ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」(59年) : バーンスタイン

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50年代終わりに録音されたバーンスタインの「パリのアメリカ人」と「ラプソディ・イン・ブルー」。オケは前者がNYP、後者はコロンビア響。いずれも歴史的名盤として名高い録音。

このLPはヨーロッパのVinyl Passionというブランドが最近、リリースした新譜。Vinyl Passionとは何者かと思って検索してみたのだが確たる情報なし。ジャズだとWax Timeというブランドが昔のLPを重量盤でたくさん再発しているが、同じようなものだと思う。録音後か発売後か、とにかく50年以上経つと著作権がなくなるようなので、今はまだ60年代前半までの録音しか再発の可能性がないが、これからどんどんアナログ時代の名演奏がLPで入手できるようになるはず。厳密に言えば、オリジナル盤とは当然、音が違うと思うが、クラシックのLPでノイズが多い中古は聴く気がしなくなってしまうので、真新しいLPが手に入るのは大歓迎だ。

このアルバムのジャケットには「Original Recording Remastered」と書かれているのだが、実際、オリジナルテープが入手できるのだろうか?オリジナルをリマスタリングしたCDからマスターを取ったのかな?その当たりは良く分からない。実際、聴いてみるとノイズは非常に少なく、鮮明な録音で十二分に満足できる。盤面もきれいだし丁寧な仕事だ。

NYPの常任になったばかりの58年に録音された「パリのアメリカ人」は溌剌としたリズムに加えてちょっと物憂げなメロディの歌わせ方が実に良い。「ラプソディ・イン・ブルー」は以前記事を書いたLAPOとの再録も良い演奏だったが、ずっと若い頃のこの演奏はさらに良い。全体としてテンポがノリノリで速いしバーンスタイン本人のピアノも切れが良い。コロンビア響もバーンスタインの指揮に敏感に応じて素晴らしい演奏である。名盤。
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47研究所 4708

先日、カートリッジのシェルリード線を交換したことを記事にしたが、このリード線に替えて音のピントが合ったというか、音が引き締まって軽快になった上、必要なだけ高音も低音も出ることがわかった。このリード線は線径の細い単線だったのだが、同じような太さの撚り線だけでなく、ちょっと高級なシェルに付属していたもっと太い撚り線のリード線よりもずっと自分好みの音だった。

ずっと前にケーブルについて記事を書いたことがあるが、僕はなるべく色付けをしないケーブルの方が好きだ。世の中にあるどんなケーブルも完全に無色透明とは行かないだろうが、できる限り固有の音はない方が良い。ケーブルの癖が強くてプレーヤーやカートリッジを変えても同じように聞こえる支配力の強いケーブルはできれば避けたいと思っている。

細い径の単線には、それはそれで固有の音の傾向があるのかもしれないが、リード線で好感触だったので、スピーカーケーブルも細い単線に変えてみることにした。その気になって探すと細い単線と言ってもいろいろな種類のケーブルが手に入る。その中で僕が選んだのは47研究所の0.4mm単線。「4708」というのは単線と専用プラグがセットになった自作用のキットだが、キットの内容物それぞれがオヤイデ電機のHPでばら売りされている。今回は単線と専用バナナプラグを購入した。(スピーカーがバナナプラグ非対応なのでアンプ側のみ。)単線が約300円/m。ただし、プラスマイナスで2本必要だ。バナナプラグが1個500円程度なので、全部で5,000円くらいの投資である。

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この宣材写真では実物のイメージがイマイチわかないのだが、0.4mmというのはかなり細い。スピーカーを正面から見るとツィーターのボイスコイルから配線が少し見えるのだがほとんど同じかそれよりも少し細いくらい。単線を薄いブルーのポリエチレンで包んだ構造。ものすごく軽い。

芯線が細いので絶縁体を剥くにはケーブルストリッパーがあった方がいい。手持ちのストリッパーは最小径が0.5mmだがそれでも芯線を傷つけることなく上手く剥けた。ただし、あまり力を入れて一気に握ると芯線もろとも折れてしまう。

専用バナナプラグは単純な構造だが良く考えられていて、簡単かつ確実にケーブルを接続することができる。バナナプラグを使えないスピーカー側はとりあえず裸のまま接続した。ターミナルのネジに比べて芯線があまりに頼りなくてちょっと不安だが導通に問題はないだろう。

考えてみるとスピーカーケーブルを交換するのは久しぶりだ。ちなみに今まで使っていたケーブルは今回の買物に比べれば数倍高価なケーブルである。早速、聴いてみる。違いを見極めるために集中するまでもない。新しいケーブルの方がはるかに軽やかで切れの良い音がする。高音域の解像感と音圧が上がったせいか、全体に少し高音よりにシフトしたが、今までのケーブルもそれほど太いものではなかったせいか、比較して低音域が物足りないようなこともない。とにかくストレスのないサラッとした音で非常に好印象。僕にはこれで十分だ。

