重めなので、やはりカートリッジ込々で28g~30gくらいの重さがないとこのアームには合わないのだと思う。

材質や構造を語る前にまずは重量合わせと考えて、3本のアームすべてにLH18/OCCを付けることにした。カートリッジが10gなら合計28gになる。想定よりは少し軽目かもしれないが、結果は非常に良好である。このシェルも素材にはテクニハードという合金が使われているがチタンやカーボンといった最近流行りの素材ではないし、アジマス調整のために可動部があるので構造上も不利かもしれないが、実際に耳で聴く限り欠点はまったく感知できない。このシェルでも実売価格で5,000円と安くはないので、重量バランスさえ合えば実売2,000円を切るアルミダイキャストのLT13aでも大丈夫だと思う。

ロングラン製品だけあってデザインは実に普通である。アナログは視覚的要素もかなり大切だと思うので、デザインコンシャスな人には言うまでもなく、僕自身もちょっとなあ、というのが率直な感想。とはいえ、出てくる音の良さはデザインで妥協できないレベルである。

久しぶりにAT-F7+LH18/OCCをRigid Floatに装着したのだが、これは本当に大当たりだった。F7は細身で軽量なデザインに反してかなり骨太なカートリッジである。解像感はそこそこで線は太く、中低音が逞しい。元気が良くて楽観的な音だ。多少ドンシャリ気味な気がしなくもないが、全然許せる。価格を考えれば圧倒的なパフォーマンスだと思う。

残念だったけど。

コロンビアが決勝進出を決めギリシアに引き分けた段階で、もしかしたらこれは奇跡的に決勝に出れるかも、と思ったのだが、やはり世界は甘くなかった。今日、羽田に到着してすぐにインターネットを見た時には同点だったのだが、帰宅してみれば1-4の完敗。ここまでの完敗だとまさにぐうの音も出ない。

出張と重なってしまったので、結局、コートジボワール戦の逆転負けしか観れなかった。残念無念。4年間死に物狂いで練習してきた選手の無念さはいかほどだろうか。

しかし、下手に引き分けたり、僅差で敗れたりせずに惨敗したのは将来の日本代表チームにとって良かったかもしれない。考えてみれば僕が子供の頃、本気でサッカーを頑張っているクラスメートなんてほとんどいなかった。初めてのW杯に出てからまだ16年、いつの間にかJリーグがプロ野球と肩を並べるような存在になって、ついにはセリエAの10番を背負う日本人選手が出たとはいえ、日本がサッカー後進国であることに変わりはない。はるか昔から全国民を挙げてサッカーに取り組んできた国々にやすやすと勝てると考える方が間違いだ。

今日の悔しさを糧に若い選手がどんどん出てきて本当に強いチームになるまで息長く応援することが大切だと思う。

ストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」 : ドラティ

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ドラティ/デトロイト響のストラヴィンスキーと言えば(確かレコード・アカデミー賞を受賞した)「春の祭典」が有名だが、その一年前に録音された「ペトルーシュカ」も素晴らしい演奏だと思う。

アンセルメの没後、ドラティは「バレエの神様」と言われていたらしい。どちらかというと地味だがレパートリーが広いドラティなので、この称号がふさわしいかどうかはいささか疑問を持つが、この演奏を聴くとバレエ曲も巧いことは間違いない。アバドのこの曲の演奏でも触れたが、ドラティの演奏はバレエの伴奏と考えた時にも違和感のない、恣意的なテンポの変化の少ない整然としたものでありながら、それぞれの場面での表情がとても豊かだ。

おそらく最も充実していた時期のデトロイト響の演奏も万全。録音も素晴らしい。

ようやく

出張終了。ようやく帰国だ。たかだか一週間ちょっとだが、ずいぶん長く感じた。
たまたま同じラウンジ、同じ席でフライトを待っているが、気持ちはずいぶん違う。飛行機に乗ってあとは寝るだけ。6時には羽田に着くし、幸い明日はそのまま休める。
帰ったら何をしようか?大げさだが何気ない日常がどんなにありがたいか!

シンガポール

今日から一週間、東南アジア出張。午前中の便でシンガポールまで来たが、チャンギーでの乗り換え時間が3時間もある…国際線の乗り換えに余裕が必要なのはわかるが、空港内に3時間というのは退屈だ。

確かターミナル内にマッサージがあったと思って探してみたのだか、見つからない。おかしいなぁ。あるのに見つからないのか、なくなってしまったのか。

せめてもの救いはシンガポール航空のラウンジが思ったより空いてて快適だったこと。ラウンジの大型テレビはワールドカップの録画放送が流れているが、見ている人はほとんどいない。考えてみればこの辺りの国で出場しているのはオーストラリアくらいだからあまり関心は高くないのかもしれない。

整髪用のジェルを忘れたので空港内のドラッグストアを覗いたら、普段使っているのと同じ日本の製品が売っていた。値段は少しだけ高いもののほとんど変わらない。ラッキー。

それにしても、シンガポールは今日も暑いな。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番 : ホロヴィッツ

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ホロヴィッツ・ゴールデン・ジュビリー・コンサートのライブ録音。売り上げのほとんどはバックを務めるNYPへの寄付となったのでホロヴィッツも指揮者のオーマンディもただ働きだったらしい。一夜にして16万8000ドルを寄付したのだから大したもの。

