ベートーヴェン交響曲第3番 : ショルティ

0b931de2036773149f64917239f12740.jpg

初めて買ったベートーヴェンの交響曲全集がショルティ/シカゴ響のLPだったので、僕の中ではショルティのベートーヴェンがデフォルトの演奏になっている。ショルティの演奏はクラシックを聴き始めた頃からずっと毀誉褒貶半ばの評価だが、シカゴ響と組んだ最初の交響曲全集は非常にクオリティが高い名演だと思う。この思いは他の指揮者によるベートーヴェンをたくさん聴いた今も変わりない。

面白いことにショルティに対する評価が割れているのはアメリカでも変わらないようで、この全集に対するamazonのカスタマーレビューを読んでも絶賛の5つ星からほぼ完全否定の1つ星までバラバラだ。あえて言えば奇数番の曲に対する評価は悪くないものが多く、一方、偶数番の曲に対する評価は良い悪いの前に見当たらない。私見では偶数番の曲もそれぞれとても良いと思うのだが。

「英雄」の演奏はショルティ/シカゴ響の数多い録音の中でもひときわ優れたものだと思う。筋肉質で力強い演奏を想像される方も多いと思うが、無駄肉はないものの力こぶや額に汗といった暑苦しい部分は皆無で、落ち着いた大人の演奏である。これみよがしの演出もなく、どちらかと言えばゆったりとしたテンポの中、実に堂々とした演奏が展開される。アメリカの中西部当たりのひたすら真っ直ぐなハイウエイを上質なサスペンションとシートを持った大型車でクルーズしているような感じだ。それじゃベートーヴェンじゃない?音楽室にあった眉間にしわを寄せたベートーヴェンが好きな人には向かない演奏だが、これも一つの立派なベートーヴェンだと思う。名盤。
スポンサーサイト

バッハ 管弦楽組曲 : リヒター

41siY4F4LOL.jpg

マゼールが亡くなった直後、タワーレコードのサイトでいくつかマゼール指揮のCDを購入した。その中にベルリン放送響と録音した「管弦楽組曲」全曲のCDがあった。すでに同じコンビの「ブランデンブルク協奏曲」のCDは持っていてとても気に入っている。到着したCDを早速聴こうとも思ったが、「管弦楽組曲」を聞くのは実に久しぶりなので、その前にお手本として聴いたのがリヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団の演奏。「名曲名盤500」でも他を圧倒して第一位。登場以来、半世紀に渡ってこの曲の基準に位置づけられているような演奏だ。

ジャケット写真はCDのものだが、実際に聴いているのは1番と4番が組み合わされたLP盤。年始に購入したクラシックLP福袋に含まれていた。考えてみれば購入後、すでに半年も経っているが、ようやくしっかり聴いてみた。

60年頃の録音だが音は良く、上品で毅然とした模範的演奏の姿を余すところなく伝えている。テンポもリズムも楽器の強弱も演奏技術もすべて完璧。バッハが聴いても満足に違いない。一生持っていて損はない、という録音だと思う。いろいろな演奏を楽しんだ後に最後に戻ってくるのもこの演奏かも。

ただ、こういうと怒られそうだが、この演奏は面白くない。いや、しっかり聴けば面白いかもしれない。ながら聴きみたいないい加減な聴き方でなく、聴き手も真剣に耳を澄まして聴くことが求められる演奏なんだと思う。そうなるとなかなか難しい。なぜかと言えば、僕は今のところ、「管弦楽組曲」がそんなに好きじゃないのだ。

じゃ、なんでこの曲を聴くのかと言うと、マゼールの演奏が手に入ったからである。リヒターの名演を聴きながら、今、僕が考えているのはマゼールの演奏にどんなサプライズがあるのか、ということだ。とっても楽しみである。

Michell Engineering ORBE SE (2)

稼働以来、快調に動いていたORBEだったのだが、一昨日の夜、ジャコ・パストリアスを聴いていたら突然止まってしまった。急にテンポが落ちたと思ったら、数秒間惰性で回転した後、ぱったり動かなくなった。モーターに動力を供給している別筐体の電源が死んでしまったのだ。その瞬間、しばらくは狐につままれたような気持ちだった。最初はブレーカーが落ちたかと思ったが、電気も点いているしクーラーも動いている。ラックのすぐ上の段に置いてあるプリアンプのランプも点灯している。次に疑ったのはヒューズだったが、電源部の底部にあるヒューズボックスを開けて中を見ても何も問題なさそう。コンセントを抜き差ししたり、念のために別のコンセントに差してみたりもしたのだが、うんともすんとも言わない。

それまで並行輸入で買って大正解と思っていたのだが、こうなると個人輸入は非常に面倒だ。修理するにも本国に送らなければならない。直るとは思うが時間がかかりそうである。だいたいどういう手段で送るか、送料は誰が負担するのか、等々考えるだけでも鬱陶しい。その日は電話会議もあったし、それ以上、考えたくなかったので朝になったら自然復活していることを祈ってそのまま寝た。翌朝、念のためにもう一度スイッチを入れてみたが、やっぱりダメだった。

出勤途中で対応を考えた。もちろん、まずは購入元に連絡するのだが、同時に日本の輸入代理店に相談すべきか、しばし悩んだ。こういう時だけ代理店に頼るのも虫のいい話だとは思ったが、結局、代理店にも連絡することにした。前にも書いたが、国内仕様は電源部が改造されている。今の電源を国内仕様に改造するか、国内仕様の電源を部品として買うことができないか、それだけでも聞いてみることにした。