こうなると他のケーブルも根こそぎこのケーブルに置き換えたらどうなるか気になるのだが。。。まあ、しばらくは自制しよう。

ブルックナー交響曲第8番 : クナッパーツブッシュ

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クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィルの演奏によるブルックナーの交響曲第8番。クナッパーツブッシュの8番はほかにウィーンフィルとのライブや、この演奏とほぼ同時期にミュンヘン・フィルとライブ録音されたもの(いずれもモノ)もある。どちらかと言うと、ライブでこそ真価を発揮するというイメージの指揮者なのでそれらの演奏にも興味は湧くが、まだ聴いたことがない。

クナッパーツブッシュの演奏記録は数が多くないので、何はともあれこの演奏がステレオ録音で残ったことは幸いだと思う。良く言われるようにエコーがほとんどない非常にデッドな録音で、最新録音のクオリティとは比べるべくもないが、演奏を知るにはまったく問題ない。

ライブでこそ真価を発揮すると書いたが、この人の場合、セッション録音も丁寧に作りこんでいく感じは皆無なので、ライブ録音との違いは聴衆がいるかどうかの違いだけと思わなくもない。技術的にははっきり言って「へたくそ」である。ミュンヘン・フィルの力量の問題ではなく、おそらく指揮者の指揮法に問題があるんだろう。縦のラインは始終そこここでずれている。しかも録音がデッドなのでずれを隠しようがない。素人がカラオケをエコーゼロで歌っているのを聴いているようなピッチと音程の不安定さを感じる。音量一つとっても練習で合わせていないせいか、オケが弾きながら指揮者の指示を受けて微調整している感じがする。結果として、おそらく楽譜の指示と関わりなくクレッシェンドしたりデクレッシェンドしたり(笑)。

だからといってこの演奏がダメかと言うとそうでもない。僕にとって8番はなかなか難しい曲で、最後まで聴きとおすことが特に最近は少ないのだが、これは最後まで聴けた。さりとて、この演奏のどこが良いかと言うと説明が難しい。人によってはこの演奏を完全否定するのもなんとなくわかる気がする。

この演奏では後半の二つの楽章がより良い。特に終楽章はそれまでどうも立ち位置がはっきりしなかった金管が全開になって音響的にも気持ちが良い音がする。

JAZZ SAMBA : Stan Getz

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JAZZ SAMBAは1962年に録音されたスタン・ゲッツとチャーリー・バードによるアルバム。ジャズミュージシャンによる初めてのボサノヴァアルバムで、ジャズ・サンバという領域を切り拓いた画期的なアルバムらしい。

そういう音楽史的な話はよくわからないのだが、肩の力の抜けたこのアルバムは仕事で疲れた後に帰宅してのんびり聴くのには最高だ。もちろん、南米のリゾートできれいな海でも見ながら聴ければ言うことなしなのだが、日本の片田舎の8畳間でビールを飲みながら聴くのも悪くない。録音はワシントンD.Cで行われたらしいので、曲に似つかわしくない点では演奏者側もどっこいどっこいだ。軽やかなリズムにちょっと哀愁を帯びたメロディが良い感じ。

今日はStanton 881sにJICOの互換針をつけて聴いている。本来、4ch再生用のシバタ針だ。同時に比較できないので純正との違いうんぬんを語るのは難しいのだが、やっぱり新品の針の方が音は良いと思う。

ラヴェル「ダフニスとクロエ」全曲 : マゼール

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ロリン・マゼール/クリーブランド管弦楽団の演奏による「ダフニスとクロエ」全曲。マゼールはNYP/VPOと組曲を残しているが、全曲版はおそらくこれが唯一の録音だと思う。

マゼールのラヴェルと言うとフランス国立管弦楽団とのアルバム以外聞いたことがなく、中古ショップで発見するまでこの演奏の存在も知らなかった。

僕の中で「ダフニスとクロエ」のスタンダードはブーレーズ/NYPの演奏だが、それと比較してもこの演奏は極めて優れたものだと思う。ブーレーズ盤は終始、薄いヴェール一枚透かして情景を描写したような神秘的なムードが漂うが、このマゼール盤はヴェールを剥ぎ取ったような、鮮明で生々しい演奏である。

一見、オーソドックス、しかし、マゼールらしくそこここに細部のデフォルメや細かい表情付けがあって聴き手を飽きさせない。クリーブランド管の演奏は実に巧く、発音がはっきりと聴きとれる合唱も良い。これには各楽器、合唱の音を鮮明に捉えた録音も大きく貢献している。お薦めの演奏だ。

ブルックナー交響曲第3番 : カラヤン

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「名曲名盤500」を見て以来、カラヤンの演奏するブルックナーのレコードがないか探していたところ、ディスクユニオンに3番があるのを発見。早速、購入してみた。