ホロヴィッツ73歳、オーマンディ78歳の時の演奏だが、幸いなことにホロヴィッツのピアノに衰えはなく、少し金属質のまさに鋼のようなタッチは健在。ペダルが少ないので打鍵音が明確で独特の響きを持つ。そしてフレージングが最高に格好いい。

いつか中村紘子さんがテレビでピアノ協奏曲はこの曲が頂点でこれでおしまい、という趣旨のことを話していた。ピアニストにとって最高の腕試しであろうこの曲には他にも優れた演奏がたくさんあると思うが、僕にとってはこの演奏が最高だ。アメリカを象徴する街でアメリカを代表するオーケストラと共演しているにもかかわらず、紛れもないスラヴの音がする。華麗な音の中にほの暗い情熱と哀愁が漂う。実に素晴らしい演奏だと思う。

ホロヴィッツはオーマンディの伴奏ならいつでも協奏曲を弾くと言っていたらしい。オーマンディとNYPの共演も30年以上ぶり。一期一会の組み合わせが作り上げた歴史的名盤である。

23本もマイクを使ったマルチ録音は実際のコンサート会場とはずいぶん違った音になっているに違いないが、少なくともホロヴィッツのピアノの音は鮮明に収録してくれている。それだけで十分である。

マーラー「大地の歌」 : クレンペラー

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名演の誉れ高い非常に有名な演奏である。「大地の歌」人気投票で上位入選間違いなし、優勝候補筆頭という感じだろうか。64年~66年にかけての録音なので50年前の演奏ということになる。まさに歴史的名演。

僕が最初に聞いた「大地の歌」はショルティの全集に含まれていた一枚だった。歌詞の意味がわからないこともあるが、それ以来ずっとマーラーの交響曲の中では一番苦手である。一人の指揮者のマーラー交響曲集を買うとこの曲も付いてくることが多いので他の演奏も何度か聞いたことがあるが、皆、退屈だった。第一楽章の劇的な感じは嫌いではないのだが、なかなか最後までいかない。解説を読むとこの曲の白眉は終楽章ということになりそうだが、そこまで聞くことは稀である。しかもあの荒涼とした枯草の中を冷たい風が吹き抜けるような旋律は鬱っぽくて。。。

ということでクレンペラーのこの名盤も積極的に聞きたいと思ったことがなく、今回、4番と「大地の歌」という個人的不人気二曲のセットで中古LPを手に入れて初めて聴いた。

聴いてみると確かにこれは素晴らしい演奏だった。クレンペラーの指揮はいつもながらこの人特有のテンポ設定で超然と進めていく。表現の彫りは深く、肌寒くてうす暗い感じが良く出ている。音色がほのかに暖かいところがなおさら曲の冷たさ暗さを強調していて印象的。それに加えて二人の歌手がもの凄い。テノールのヴンダーリッヒは一曲目から聴き手を圧倒する。オーケストラの最強奏とがっぷり四つの真っ向勝負。実に良い声だ。この録音の後すぐに亡くなったというが、なんとももったいない話である。メゾ・ソプラノのルードヴィッヒの声量もすごい。ルードヴィッヒの声はたびたびレコードに入りきらない。マイクが負けている。(ちなみにヴンダーリッヒの声は絶唱時もきれいに収録されている。)

とにかく、初めて終楽章まで集中して聞き終えることができた。では、この曲が好きになったかというと微妙だが。録音は最新録音のような透明感や解像感はないが、年代を考えればぜんぜん悪くない。

ドヴォルザーク交響曲第8番 : カラヤン

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以前、カラヤン/ウィーンフィルのハイドン「ロンドン」について記事を書いた。
ハイドン「ロンドン」カラヤン

ここで「ジャケット写真をご覧の通り、曲目の記載がない。曲目を記載すると20種類作らなくてはならないので、全部同じにしたのだろうか。」と記述したが、実際はカラヤンの写真は一枚一枚微妙に違う。「20種類ジャケットがあるにもかかわらず曲目が記載されていない。」というのが正しい記述であった。ただ、不便であることには変わりない。

僕が購入したのはハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス(2枚)とこのドヴォルザークの6枚。今日までにモーツァルト以外は聴いてみた。すべて実に素晴らしい演奏・録音である。ハイドンの時にも書いたが、50年代から60年代初めにかけてのカラヤンは実に良い。それ以降ももちろん良いのだが、若々しさと円熟が共存しているようなこの時期の演奏はちょっと他をもって代えがたいものがあると思った。

ドヴォルザークの交響曲第8番の演奏はその中でも特に良いと思う。スマートで快調なテンポ、リズムの切れ味も良いし、なんと言ってもこの曲に溢れる素敵なメロディをウィーンフィルの美しい音色を生かして存分に歌っている。こりゃ、文句のつけようがない。期待にたがわず美しい第3楽章をはじめとして全曲通じて盤石の演奏である。

この演奏は同じシリーズのブラームス交響曲第3番と組み合わせでCD化されている。ブラームスの演奏もなかなかのものだったので、変なマスタリングが施されていなければ、超お買い得CDだと思う。

ウィーンフィルの弦楽器の美しさを全面に押し出したような録音はとっても聴きごたえがある。全体的に中低域がたっぷりで太いいわゆるアナログ的な音がする。名盤。

YAMAHA HA-1 (2)