朝8時過ぎに購入元と代理店にメールをした。午後3時前にまずイギリスから返事が来た。時差が7時間あるので向こうの8時前。おそらく出社直後に返事を送ったのだろう。この当たりの対応は実に速い。「今までそういう事例は聞いたことがない。とにかく電源部を送ってくれないか。」というメールだった。まあ、そうするしかないか。しばらくORBEでレコードが聴けないな。

夕方、日本の代理店からも連絡があった。特に個人輸入のことを指摘することもなく、部品として購入できるという連絡だった。価格と納期を現地に問い合わせるが、担当者が夏休みなのでしばらく待ってほしいとのこと。親切な対応に感謝だが、こちらも時間がかかりそうだ。

夜、帰宅して、電源部のサイズと重さを確認した。ぎりぎりEMSで送れるかもしれないが、いびつな形なので梱包が問題だ。梱包する前にダメ元で分解してみることにした。分解といってもトランス本体と基盤については手のつけようがない。ネジを外してカバーを取り、配線が外れたり基盤が焦げたりしていないかを目視でチェックするだけ。再度、ヒューズも外し蛍光灯に透かして見る。問題なし。トランスのカバーを外す。配線をたどる。問題なし。基盤を留めているネジを外し、基盤の裏側を見る。特に問題なし。実に不思議だ。なぜこれで電源が入らないのか。せっかく蓋を開けたのでカメラ用のブロワーで埃を飛ばしてからネジを締め直した。念のため、もう一度、電源を入れてみる。

すると、何事もなかったのごとく緑色のランプが点灯し、電源部は再び稼働し始めた。僕は再び狐につままれたような気持ちになったが、しかし、間違いなく電源が入っている。ケーブルをモーターに接続し、もう一度スイッチを押す。澄ました顔でプラッターが回転した。一体、なんだったんだろう?

とりあえず直った旨イギリスにメールすると5分と置かずに「Ah Ok. Thank you!」という返信が来た。向こうもホッとしたことだろう。国内仕様の電源については価格と納期を聞いた上で再度検討することにした。いずれにしても代理店の方の対応には感謝している。

オーディオ機器の個人輸入にはやはりリスクが伴う。個人的にはもうこりごりだ。

ジャコ・パストリアス : ジャコ・パストリアス

20120412_eadcb7.jpg

久しぶりに普通の時間に家に帰ってこれた。とはいえ、実は9時からテレカンなのだが。つかの間の休息で手にしたのがこのLP。名ベーシスト、ジャコ・パストリアスのソロ・デビューアルバムは、大学生になってジャズを聴き始めた頃に立ち読みしたジャズの名曲解説の本の中で絶賛されていた。

しばらくしてから中古のCDを見つけて買ってみたのだが、76年に録音されたこのアルバムの中身はそれまでメインで聴いていた50年代~60年代のブルーノート系ジャズとは一風変わったものだった。ポップなのに枯れているし、電気的なのにアコースティックな響きで、無思想に見えて哲学的といった感じ。いろんなジャンル、いろんな地域の音楽が混じり合って、全体としてとっても良い感じだ。ミクロネシア的音階で不協和音が響いているのがなぜか耳に心地よい。疲れている時には特に良い。

中古CDは購入以来もう20年近く所有していると思う。このLPは出張中に届いたので初めて聴いた。CDに比べるとLPははるかに音が丸く、温かい。おそらくマスタリングが異なるのだろう。LPからは人間が演奏している姿が浮かぶ。比較してCDはなんというか宇宙の彼方から音が届けられるように感じる。このアルバムの場合、どちらもありだと思う。

ブログが見れない

中国出張から帰国。日程的には短かったのだが、連休がつぶれてしまって悲しい限りである。

今回の出張で何が困ったというか、困惑したかというと、あちらではこのブログが見れないのだ。場所が違うとはいえ中国には5月にも行ったのだが、その時にはぜんぜん気づかなかった。規制が強化されたのか、それとも前回は出張中にブログにまったくアクセスしなかったのか定かでないが、結論的にはFC2ブログにはまったくアクセスできない。YahooにはアクセスできるがYahooブログもダメ。

中国人の同僚に聞くと有名どころではGoogleはダメ、You Tubeもダメ、FaceBookもダメということだ。今に始まったことではなく、僕はYou TubeもFaceBookもほとんどアクセスしないので今まで知らなかっただけのようだ。

日本の報道で、中国には報道規制があるということは承知していたつもりだが、いざ自分が規制に直面してみると実に不便だし、ちょっと怖い気持ちになる。どういう仕組みかよくわからないが、アクセスを規制できる以上、やはりモニターされているのだろう。いずれにしても、あまり気分の良いものではない。

とはいえ、聞いた話によれば、すべてのアクセスが完全にブロックされているわけでもないようで、携帯なら繋がるとか、オフィスはダメでも家なら繋がるとか、抜け道もあるみたいだ。古今東西、人間は行動が制限されれば何とかして制限を回避するよう努力するようなので、規制する側と規制される側のイタチゴッコなんだろう。

こういう経験をすればするほど、日本に暮らしていることの有難さを再確認する。当たり前が当たり前じゃなくならないように、自分たちで守っていかなければ。

三連休

この週末は待望の三連休。昨日届いたマゼールのCDをじっくり聴いてのんびり過ごそう。

と言いたかったところなのだが、誠に悲しいことに今日から中国出張。賑やかに楽しそうな家族連れを横目に羽田のラウンジでこの記事を書いている。海の日って日本にしかないからなあ。