今年の2月にYAMAHAのHA-1というヘッドアンプをハードオフで購入したことは以前、記事に書いた。
HA-1

この記事を書いた頃は今以上にアナログのことがわからなかったので、読んでみるとかなりあやしい記述が散見されるが、あくまで日記なので内容はそのままにしておこう。

実はこのHA-1、購入当初に短期間使用した後は棚の上に陳列されたままになっていた。その後は他のMCトランスを使用したりフォノイコライザーに直接入力したりすることがほとんどで出番がなかったのだ。

昨日、AT-50ANVをC-2080に繋いで結果が良いと記事を書いたばかりなのだが、ふと、そういえばと思って、C-2080の代わりにHA-1を繋いでみた。HA-1は入力インピーダンスが二段階で切り替えられるのだが、ローインピーダンス指定を選択すると34dbも増幅してくれる。低出力のAT-50ANVには合うのではないかと思ったのだ。

結果は目論見どおり、極めて良好だった。34dbと言えば出力はほぼ50倍である。さすがのAT-50ANVもこれならボリューム位置が通常より少し小さめくらいでちょうど良い。HA-1を通すと、単純に音が大きくなるだけでなくAT-50ANVからこれまで聴いたことのないレベルで中低域が聴こえてくる。しかもトランスと比較してノイズフロアが圧倒的に低い。出てくる音は中低域が多めでももっさりしたところはなく非常に歯切れが良い。

78年の製造なのでもう36年も経過した電気製品だが、造りがしっかりしているHA-1は簡単には壊れそうにない。別のブログで蓋を開けて中身をチェックした写真を見たことがあるが、手抜きのない立派な構造だった。信頼できるところから購入するのであれば、これはお薦めの製品である。

まだまだこれから。

日頃、ぜんぜんサッカーファンでない僕だが、やっぱりW杯は特別。日本代表にはぜひとも頑張ってほしいと思ってテレビにかぶりつきだったが。結果は皆さんご承知のとおり惜敗。素晴らしい先制ゴールだっただけによけい残念だ。

W杯に出てくるだけで大変な戦いを勝ち抜いてきたヨーロッパと南米の代表チームが相手なのだから、残りの2試合も厳しいに決まっているが、まだ今日で終わったわけではない。相手チームだって異常なプレッシャーの中で戦うのだから、我が代表チームにもきっとチャンスがあるはず。

この4年間、きっと想像もできないような厳しいトレーニングを続けてきたと思うので、その成果を100%試合に出して悔いのないワールドカップにしてほしい。結果、決勝トーナメントに進出できたら万々歳だ!

オーディオテクニカ AT-50ANV

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4月の初めにヨドバシカメラで特売されていたAT-50ANVを購入してからしばらくの間はSeries IIIに装着していたのだが、やはりSeriesIIIには販売当時に想定していたと思われるMMカートリッジを組み合わせることにしたので、今はStantonとNagaokaのMMカートリッジを付けて聴いている。

それ以降はRigid Floatに付けたりWE-308に付けたりしてみたのだが、正直言うとあまり気に入らなかった。AT-50ANVは空芯型という形式を採用しており、この形式としては大出力らしいのだが、それでも僕が所有するカートリッジでは出力が最も小さく0.12mVしかない。十分増幅してあげないと当たり前だが通常のボリューム位置では音が小さい。小さい音で聴くとやはり迫力が足りない、線が細い音に聴こえがちである。ボリュームを上げると今度はSN比が厳しくなる。ジャズやロックでは特に問題ないのだが、クラシックを聴くとなると微小なハム音もピアニッシモの時には気になる。最初の頃はその当たりのバランスも悪かった。結果としてなんとも元気のない音だったのだ。

僕の持っているイコライザーやプリアンプとのマッチングを考えるとだいたい30倍くらい増幅するとちょうど良い。ということに気付くまで約2か月かかった。それまではもっと倍率の小さいトランスと組み合わせたり、MC対応のイコライザーに直接つないだりしていたのだ。電気的なマッチングの重要性にようやく気付いて、手持ちのトランスでは最も倍率の高いC-2080に繋いでみた。これは30db増幅なので出力は問題ない。一方、インピーダンスは1000倍になるのでフォノイコライザーのMM入力に繋いだ場合、一次側のインピーダンスは47Ωになる。AT-50ANVの推奨負荷インピーダンスは「100Ω以上」とあるので、それに比べると多少インピーダンスが小さすぎるのだが、繋いだ結果は悪くない。というより、最初に聴いた時よりはぐんと音が良くなった。

マッチングの問題に加えてエージングも影響しているかもしれない。まあ、僕の場合、プレーヤー、アーム、シェル、イコライザーの組み合わせをあれこれ頻繁に変えてしまったので経時変化を断じることはできないのだが。

最初の頃は元気がない上に音場が小さく、風通しの悪い感じだったのだが、最近、ぐっと開放的な音になったきた。どこかにレーザーのような切れ味と書いてあったが、確かに膨らみがなく非常にスピード感のある音がする。

以前、ShelterのModel 7000を良くできた明るい標準レンズと例えたが、このAT-50ANVもやはり癖の少ない標準レンズという感じ。ただ、同じ標準レンズでもこちらはもっとコントラストが高くてカラフル、一方、線は少し細い。中低域がどっしりとしたピラミッド型の音が好きな人には物足りないかもしれないが、このカートリッジのタイトな低音が僕は好きだ。ちなみに低音は出ないわけではなく、レンジはもの凄く広い。