それにしても人出が多い。やっぱり景気は少し改善しているのであろうか。

どうせまた外出する時間はないとはいえ、彼の地の大気汚染がひどくないと良いなあ。

R・シュトラウス 交響詩集 : マゼール

マゼールはR・シュトラウスの演奏をかなりの数、残している。その中でもクリーブランド管との「英雄の生涯」は僕にマゼールという指揮者の存在を強く意識づけた演奏の一つ。バイエルン放送響と録音した最近の作品集は聴いたことがなかったので、Box Setを注文した。

今日、聴いたのはクリーブランド管との演奏による「ドン・ファン」「ティル」「死と変容」という3曲を収録したLP。「英雄の生涯」と組み合わされた2枚組のLPである。77年の「英雄の生涯」がアナログ円熟期の録音であったのに対し、79年のこの3曲はデジタル最初期の録音。解説によればデジタル録音するためにわざわざ収録時期を後ろにずらしたということだ。

演奏は3曲ともすっきりと淀みない流れでとても洗練されたもの。各楽器の音が綺麗にブレンドされ、適度のホールトーンを含んだ録音が演奏の素晴らしさを後押ししている。クリーブランド管の合奏能力も高く、実に聴き心地の良い演奏である。無駄な贅肉の落ちた演奏だが、音はふくよかで表情も豊か。バランスの取れた素敵な演奏だ。

ロリン・マゼール

マゼールが亡くなってしまった。体調不良とは聞いていたが、こんなに早く亡くなってしまうとは思わなかった。

84歳だから、十分長生きしたとはいえ、最近の大活躍ぶりを考えると本当に残念。クラシック音楽を聴き始めてすぐの頃からずっと、なぜかいつも気になる指揮者だった。今後、「今度はどんな演奏を聴かせてくれるんだろう?」って期待半分で新しい録音を手にすることもないと思うと寂しい。

この曲の演奏はマゼールで決まりと心底思ったことは実はあんまりない。でも数えてみたらこのブログでも12回もマゼール指揮の演奏の感想を書いてきた。記憶に残る大指揮者だったなぁ。

考えて見ると自分の中で別格の巨匠と思える指揮者はもうほとんどいなくなってしまった。

SHURE M44G

L1010976 (2)

TD321Mk2に装着した3009 Series IIIに装着するMMカートリッジとして長いことShureのV15シリーズを探しているのだが、これがなかなか見つからない。全然ないわけではないのだが、程度と価格との見合いでこれはと思うものがない。あるとあっという間に売れてしまう。どこにそんなにレコードを聴いている人がいるのかと思うのだが、人気のある製品の足はすごく速い。

それならと思って新品でも5,000円を切る価格で購入できるM44Gというカートリッジを買った。M44シリーズのオリジナルは63年まで遡れるらしいので、超ロングラン製品。今となっては商品のパッケージもDJ用途を全面に押し出しているが、ネットでのレビューではきちんと使えばハイファイ用途にも使えるとあったのでわくわくしながら装着した。

まずはジャズ、定番中の定番である「モーニン」を聴いたのだがいやはやびっくりした。めちゃくちゃ良い。良く言われているように音が太いが、これは出力が大きいことも影響していると思う。高音が伸びないという評価も見たのだが、まったくそんな風には感じなかった。金管とドラムは最高。ベースも分厚く、ノリノリで聴ける。

物は試しと思って昨日じっくり(実は3度も)聴いたスメタナの「わが生涯より」も聴いたのだが、ある意味、こっちにはもっとびっくりした。少し高音に艶が乗って最高音部では音がきつめではあるが、弦楽器の再生も悪くない。ShureのMMカートリッジはこのレコードが録音された68年の段階で、特にアメリカにおいてはカートリッジのゴールデンスタンダードだったと思う。このレコードを聴いていると、まるでこのカートリッジで再生されることを想定していたかのようだ。

結論。M44Gの価格対性能比はもの凄く高い。

スメタナ弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」 : ジュリアード弦楽四重奏団

IMG_0496 (2)

久しぶりにジュリアード弦楽四重奏団の「アメリカ」を聴こうと思ってLPを引っ張りだしてきた。60年代後半に収録されたジュリアード弦楽四重奏団の演奏は弦楽器の音がとても太くて暖かい。ピチカートとかも張り詰めた感じではなくて音が丸い。そこが昔から気に入っている。

A面を聴き終えたところで長らく聞いていなかったB面も聴いてみた。スメタナの弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」の演奏だ。同じチェコの巨匠同士、両方とも有名なカルテットなのでこの組合せはよくあると思うが、A面はいつもドヴォルザークのような気がする。スメタナの方がA面という録音もあるのだろうか。

まるでベートーヴェンのように、スメタナの耳が晩年聴こえなくなったことは音楽の授業で「モルダウ」を聴いた時に先生から聴いたかもしれない。とにかく長い間、そのことも終楽章で耳鳴りが音符になっていることも知っていたのだが、今日、久しぶりにこの曲を聴いて、なぜかもの凄く悲しくなった。

ジャケット裏面の解説をあらためて読んだからかもしれない。実に久しぶりにレコードで聞いたからかもしれないが、1楽章からずっとこんなに悲劇的で美しい音楽だったとは。すでに聴力を失っていた作曲家はどんなに切ない気持ちでこの曲を作ったかと思うとやりきれない。すべての楽章がはかない喜びと不安に満ちているが、特に妻を回想する第3楽章は良い音楽だ。快活にスタートするだけに終楽章の終わりは余計に暗い。