それにしても、オーディオテクニカやDENONに加えて、Shelter、ZYX、My Sonic Lab等々、カートリッジには現在でも日本のメーカーにたくさん良い製品がある。うれしい限りだ。

コダーイ 組曲「ハーリ・ヤーノシュ」 : ドラティ

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ゾルタン・コダーイという作曲家がいることも「ハーリ・ヤーノシュ」という曲があることもなんとなく知っていたが、アルバムを購入したのはこれが初めて。聴いてみたらとても良い曲だった。

解説に載っている話が面白い。コダーイは1967年に84歳で亡くなったが、最初の奥さんは23歳も年上で58年に99歳で亡くなった。その時、コダーイはすでに76歳だったが、約1年後、77歳でなんと19歳の教え子と再婚。19歳下ではなく58歳年下である。58歳年下から23歳年上までOKというのは相当守備範囲が広い。外野はコダーイ一人に任せられるくらいの守備範囲である(笑)。有名な話ということだが、プロポーズの言葉は「コダーイ未亡人になりたくないか?」だったそうだ。元気でチャーミングなおじいちゃんである。

「ハーリ・ヤーノシュ」組曲は6曲からなるが、こんなエピソードを持つコダーイにぴったりなおおらかでのどかな曲が続く。どこかバルトークの曲を彷彿とさせるメロディだが、ずっと明るくて楽天的だ。2曲目の「ウィーンの音楽時計」で聞こえてくるチャイムの音はプッチーニの「ラ・ボエーム」で聞こえてくる音にそっくり。きっとウィーンにはこの音階の時計が実際にあるのだろう。

ドラティは4年間コダーイのクラスで勉強したということなので愛弟子に当たる。師匠の音楽を丁寧かつユーモラスに指揮している。ハンガリーの亡命音楽家で構成されたフィルハーモニア・フンガリカの演奏も良い。73年の録音。おそらく本拠地のオーケストラホールでの録音だと思うが、ホールエコーの塩梅も良く、十分鮮明な録音だ。

ショスタコーヴィチ交響曲第5番 : マゼール

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長い間探していたがなかなか巡り合わなかったLPを発見した。マゼール/クリーブランド管によるショスタコーヴィチの交響曲第5番。録音は81年。デジタル録音の文字が誇らしい。テラーク盤。国内盤だが、簡単な解説が裏面に記載された帯がついているだけでジャケットもレコード盤面も本国仕様のままだ。国内の輸入元に品質の問い合わせをする際には「帯」が必要ですと書いてある(笑)。定価4,000円という値付けにちょっとびっくり。初期のCDよりも高い。

マゼールの指揮するショスタコーヴィチというのはどうやらこれが初録音らしい。もっとも他にショスタコーヴィチの演奏があるかどうかも良く知らない。膨大なレパートリーの中にあってかなり疎遠な作曲家のようだ。

演奏はぱっと聞いた感じ、テンポも中庸でごくオーソドックスなのだが、よくよく聴いてみるとやっぱり少し変わっている。なんというか、この曲の他の多くの演奏が力を入れるところが非常にあっさりしているし、と思えば、特になんということもない部分を妙に強調したり。マゼールの他の演奏でも良くあることだが、盛り上がるポイントが微妙にずれている感じだ。やや不思議な感覚のまま終楽章まで進んで最後の部分は急激にテンポが上がって「はい、おしまい。」って感じで終わる。これはマゼールによるマゼールファンのための演奏と言っても良いかもしれない。

残念ながらこのLPは盤面の状態が悪くスクラッチノイズが多かったのだが、録音は極めて優秀。ダイナミックレンジが広く、最強音でも音に余裕がある。

ストラヴィンスキー「火の鳥」組曲 : ストコフスキー

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ストコフスキー/ロンドン響・スイスロマンド管による管弦楽曲集。AUDIO ADVICE SERIESとあるとおり、解説には楽曲解説に加え、それぞれの曲のオーディオ的聴きどころが時間とともに記載されている。曲目はストラヴィンスキー「火の鳥」組曲、ムソルグスキー「はげ山の一夜」とチャイコフスキー「ロメオとジュリエット」の3曲。

オーディオ的面白さもなるほど満載なのだが、それ以上にストコフスキーならではの濃い表現が面白い。3曲の中ではっきりとストコフスキー編曲と明記されているのは「はげ山の一夜」だけだが、「火の鳥」も「ロメオとジュリエット」も実にメリハリの効いた演奏である。一つ一つの場面でどの楽器を主役にするかがはっきりしていて、目指している方向がわかりやすい。いや、時としてわかりやす過ぎるかも。

外見的な特徴があまりにはっきりしているのでストコフスキーの指揮が嫌いな人も多いだろうと思う。日本人好みの薄化粧ではまったくない。アジア的な薄口な顔でもない。ケバイとか厚化粧だとかいう指摘も宜なるかな。でも僕はストコフスキーの演奏、結構好きだ。(ちなみに女性の場合、外人的な濃い顔は特に好きではないのだが。)確かに厚化粧、でも化粧を落としてももともと綺麗。そんな感じ。

おそらく、そういう批判は生前のストコフスキーにも届いていたのではないかと思うのだが、最後まで自分の流儀で押し切った感じが素晴らしい。きっと、クラシック音楽の伝道師として、良い音楽をいかに聞き手にわかりやすく届けるかが最も大事とわかっていたのだろう。(と思う。)