演奏はさすがに息がぴったりあっていて立派。ことさらに厳しい表現をしているわけではないが、心に響く演奏だと思った。

ハムじゃなかった。らしい。

「アンプからハム音がする」と、この間書いたが、実は故障だったりしたら困ると思ってショップにメールで症状を伝えたところ、どうやらこの「ブー」音はハムではなく「発振」という症状の可能性が高いらしい。「発振」という言葉は聞いたことがあったが、アンプが発振するともっと「ビー」とか「ガ~」とかひどい音がして放置するとスピーカーが壊れるような状況になるものだと思っていた。

どうやらプリとパワーを繋いでいるケーブルのシールドが弱くてそこがノイズを拾っているようだ。単芯同軸ケーブルか、そのための対策を講じたケーブルを使用することで症状が改善する可能性が高いということで、まずはケーブルをお借りすることにした。ただ、該当するケーブルが現在貸出中なので到着までしばらくかかりそうだ。

ノイズレベルから考えるとこのままでも通常使用に問題ないようだが、ケーブルの変更でノイズが消えるならそれに越したことはない。もっと早く相談すれば良かった。

ミッチェルエンジニアリング ORBE SE

L1010972 (2)

先日も記事にしたが、一週間前に新しいレコードプレーヤーが到着した。自分でも呆れてしまうが、これが5台目のプレーヤーになる。Michell Engineeringというイギリスのメーカーが製造するORBEというプレーヤー。当初、電源で思わぬ問題が生じたため不安なスタートになってしまったが、それ以外はなんの不満もない。この一週間はTD321Mk2もDDX-1000もまったく聴かなかった。これは実に静かで音の良いプレーヤーである。回転が安定していてワウフラッターが少ないので余韻が自然に再現される。おかげでピアノの音も安心して聴ける。

ORBEについては日本語で検索しても販売店のサイトが出てくるばかりでレビューも写真も少なく、どういう仕組みになっているのかよくわからなかったのだが、自分で箱から出して組み立てたのでようやくその構造が理解できた。

DSCF1403 (2)
ORBEにはダストカバーや透明アクリル製のプリンスのついたモデルとそれらを省いたSEバージョンがある。僕のはSEバージョンなので、正面上方から見るとご覧のとおりターンテーブルにアームとモーターが付いただけのシンプルな外観である。アームの装着された右側の耳はプラッターを支えるフレーム(正確にはサブフレーム)と一体化してるが、左側の耳にあるモーターはラックに直接置かれていてサブフレームとは接触していない。緑色のスイッチがモーターのオンオフスイッチ、電源は別筐体でモーターとはケーブルで繋がれている。

DSCF1404 (2)
正面から見るとこんな感じ。てっぺんの鍋蓋みたいなクランプをスピンドルにねじ込んでレコードを押さえつける。ターンテーブル側はレーベル部分が少しだけドーム状(凸状)になっていてそれを上から押さえるのでレコード盤全体は中心から外縁部に向けて微妙に下り傾斜になる。(目視できるほどではない。)Viv Labのターンテーブルシートとは傾斜の向きが逆だが考え方は似ている。もっともいずれもレコードの反りを取り除く点では共通だが、ORBEがレコードとプラッターを一体化する考えの一方でViv Labはむしろレコードとプラッターの接点を排除する考え方なのでその点はまったく逆の発想だ。

比較的分厚いプラッターの重量は4kg。素材はレコード盤との親和性を考慮した複合素材らしい。プラッターを支えるサブフレームは金属製で裏側には制振のためか粘土みたいな感触のものが貼られている。

DSCF1408 (2)
これはサブフレームの裏側の一部(アームプレートの裏側辺り)だが、この写真で白い部分がその粘土みたいなもの。ご覧のとおり、その貼り方がいかにも職人が一枚一枚手で貼りましたという感じである。現物合わせで適量を適切なポジションに詰めているのかもしれない。

DSCF1407 (2)
正面少し下側から見る。サブフレームの下がベースフレームになる。二枚のアクリル製フレーム(スパイダーと呼んでいる。)とフットの組み合わせだが、これも単純ながら実に良く考えられている。

DSCF1406 (2)
ご覧のとおり、二枚のスパイダーの間は微妙に空いている。指示では1~2mm程度間隔を空けよとのこと。

DSCF1411 (2)
ここに写っているネジでスパイダーの間を調整する。このネジは高さ調整に加えて二枚のスパイダーを点接触させるためのスパイクの役割も果たしている。結果、ラックとはフットとスパイダーの二段階で点接触する構造になる。ここまでの土台の水平調整はフットで行う。

購入まで写真を見てもどこでフローティングされているのかわからなかったのだが、フローティング用のバネはこのサブフレームから立ち上がっているアルミ製の支柱の頂点から吊り下げられている。といっても外側からは全く見えない。

DSCF1405 (2)
なぜかといえば、この金色のカバーの中に収められているからである。言葉で説明するのが難しいのだが、スパイダーから立ち上がっているアルミ製の支柱に、バネをねじ込んだもう一本のアルミ製のパイプをかぶせ、そこにサブフレームを乗せる構造になっている。組立時にはこの部分の部品の組合せに悩んでしまったために写真も撮り損ねた。

DSCF1412 (2)
金色のカバーを外したところ。サブフレームの右側にはアームが乗っている一方、左側は何も支えていないのでそのままでは当然バランスが取れない。このバランスをバネの高さを変えることによって調整する。写真に見えるバネ上部のつまみを回すことでバネの支点の位置が変わって高さが調整できる。3か所のバネの高さを調整してアーム装着後のサブフレーム全体の水平を調整する。この調整がORBEの肝で、いい加減に調整すると静止時にはバランスが取れているように見えても回転することによって偏りが起こり、ワウフラッターが増える。土台の調整とサブフレームの調整は独立しているので、まず土台をきっちり調整した後でサブフレームを調整する必要がある。最初はここがよくわからず、最後にフットで全体を微調整したために回転が不安定になり、ひどい音が出てきた。しばらくして間違いに気づき、もう一度土台から組み立て直したところ素晴らしい音になった。

今までのプレーヤーと比較してORBEの音は非常に中低音が充実している。量が多いだけでなく諧調が豊かだ。これは回転が安定していることとクランプでレコード盤をがっちり押さえつけていることの相乗効果だろうか。フローティングのおかげでハウリングマージンが非常に高いのも安心感がある。回転が安定しているのでリズムの切れが良く、ジャズやロックを聴いても楽しい。今後はもっぱらこのプレーヤーを使うことになりそうだ。

メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 : ハイフェッツ

IMG_0493 (2)

以前、景気が上向きの時は車のデザインが四角くなり、景気が悪い時には丸くなるという話を聞いたことがある。何も車だけの話ではなくバブルの頃のテレビドラマを再放送で見れば髪型も服装も確かに四角い。日本の経済がこれから本当に上向いてくれば、またトヨタからも角ばった車が出てくるだろうか。

この理論の正当性はさておき、流行というものはだいたいにおいて周期的に行ったり来たりするものみたいだ。スカートが長くなったり短くなったり、ソース顔が流行ったり醤油顔が流行ったり。眉が太くなったり細くなったり。

ハイフェッツの二大有名ヴァイオリン協奏曲の演奏を聴くと、その後の名ヴァイオリニストが弾くこれらの曲が実に感情たっぷりセンチメンタルな演奏であることに驚く。ハイフェッツの演奏には大袈裟な表情は一切ない。快刀乱麻を断つ切れ味の鋭さで颯爽と演奏している。チャイコフスキーのバックを務めるライナーはもとよりメンデルスゾーンのバックを務めるミュンシュもまた実に潔い伴奏ぶりである。トスカニーニしかり、戦中戦後からステレオ初期には実に「モダン」な演奏スタイルがすでに確立している。

その後、しばらくの間、流行りの作曲家も流行りの演奏もどんどん濃厚ロマンティックな方向に展開していった感がある。その方向が定着すると今度は古楽器演奏に代表される楽譜に忠実な感情表現控えめな演奏が流行り始めたり。まあ、どの時代もそんな単純に演奏スタイルが分類できるわけではないし、かなり乱暴な話だが。

ハイフェッツの演奏スタイルは好きな人も嫌いな人もいるだろうが、僕は2曲とも凄く良い演奏だと思う。折に触れて繰り返し聴きたくなる飽きのこない演奏だ。録音はさすがに少し古い。

ハイドン後期ピアノソナタ集 : グールド

a.jpg

新譜が出た時に欲しいけど高くて買えなかったことが鮮明に記憶に残っているLPが何枚かある。グールドの弾く「ハイドン後期6大ソナタ集」はそんな思い出の中の一枚、というか二枚組。

82年の新譜だから、まだ高校生の頃。この前にリリースされた「ゴールドベルグ変奏曲」の再録音でグールドのことを知り、ほどなくFM放送でその演奏を聴いて感動した。そうこうするうちにこのハイドンのソナタ集。ハイドンのピアノソナタ?「交響曲の父」なのに?と思ったのを覚えている。今でも決してメジャーな曲ではないと思うが、その頃はそんな曲があることも知らなかった。

ご覧のとおり、なんだか楽しい音楽が詰まっていそうなジャケット。デジタル録音の記載も誇らしげな高級感溢れる帯。欲しい。でも二枚組で5,600円!当時の僕には天文学的数字であった。いざ、貯金を使うにはあまりにリスキー。で、結局、CD時代にも購入せず、30年以上の時を経てついに中古LPを購入。とってもハッピーである。

残念ながら実際に購入したLPには帯は付いていなかったが、盤の状態はすこぶる良好。2枚目のLPに至ってはほぼ聴いていない状態ではないだろうか。針を落とした時にあまりに静かだったのでミュートボタンを押したままかと思ったくらいだ。

演奏はもう抜群に素晴らしい。僕はこの演奏でしかハイドンのピアノ・ソナタを聴いたことがないので、他のピアニストがこれらの曲をどう演奏するのかわからないが、おそらくずいぶん違った印象の曲になるのではないだろうか。自由気ままに思えるタッチ、伸び縮みするテンポ、ダイナミックな強弱の対比、古典派なのにドラマティックな表現等々独特な表現を取り上げれば枚挙に暇がない。グールドにしか描けない世界が展開する。こんな面白いハイドンを聴いてしまったら他のものはいらなくなってしまいそうな、そんな演奏である。

ハム

SM-SX10のアナログ入力の時から始まって今に至るまでアンプを替えてみても微妙なハム音が残っている。DA-7050Tを導入するきっかけもハム音対策だったのだが残念ながら効果はなかった。直流成分を取り除くフィルターを入れてみてもダメ。電源由来ではないのかもしれない。

今現在の症状はというと、トゥイーターから聞こえるホワイトノイズに混じってウーハーから低い「ブー」という音が聞こえてくる。なぜだかわからないのだが右と左で音の大きさが違う。向かって右側の音の方が大きい。入力機器はすべて右側のラックに収まっているので、これが影響しているのだろうか?