ストコフスキーが編曲した「はげ山の一夜」は「ファンタジア」に用いられたものだと思うが、全曲通じて聴くとけっこうやりたい放題である。これはニセモノだとかやり過ぎだという指摘もあろうが、まあ、そういうなら普段良く聴くリムスキー・コルサコフの改訂版もニセモノだろう。アバドみたいに基本的に原典版以外は認めないと言うならまだしも理解できるが。

録音は非常にデッドで直接音が強い。印象的にはかなり録音段階で手を入れている感じである。個々の音は鮮明だが、音作りが古臭い。

VIV LABORATORY TS-SUS1

昨年12月にQL-A7を購入した時、いくつかのアクセサリーを同時に導入した。その中にはレコードスタビライザーとターンテーブルシートもあった。

スタビライザーはオーディオテクニカのAT-618。
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これはずいぶん昔からある製品だと思う。とあるサイトで発売年1990年とあったが、だとすれば、似た製品をもっと昔から売っていたのではなかろうか。とにかく、類似の製品群の中では最も安く、十分な質量がある。基本的にはレコードを押さえ込むのがスタビライザーの機能だろうから、蘊蓄の詰まった素材で作られたものはおいおい試すこととして、これを購入した。効果のほどはと言うと、正直、これを乗せただけでは良くも悪くもない程度。

ターンテーブルシートによって音はすごく変わるといろんなサイトに書いてある。僕が最初に買ったシートは47研究所の豚皮(黒い方)のシート。
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レコードプレーヤーに付属するシートのデフォルトは多くがゴム製だが、比較して皮製品は癖がないと言われる。もともとのシートの上に乗せてみたり、ゴム製のシートを外してプラッターに直接乗せたりしてみたが、これも正直言って単独では効果はすごーく微妙である。アナログの音は入り口であるターンテーブル、アーム、カートリッジ、途中のイコライザーでもの凄く変わるので、こうした変化に比べるとシートによる変化は極小だ。まずはシステム全体の組み合わせを確立してから比較しないと違いがわからないと思う。

と言いながらも、巷には優れたマーケティングが溢れていて、天地がひっくり返るような変化が起きそうな広告を打っているスタビライザーやターンテーブルシートがたくさんある。その中で僕もとあるマグネシウム製品を購入したのだが、シートの方は純正よりも音にキレがあって良かったものの、スタビライザーはまったく役に立たなかった。

RIGID FLOAT(NELSON HOLD付)を購入して大満足のVIV LABORTORYからステンレス製のターンテーブルシートが発売されていることはトーンアームを買った時から知っていたのだが、結構な価格なので果たしてそれに見合うだけの効果があるのかよくわからず、ずっと買わずにいた。ウエブサイトを見てもこの製品のレビューはあんまり見つからない。最近になって自分のシステムもようやく落ち着いてきたので、意を決してヨドバシカメラで購入してみた。

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TS-SUS1

製品の内容は上記リンク先のメーカーサイトをご覧いただくとよくわかるが、この製品は制振材をステンレス板二枚でサンドイッチしたレコード径の板が通常のシートに当たる部分になっている。いろいろ工夫を凝らした金属製のシートは他にもいろいろあるが、この製品の大きな特徴は外周部にステンレスの細いリングが接着され、そこだけがレコードとの接点になっていること、裏面は真鍮製のボールが3つ埋め込まれておりプラッターとはそのボールが点接触するところである。横から見るとシートはプラッターから少し浮かんでいる。さらに外周部が高くなっているので、それまでのシートに比べるとだいぶレコード面の位置が高くなる。ほとんどの場合、アームの高さ設定が必要になると思う。

写真のとおりスタビライザーが付属しているので、レコードを外周部で支えながらスピンドル周辺で押さえ込むことになる。この当たりNELSON HOLDと考え方が似ている。なお、プラッターから少し浮いている上に周辺部が高くなっていることから、スピンドル軸が短いプレーヤーの場合、スピンドルの長さが足りない可能性がある。この点、TD321Mk2はギリギリだった。ちなみにフローティング構造のプレーヤーの場合、ここまで重いとターンテーブルが沈み込んでプリンスと干渉したり、フローティングそのものにダメージがある場合も考えられる。TD321Mk2もシートなしの時に比べて明らかに沈んでいる。プリンスとのクリアランスは十分あり回転に支障はないが、長期に渡って使用するうちにバネは劣化するかもしれない。

さて、実際の効果はどうかと言うと、このシートはこれまでのものと比べてはっきりとした効果がある。まず第一に、外周部のみでレコードを支え、レーベル部分をスタビライザーで押さえ込むというメカニカルな仕組みによって、レコードの反りが見事に解消される。レコード全面を吸着するようなシートは使用したことがないが、そうした大掛かりな仕組みを用いずにここまでレコードの反りがなくなるのはありがたい。目視で明らかにアームの上下が少なくなった。この結果、カートリッジは不要に登り坂や下り坂をトレースする必要がなくなるので、聞こえてくる音からはワウやフラッター(のような不規則な音の変化)が少なくなる。メーカーサイトにあるように、シートの素材に固有の鳴きが少ないことによる効果もあるのだろうが、それよりも盤面の平坦化は効果が大きいと感じた。