パワーアンプの入力端子にショートピンを挿して電源を入れてもこの「ブー」は聞こえないのでプリアンプから発生していることは間違いなさそう。困ったことにプリアンプを替えても収まらない。なぜ?前回のプレーヤー逆回転事件といい、良く分からないことだらけだ。

電源由来のもう一つの可能性としてアースの問題も考えてみた。このアースについては諸説入り乱れているが、電源を2Pプラグで統一してコンセントからのアースを遮断しても効果なし。逆に3Pで統一したり、タップを使ってすべての機器を同じ電源から取っても変わらない。うーむ。

プリアンプに入力する機器の問題かもと思ってすべての機器を外しても一つ一つ戻しても効果なし。空いている入力端子にショートピンを挿してもダメ。

もしかしたら右側のスピーカーのネットワークの問題だろうか?それを検証するためには左右のスピーカーを入れ替える必要があるが、面倒くさいなあ。

音楽が鳴ってしまえば何も聴こえない。で、毎回、結局は徹底的な原因と対策に至らずにいつも音楽を聴き始めてしまうのだった。

祝 優勝。

石川遼プロが2年ぶりに国内ツアーで優勝した。最終日18番のバーディで追いついてプレーオフは3ホール連続のバーディで決着。久しぶりに強い遼君を見てうれしくなった。

このところ日本に帰ってきてもなかなか優勝争いまで行かなかったが、それでも国内に帰ればこの強さ。いかにアメリカのツアーが手強いかがよくわかる。海外の一流選手と比べると身体的なハンデはいかんともしがたいが、このまま技術と気持ちを磨いて、距離だけでは勝てない飛び切り難しいコースで優勝するような選手になってほしいものだ。

松山選手に先は越されたが、早くアメリカで一勝して、その後は二人で世界中をアッと言わせてくれるといいな。

DENKEN DA-7050T(3) と英国製プレーヤー

インターネットで海外の情報も簡単に取れるようになったので、海外製のオーディオ製品の購入を検討する際、それが母国ではいくらで売られているのかとても気になる。調べてみるとかなりの割合で日本で買うのは割高に思えてしまう。とはいえ、アンプやスピーカーを直輸入するのは輸送時の事故や修理が必要な際の対応を考えると不安が大きい。CDプレーヤー等のデジタル機器はメカの部分がほとんど日本の独壇場だし、海外のハイエンド製品は海外でも高い。結果、今まで機器の直輸入には手を出してこなかったのだが、アナログ製品、特に零細なメーカーが製造するプレーヤーは内外価格差がことのほか大きく、今回、初めて英国製のプレーヤーを英国のショップから直輸入してみた。

家族からも、えー、また、プレーヤー買ったの?という批判を受けたが、甘んじて受け入れることにした。言い訳になるかもしれないが、発注したのは2月なのだ。まさか、こんなに時間がかかるとは思わなかったので、到着するまでにDDX-1000を買ってしまったのである。

このプレーヤーそのものについては追ってブログに記そうと思うのだが、時間がかかった以外に今回思いもしなかった事態が生じたので、今日はそのことを書く。もしかしたら、同じような計画を持っている人がいるかもしれないので参考まで。

僕が買ったプレーヤーはミッチェルエンジニアリングのORBEという製品。ダストカバーやアクリル製の土台のついていないSE(アームレス)である。この製品、日本の価格は現在の為替でイギリスの3倍近い。(ポンドが安かった頃で比較すれば4倍近い。)ここまで安いと直輸入したくなる。ベルトドライブのプレーヤーは構造も単純でモーター以外、壊れるところはない。ということでとある英国ショップのウエブサイトから購入を申し込んだ。

翌日、ショップから「日本に輸出するのは問題ないが、うちから出せるものは230V/50Hzしかない。日本は100V/60Hzだろ?」というメールが来た。きっと西日本の人が過去に問い合わせをしたのだろう。電圧の違いは認識していたので「昇圧トランスを使うので230Vは大丈夫。自分は東日本なので周波数も問題ない。」と返事を送った。それならばということで色とアーム(装着するアームに合わせてアームプレートが一枚無料でついてくる。)について追加で情報を伝えた。これが今年の2月末の出来事である。その時からミッチェルエンジニアリングは受注生産なので2か月かかると言われていたのだが、蓋を開けてみれば4か月もかかった。

せっかく並行輸入するので日本で発売されていない黒/金というカラーを選んだのが時間がかかった理由らしい。途中で2回経過報告の連絡があった。現地から発送される前日に「Good News」というタイトルでメールが来て、それ以降は配送が詳細にトラッキングできる。いやはや便利なものだ。税関通過までは4日。その後の国内配送が不便で曜日は指定できても時間指定ができない。関税と消費税が代引きになるため土曜しか受け取れず、昨日の昼前にとうとう現物が到着した。

組み立てはそれほど難しいわけではないが、英語のマニュアルと非常に簡単なスケッチしかないので一部部品の組み合わせの解読に手間取った。しかし、自分で土台から順番に組み立てるとこのシンプルな製品が実に繊細に設計されていることがわかる。ちなみに3月に製品が届いていたらお手上げだったかもしれない。組み立てには、この間にTD-321MkIIのアームを交換したり、DDX-1000にあれこれアームを取り付けたりした経験が役立った。

さて、すべてを組み上げ、昇圧トランスに変換プラグを経由してコンセントを繋ぐ。電源が入ることを確認し、まずは仮の配線で一枚聞いてみる。試聴にはグールドの「ゴールドベルグ」を選んだ。どんな音がするかワクワクである。

………………………………………………  う~ん。これは。。いや、どうかな。。いや、間違いない。

気持ちを言葉にすればこういう具合だが、一言でいうと回転数が足りない。最初の一音でおかしいと思ったが、そうであってほしくないと願う気持ちが強かったので最終結論を出すまでに5分くらいかかった。しかし、間違いない。はっきり、明らかに遅いのだ。