ところで、シートの構造上、レコードは外周部を除いて浮いた状態でトレースされていることになる。シート自体は重量があるが、プラッターの重量を増やしていることにはなる一方、レコード自体はプラッターと一体化しているわけではない。中空に浮いているのだから、カートリッジの針圧を支えているのはレコード自体の剛性だけになるが、これによる副作用は全く感じない。むしろ、音は澄み渡っているし、低音も十二分に出る。メーカーはプラッターの素材にもの凄く気を使って工夫しているが、レコードとプラッターが完全に密着していない限り、その効果は限定的だと思う。

結論として、このシートは本当にお薦めだ。ただし、上に書いたとおり、シートの重さ、高さの問題からすべてのターンテーブルにこのシートを使うことはできない。プラッターから一番高い外周部まで約1cmの厚みなので、そこにレコードを乗せても大丈夫か確認の上、購入される方が良い。

追記;
TD321Mk2で効果を確認した後、DDX-1000にも乗せてみた。DDX-1000のプラッターはレーベル部分が金属製で取り外しできず、デフォルトではその周りにゴムシートが乗せてある。ゴムシートの上にTS-SUS1を乗せるとスピンドル軸の長さが足りないので仕方なくゴムシートを外し、金属部分の上にTS-SUS1を乗せた。こうするとプラッターの金属部分とTS-SUS1は直接接触し、裏側のボールは接点を失って宙に浮く。この状態でレコードを乗せても外周部に支えられることで反りは解消する。デフォルト状態はもちろん、マグネシウム製のターンテーブルシートを置いている状態よりも音は良い。が、もう一度、TD-321Mk2に戻してみると圧倒的にこちらの方が良い音で鳴る。比較するとDDX-1000に乗せた状態は響きが抑制され、かなりデッドな音になる。上では素材の鳴きよりも反りがなくなる効果が大きいと書いたが、ボール3つで点接触していることに伴う音質改善効果も相当あるようだ。なお、どちらで使用しても不思議なくらいスクラッチノイズが減る。どうしてそうなるのかはわからないが、明らかに背景が静かになった。

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 : フェラス

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クリスチャン・フェラスによるチャイコフスキーとメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。バックはシルヴェストリ/フィルハーモニア管。なお、フェラスは60年代にカラヤンと多く共演していて、このアルバムに収められた定番の組み合わせも再録している。

LPには録音データの記述がないが、調べたところこの録音は1958年のもののようだ。ステレオ初期、フェラスはまだ25歳ということになる。もっとも10歳でコンクールで優勝し、13歳でパリ音楽院を首席で卒業したという天才なので、25歳でも経験は十分積んでいたに違いない。

チャイコフスキーはとても端正で美しい演奏だった。シルヴェストリ/フィルハーモニア管のサポートも良く、特に第二楽章でヴァイオリンに木管を中心とするオーケストラが寄り添うところは印象的だ。

アルバムの解説に「今年(71年)やっと38歳になる」と書いてあったので、今はどうしているのかと思って検索してみたところ、82年に自殺したと知った。まだ40代で命を絶ってしまったのには何かのっぴきならない事情があったのだろうが、それ以降も現役だったらきっと素晴らしい演奏を残したのではないか、と思わせるだけの演奏を聴かせてくれる。カップリングされたメンデルスゾーンも名演奏だ。

ステレオ最初期の録音だが、このブログ記事を書くために録音年代を調べるまで60年代後半のものかと思っていたほど音は良い。

ブルックナー交響曲第3番「ワグネル」 : 西脇

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西脇義訓指揮デア・リング東京オーケストラによるブルックナー交響曲第3番の録音を初めて知ったのはたぶん「ステレオ・サウンド」の新譜紹介だったと思う。解説を読んで、このCDは絶対欲しいと思った。CDの批評を読んで、どんな音がするのかワクワクしたのは実に久しぶりのことだった。普通の演奏とこの演奏がどう違うのかはHMVのサイトでこのCDの紹介ページをご覧いただくとよくわかる。

その割には、その後アナログに夢中になったこともあり、実際に購入するまでに時間がかかったのだが、今日、ついに手に入れることができた。早速、開封してみる。ライナーノーツを読んでわかったのは、西脇さんという方がプロの指揮者ではなく、レコード会社に勤めていた音楽プロデューサーであり、今はN&Fというレコード会社を経営していること。デア・リング東京オーケストラも既存のオーケストラではなく、この録音のために集められたということだ。自分の理想とする演奏を実現するためには自前のオーケストラを自分で指揮するのが一番だったのだろうが、そういう夢を実際に叶えてしまったという点だけでもすごいことだと思った。

演奏を聴いてみると、その柔らかい響きにまず魅せられる。ホールの特性とオーケストラの配置の相乗効果だと思うが、オーケストラの各パートの音が綺麗にブレンドされている。ブルックナーの交響曲の演奏をいろいろ聴いてきたが、この演奏ほど「オルガン的」な響きを感じた演奏はなかった。ブレンドされているからと言って、個々の楽器の音色がぼんやりしていることはなく、奏者の数が少ないこともあって透き通るような響きの中から一つ一つの楽器の音は明瞭に聴き分けることができる。

オーケストラであっても室内楽のように各奏者がお互いの音を聴き合いながら演奏すべきという考え方からオーケストラは配置されているが、その効果は良い方向に表れていると思う。残響が豊かなホールでもあり、また、お互いが音を確認しながら演奏していることもあってか、全体にゆったりとしたテンポが貫かれており、それが急変するようなこともない。指揮者も演奏者の自発性に委ねているようで、切迫感を訴求したり、煽り立てるような表現は皆無なので、ドラマティックな演出を期待すると肩透かしに合うが、そこここでしみじみと実に良い音がする。何よりもこの曲の良さが伝わってくる。全曲通じて立派な演奏だが、特に第二楽章はとても良かった。