まず疑ったのは昇圧トランス。ハードオフで仕入れた中古である。中古とはいえ、使用された形跡がなかったが、電圧が足りないのかもしれない。どうするか。テスターもないので確認のしようがない。ORBEは電源が別筐体で電源を入れるとLEDが点灯するのだが、これは問題なく点灯している。不思議な現象である。電源ケースはアクリルとおそらくトランスの組み合わせで、半透明のアクリルごしに半導体基板が見える。ここで回転を制御しているのだろうが、ここがアウトならお手上げだ。どうするか迷ったのだが、イギリスに返送することを考えれば別の昇圧トランスを試す方が安いと思って近くの電器店でもっとも安い海外製品用昇圧トランスを買ってきた。さっそく、差し替えてみる。ダメ。グールドの鮮やかなタッチが台無し。鼻歌も今にも眠りに落ちそうだ。

届いたのがお昼だったので組み立て時はまだ明るかった。だんだん日も落ちてきて部屋が薄暗くなってきたのだが、その時、おかしなことに気が付いた。ORBEには電源とは別に本体のモーターにもオン・オフのスイッチがついている。これがオフの時にも少しだけ点灯しているのだ。ターンテーブルを回すためのゴムを外してプーリーを触ってみると電源オフの状態で逆回転していることがわかった。スイッチをオンにすると正回転するのだが、この逆回転分回転数が合わないのだろうか?はて、どうしたものか。

こうなると電気の知識がないので苦しい。電源を入れなくても通電しているとはなぜだろうか?答えはないのだが、とりあえずいろいろ試してみようと思って次はDA-7050Tから給電されているタップに繋いでみた。DA-7050Tからの給電は入力周波数に関わりなく60Hzである。ショップが50Hzと60Hzを間違えたかもと思って試したのだが、結果は予想外なことにさらに遅くなった。ほとんど止まりそうである。早くなるとか、回らないというのならまだわかるが遅くなるとは。。。

次に疑ったのは変換プラグ。といってもプラグそのものの不具合を疑ったのではない。英国のプラグは、いろいろあるプラグの中でもっともごつくて頑丈そうな三本足。日本でもよく見かける3本足とは違う。200V給電は正相と逆相のバランス給電だから音が良いという話を聞いたことがあるが、この三本足が、単相でアースの来ていない我が家の電源ではうまく機能しないのかと思ったのだ。とはいえ、もしこれが原因ならどうにもなりそうにない。とりあえず三本目の足をうまくアースに落とせないかとおもってコンセントパネルを外してみた。が、やはりコンセントには白と黒のラインしか来ていない。やっぱりダメかと元に戻してもう一度メインの電源を入れてみるとプーリーは逆回転していない。なぜ???と思ったが、この状態で本体のスイッチをオンにすると明らかに回転数が上がっている。理由はともあれ直ってくれれば御の字である。この状態で音のチェックと思ってフォノイコライザー等他の機器に給電しているDA-7050Tの電源を入れたところ、また逆回転が始まった。。。なんと原因はDA-7050Tだったのだ。

なぜそうなるのかは僕にはわからない。しかし、どうやらDA-7050Tの電源を入れると他のコンセントに流れる電気になにがしかの影響があるようだ。僕の部屋には壁に二口コンセントが3つついている。合わせて6口のコンセントがあるのだが、DA-7050Tに電源を供給しているコンセントのもう一つの差込口にORBEを繋ぐとほとんど止まりそうな速度でしか回転しない。別の二口コンセントに繋ぐとゆっくり回転しスイッチを切ると逆回転する。DA-7050Tを外すと何事もなかったように普通に回る。不思議だ。

今まで使った日本製の3つのプレーヤー、それにTD321MkIIでもこんな現象はなかった。4つとも周波数に関係なくモーターが回転するのに対しORBEは電源の周波数に左右されるのでそこが違うのか、それとも230Vで使用されることが前提の製品だからこの問題が生じたのか。皆目わからないので、もしも電気に詳しい方で答えがわかる方がいたら教えてほしい。いずれにしてもDA-7050TとORBEは併用できないのでDA-7050Tを外すことにした。

ちなみに国内正規品のスペックには100V・50Hz/60Hzと記載されているので、見た目はまったく同じでも国内仕様の電源は改造して電源の周波数とモーターの回転を切り離しているようだ。したがってこんな問題は生じないはず。やっぱり正規品は安心である。それでも価格設定は高過ぎると思うが。

ブルックナー交響曲第3番 : ザンデルリング

548.jpg

ザンデルリングのブラームスがすごく良かったので、中古で発見したブルックナーの3番を聴いてみた。ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団との演奏。

最初から重厚で雄大な演奏だ。序奏から主題が提示されるところで早くも魅了される。テンポは基本的に遅いが緩んだところがなく管楽器と弦楽器のバランスも良い。個人的な好みで言うと終楽章の序盤が少しゆっくり過ぎると感じたが、フィナーレは荘厳で聴き終えた時の感動は大。この指揮者の演奏はもっとたくさん聞いてみなくてはと思った。

65年の録音で手元のCDは94年発売と記されている。全体として音は良い。が、ところどころ無音から強奏に入るところで実際の演奏より手前で小さめに音が聞こえる。いわゆるプリエコーだ。アナログマスターの段階で入ったのだろうが、CDでこれだけはっきりとプリエコーが聞こえた経験はあまりない。安易な編集で音が損なわれるよりもずっと良いが神経質な人には興ざめかもしれない。

モーツァルト交響曲第36番「リンツ」 : クーベリック

114968352 (2)

モーツァルト後期6大交響曲集はいろいろな指揮者が録音を残している。僕は長い間、ベームの古い録音で41番ばかり聴いていて、他の曲についてはあまり聞かなかったのだが、割と最近になってぽつぽつと他の曲、他の指揮者の録音を聴きだした。

6大交響曲の他の曲をちゃんと聴いてみるとどの曲もモーツァルトらしい魅力的な旋律に溢れた曲ばかりだが、その中で最近のマイブームは「リンツ」である。第一楽章の主題からして実にチャーミングですっかりお気に入りになっている。

クーベリック/バイエルン放送響の後期交響曲集はこの指揮者の他の多くの録音同様、数多くある録音の中で必ずしも人気の高い演奏ではないかもしれないが、生気に溢れたとても良い演奏だと思う。ソニー最初期のデジタル録音だが、音も良い。

合研LAB フォノイコライザー

オーディオ機器の価格ほど当てにならないものはない。アンプ、スピーカーなどメインとなる機器からケーブル等のアクセサリーまで色々試してみても高額な機器が必ずしも良い音とは限らない。だからといってお手頃価格の製品がみな良いわけでもない。そもそも良い音とは何かの基準も人それぞれというのが実態なのでさらにたちが悪い。ネット上のレビューも雑誌のレビューも参考にはなっても決め手にならない。そもそも機器を設置している環境も千差万別なので、オーディオショップで試聴した結果すら自分の部屋に設置した際の音を保証してくれない。結局のところかなりの部分、賭けみたいなところがある。

アナログを始めて以来、再生の要の一つとなるフォノイコライザーに何を選ぶかがなかなか難しい。フォノイコライザーも価格的にピンからキリまで相当幅広い。基本的には同じ目的機能の製品なのに数千円から数100万円の製品まで並んでいる。一体どれを選んだら良いのかわからない。すでに手元にはLHH-P700とトーレンスのMM008があるのだが、現状、4本のアームが稼働しているのであと2つ分、フォノイコライザーが必要である。できればこの2つの入力を切り替えられるイコライザーならベストと思っていくつかの製品を借りてみた。その中ではAurorasoundのVIDAという製品が僕の好みにぴったりだった。

僕の場合、これは絶対ダメと思ったフォノイコライザーはなく、巷で言われるほど違いがないのかもと思い始めていたのだが、VIDAだけは繋いだ瞬間からはっきり音が違った。ということで、今のところ、エース候補はVIDAなのだが、今回はVIDAの話ではなく、タイトルどおり合研ラボのフォノイコライザーの話である。

VIDAは2つの入力に対応していて実売価格は20万円台の後半。高価である。しかし、これ以上の価格の製品も含めて試聴してみた経験から言うと、この製品の価格対性能比は高かった。一方、合研ラボのフォノイコは三種類あるが、いずれも税込送料込みで19,000円程度である。価格的には10分の1。最近の消費税引上げで少し価格が上がったが、それでも市販されるフォノイコライザーの中では最低価格ラインだ。

ネットの評価は上々、何よりメーカーのサイトからオーディオ製品を製作するのが大好きという気持ちが伝わってくるのが良い。加えて、良いところはフォノイコ製作に当たって音を評価するシステムがごく普通の製品であること。ハイエンドメーカーがハイエンド機器を使って普通の部屋とはかけ離れた音響ルームで極限的なテストを行っているのは決して間違いではないと思うが、そこで開発された製品が音響対策をまったく施していない普通の6畳間で最適化されるとは思えない。
比べると合研ラボさんの評価システムは親近感が湧くものばかり。我が家にはこちらの方が合いそうである。

一週間以内なら音が気に入らないと言う理由でも返品可ということだったので、ウエブサイトからMM専用型とMC専用型の2台を購入した。見た目はウエブサイトにあるとおり。小さく薄く軽い。縦横はCDジャケットよりも小さく、厚みが2.5cm程度。ACアダプターも貧弱で、正直、これで大丈夫かという仕上がり。音質上の配慮か部品の配置の問題かACアダプターの差込口が正面にあるので設置した時の見た目も今一つである。

130905-104204.jpg

しかし、見た目の良さや所有欲をくすぐるデザインといったものは明らかにこの製品の訴求ポイントではないだろう。とにかく音を聴いてみなくては話にならない。まずはShelterのModel7000からMCトランス経由でMM専用機の音を聴いてみる。価格的にはフォノイコライザーだけが格段に安い。が、出てくる音は驚くほど良い。パイヤール室内管弦楽団の演奏する「四季」を聴いてみたが、ヴァイオリンの音はストレスなく伸びて倍音が綺麗。フォノイコライザー固有の色付けがなく、余計なことをしないでそのまま入力を増幅してくれる感じ。

MC専用機は入力インピーダンス切り替えで低インピーダンスのMCカートリッジにも対応しているが、200Ω側にDL-103proを繋いで聴いてみる。製作者の評価機にもDL-103Rがあるのでマッチングも問題なさそう。音の方向はMM専用機と同じでストレスのないすっきりとした音が出てくる。

どちらかと言えばModel 7000にトランスを組み合わせてMM専用機で聴いた音の方が透明感が高く、より自分の好みに合ったが、いずれにも共通して言えるのは疲れず飽きがこない音であること。艶やコクといったものはカートリッジに任せた、という音作りなので、VIDAで聴く時よりもカートリッジごとの癖が感じ取りやすい。お気に入りのカートリッジがあればイコライジングと増幅をこのイコライザーに委ねることで不要な味付けなしで存分に楽しめそうだ。とにかく価格対性能比は抜群である。
プロフィール

ばけぺん

Author:ばけぺん

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
Since 3/28/2013
検索フォーム
リンク