ホールエコーをふんだんに取り込んだ録音は音に丸みがあって透明感も高い。個人的な好みから言うとティンパニの音が一音一音もう少しはっきりと聴こえる方が良いが、あえてそうしないのだろう。少し高いがシングルレイヤーSACDもリリースされている。この演奏、録音の目指す方向にSACDは合いそうだ。

SOMEDAY MY PRINCE WILL COME : マイルス・デイヴィス

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マイルス・デイヴィスのアルバムの中でもお気に入りの一枚。アマゾンに輸入盤アナログLPを見つけて購入したのだが、到着してからモノラルだということに気付いた。61年の録音なのでステレオ録音もあるし、以前に所有していたCDはステレオ盤だったので、新譜(リイシュー)でモノラルを売っているとは思わなかった。商品説明にも一言もモノラルと書いていない。アマゾンはHMVと比べるとこの当たりがいい加減だ。

ちょっと残念。この録音は古いものにも関わらず音がとても良いことをCDで知っていたのでなおさらである。まあ、とにかく音を聞いてみようと思ってプレーヤーに乗せてみる。輸入盤にありがちなのだが、インナースリーブの材質が良くないために開封した段階で少しすり傷があったりする。。。

モノラルカートリッジは所有していないので、フォノイコライザーをモノラルにセッティングして(こうするとイコライザーがモノラル再生に不要なカートリッジの上下の動きに伴う音をキャンセルしてくれる。)DL-103PROで聴いてみる。聴く前は不満たらたらだったのだが、マイルスのトランペットの出足から凄まじく鮮明な音がする。

モノラルなので2本のスピーカーの真ん中にどっしりと音が定位してそこからトランペットやらサックスやらピアノの音がどんどん飛び出してくる。あんまり奥行きを感じないが、音の勢いはすごい。なるほど、あえてモノラル録音を求める人がいるのもわかる気がする。

すっかり機嫌が良くなって、次にShelter Model 7000で聴いてみる。同じアルバムなのに再生の仕方がぜんぜん違う。DL-103PROと比較して聞き始めはすごくおとなしく感じる。加えて、奥行きが増えてステージがぐっと遠くなる。DL-103PROの時はジャズクラブで前の席に座って聴いているような感じだったが、Model 7000だとちょっと後ろの方でバンド全体を俯瞰して聴いているみたいだ。おとなしく聞こえるのは楽器の音が研ぎ澄まされているからかもしれない。音の立ち上がり立下りは相変わらず速い。どっちが良いかは好み次第かな。

とっても良い音のアルバムなので僕は手元に置くことにしたが、神経質な人は買う前に検盤する方がいいと思う。

オルトフォン MC30W

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トーンアーム集めもひと段落したところで、次はそれぞれのトーンアームにどのカートリッジが合うかいろいろ試してみている。特定のアームに特定のカートリッジが合うというよりもアームが得意なカートリッジの重量とコンプライアンスがあるので、それを合わせた上でトランスとイコライザーを組み合わせることになるのだが、これはなかなかパズルのようなところがあって簡単ではない。しかし、そこが楽しいところだ。

カートリッジの脱着が面倒なSeries IVにはShelterのModel 7000が付きっぱなしだし、Series IIIは最近、MMカートリッジ専用としているので悩みは少ない。

FRとIkedaのアームは同じ製作者なのでまったく同じ傾向で、重量があって針圧も重めのカートリッジ(+シェル)が合う。ということでSPUとDL103を装着している。

こうやっていろいろ試してみてわかったのは、結局、Rigid Floatが最も汎用性が高いということだ。以前、AT-F7を使って重めのカートリッジ、ローコンプライアンスが合うと思ったのだが、ある程度の重量がある方が良さそうだという点は変わらないのだが、使い続けてみるとこのアームはコンプライアンスはあまり気にしないように感じる。

この間、MC30Wを久しぶりにネルソンホールドに装着して聴いてみた。そしたら凄い良い音だった。AT-F7に続いて購入した僕にとって初めての(個人的感覚では)高級カートリッジだったのだが、その後、どんどんカートリッジを買い足していく中ですっかり影が薄くなりかけていた。

短期間とはいえ、カートリッジとトランスとアームの組み合わせを何十回も変えて試してみたのは大いに勉強になった。今回、MC30Wにはハイフォニックというメーカーが自社のDL103(Pro)用に開発したトランス(カートリッジと対で売っていた。)を組み合わせている。MC30Wはインピーダンスが公称6Ω、DL103Proは公称38Ωなのでかなり差があるが、入力インピーダンス100Ωのこのトランスはいずれと組み合わせても何の問題もない。というか実に良い音で鳴ってくれる。20dbという増幅率も比較的高出力のMC30Wにはぴったりだ。

ぐるっと回って久しぶりにMC30Wに戻ったが、クラシックに良し、ジャズに良し、とても満足である。

クールビズ

うちの会社では2011年の大震災後の電力不足以降、6月1日からクールビズを推奨している。それまで営業はどれだけ暑くてもスーツにネクタイが実質的に必須だったが、今は半そでワイシャツにネクタイか、取引先のルールによってはネクタイもなしといういでたちになった。ジャケットを脱ぎ捨ててみると亜熱帯化が著しい日本で夏に上下スーツを着ているのは実に非合理的だということに気が付いた。

ということで、今週から颯爽と半袖ワイシャツに切り替えた。月曜日の東京は日差しが強く大正解だったのだが、その日の夕方に出張で福岡に入ったところ、雨が降っているうえにかなり肌寒い。油断して天気予報をよく見てこなかった。なんということか。念のため、一着だけスーツを持って行ったのだが、ワイシャツはすべて半袖。

水曜日の朝、大阪に移動すればなんとかなるかと思ったら、追いかけるように梅雨空がやってきた大阪もそれほど気温が上がらず。今日、東京に戻っても雨。気温は21度しかない。4日間、大失敗であった。

ニュースを見れば北海道は猛暑の様子。どうやら行き先を間違えたようだ。明日はスーツに長袖に逆戻りになりそうだ。

ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」 : モントゥー

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「田園」に引き続き、モントゥーの演奏からドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」「夜想曲」、それにラヴェルの「スペイン狂詩曲」と「亡き王女のためのパヴァーヌ」を聴いた。

モントゥーは61年、86歳の時にロンドン響の常任指揮者に就任しているが、常任指揮者としての最初のコンサートがこのアルバムに収められたラヴェルの2曲だったそうだ。ちなみにモントゥーはラヴェルと同じ年、1875年生まれである。戦前に亡くなったラヴェルはずいぶん昔の人という印象だったので二人が同い年という事実に少し驚いた。

そう考えると、モントゥーはドビュッシーやラヴェルと同時代を生きてきただけあって、どちらの演奏も実に素晴らしいものだ。特にドビュッシーの二曲は素晴らしく、個人的には今まで聴いた中でベストと感じた。フランス人によるフランス曲の演奏だからというわけでもないだろうが、端正で品がよく、かつ、ニュアンス豊かだ。何より90歳になろうかという年齢をまったく感じさせない。64年に没したモントゥーは長生きと言えようが、これだけの演奏を聴くともう少し長く生きてもっとたくさんの録音を残して欲しかったと思う。

古い録音だが、これもデッカのおかげで十分に鮮明な音で聴ける。名盤。

ベートーヴェン交響曲第6番「田園」 : モントゥー

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ピエール・モントゥー/ウィーンフィルによるベートーヴェンの「田園」は名盤の誉れ高いワルター/コロンビア響と同じ58年の録音。56年前の録音だが音は良い。ステレオイメージはそんなに広くないが、中央に定位したオーケストラの音は克明に捉えられている。

モントゥーの指揮を初めて聴いたのは確か北ドイツ放送響と録音した「幻想交響曲」だった。先に感想を記したステファンスカのピアノ協奏曲と同じコロンビアの1300円廉価盤シリーズの一枚。今、振り返るとこのシリーズは安いが味のある名演奏揃いだ。

ワルターの演奏同様、この「田園」は往年の名演奏として知られているが、僕は今回初めて聴いた。名前からも録音年代からも古風な演奏を想像していたのだが、実際に聴いてみるとぜんぜんそんなことはない。録音年代を伏せて聴いたら最近の録音を思うかもしれない。誠実で丁寧だが、全体に陽性の演奏だ。細かくどこが良いというわけではないが、全体としてすごい良い演奏だと思う。僕は聴き始めて30秒で気に入った。

最近、やはり50年代終わりに録音されたカラヤンとの演奏を聴いていても思うのだが、この頃のウィーンフィルって、少なくとも録音で聴く限り最近より良いのではないかと思う。あるいは、デッカの方がDGよりもこのオーケストラの録音が上手なのかもしれない。この「田園」の演奏でも「木彫り」の印象を受ける音色がする。楽器が豊かに鳴っている。CDでどういう音がするかわからないのだが、LPで聴く限り、これは実に優れた「田園」の演奏だと思う。

グリーグ ピアノ協奏曲 : ステファンスカ

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ショパンのピアノ協奏曲第1番がとても好きなので、オークションでいろいろな演奏家の録音を組み合わせた出品を見つけて落札したのだが、届いたらすべてピアノ協奏曲第2番だった。。。出品者の責任ではなく、僕の勘違い。別に2番が嫌いということではないので気を取り直して最初に取りだした一枚がこれ。聴いてみたら2番も悪くないが組み合わせになっていたグリーグのピアノ協奏曲がとても良かった。

この録音、ピアニストも指揮者もオーケストラもすべてポーランド勢。グリーグを弾いているステファンスカ、ショパンを弾いているスメンジャンカの二人とも戦後最初のショパンコンクールに参加している。(ステファンスカはその年の1位)

グリーグのピアノ協奏曲といえばなんといっても冒頭のピアノソロが印象的だが、ステファンスカの演奏は落ち着いたテンポでしっとりと聴かせてくれる。その後も技術をひけらかすようなところが微塵もない抑制された丁寧な演奏でこの曲の魅力を余すところなく伝えている。指揮者のヤン・クレンツという人のことは何も知らないが、録音時点でポーランド放送交響楽団の音楽監督だったようだ。ピアノと演奏のバランスの取れた見事な演奏だ。

録音データがどこにも記載されていない。おそらく60年代の録音と思われるが、ピアノの響きもよく捉えられていて録音に不足はない。
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