家に帰ってレコ芸を見るとこの演奏はヴァント、ベームに次いで3位に入っている。ジャケットをご覧のとおりデジタル録音である。カラヤンのブルックナー全集は70年代のものかと思っていたら、1番から3番は80年以降、デジタル時代に入ってからの録音だった。4番以降の主要曲が75年頃の録音であることを考えるとかなりの時間差である。おそらくこれらの曲は全集を完成させるためにスコアの勉強をしてから録音したのだろう。

仮にそうだとすれば日頃コンサートで頻繁に演奏する曲目ではないということになる。しかし、メンデルスゾーンの全集同様、録音に残すとなればカラヤン/BPOに手抜きはない。実に細部まで磨き上げられた素晴らしい演奏だった。

とにかくBPOの合奏能力が抜群に高い。カラヤンがそのオケのポテンシャルを一杯まで引き出している。ダイナミックレンジが大きいのでボリュームの位置に気をつけないと強奏時に大変なことになる。金管は華やかだし、弦は艶やかで美しいが、カラヤンの解釈は奇を衒ったところがまったくない実にオーソドックスなものだと思う。これは名盤だ。

ショパン ピアノ協奏曲第1番 : アルゲリッチ/アバド

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若き日のアバドとアルゲリッチによるショパンとリストそれぞれのピアノ協奏曲第1番の組み合わせと言うすごく魅力的なアルバム。最近、移転したディスクユニオンの神保町店で中古LPを発見した。

68年の録音なのでアルゲリッチ26歳、アバド35歳。ショパンコンクール優勝の3年後になる。見開き形式になったジャケットの内側にアルゲリッチ、アバドの写真が載っているが、26歳のアルゲリッチはとっても可愛い。

演奏はかなり溌剌と速めに始まる。聴き慣れた伴奏に比べ、ロマンティックな感じを抑えかっちりとした演奏と感じたのだが、ジャケットの解説では「アバドの指揮する管弦楽の提示部は、ややうたいすぎる傾向を見せる」と指摘されている。ええ?これで「うたいすぎ」?という感じだ。どうやら、この後の何十年かショパンはどんどん甘口になっていったようだ。

アルゲリッチのピアノは詩的で情熱的で天才の煌きで溢れている。しかも技術的には完璧。それに加えてアバドとロンドン響が万全のサポート。いまだに名盤の筆頭に立つこの演奏が、こんなに若い二人の競演で実現しているというのが凄い。今の若手コンビからもこういう名演が生まれないものだろうか。

逆転サヨナラホームラン

開会式直後に殊勲の勝利を挙げた春日部共栄高校は二回戦で散ってしまったが、今日は以前短期間だけ住んでいたことのある新潟の代表校、日本文理高校の試合があった。

僕が住んでいた頃の新潟代表の力は率直に言って全国レベルとは言えない状況で、特に夏の甲子園で上位進出することはまずなかったのだが、最近はめっきり力をつけてきている。それを全国に印象付けたのが準優勝した2009年の日本文理高校だった。今や広島の4番になった堂林投手率いる中京大中京高に敗れはしたものの、6点差で迎えた9回にツーアウトランナーなしから5点取った試合は今でも鮮明に記憶に残っている。

弱かった頃の北信越勢はどうしても打力で見劣りしたのだが、あの年以来、日本文理高校はむしろ打のチームという印象に変わった。それに勝負強い。あきらめないというか、負けていてもひょっとしたら逆転するかも、という気持ちを持てる。2009年以降はなかなか勝てないでいたのだが、今年はプロも注目するエース投手を擁し、久々に期待できるチームになった。

今年は北信越5校がすべて初戦を突破するという快挙の中、今日はお隣富山県代表との3回戦である。仕事中でテレビ観戦はできなかったのだが、デスクにいても会議中もなんとなく気になる。前半はリードしていたのだが、しばらくしてPCを覗いてみると逆転されていた。相手の富山商のピッチャーも良い。これはもうダメかな、と気落ちしながら仕事に戻った。

またしばらくしてPCを覗くとヤフーのトピックスに「逆転サヨナラホームラン」とあるではないか!なんと、やっぱりやってくれた。会社には申し訳ないが、もう仕事どころではなくなって、ハイライト動画だのインタビュー記事だのをチェックして悦に入っていた。母校でもないのに、どうしてこんなにうれしく思えるのか自分でも不思議である。

日本文理高校のおかげで今日の僕はとてもハッピーな気分になれたのだが、実は一番感動したのは逆転ホームランよりも敗れた富山商業のエースのコメントだった。後で知ったのだが、富山商は逆転した回を勝負とみてエースに代打を送っていた。その結果、逆転が実現したのだが、その後は控え投手に頼らざるを得ない。そして9回裏にその投手がサヨナラホームランを被弾した。

ハイライト動画も見たが、その瞬間、マウンドにいた岩城投手は文字通り茫然としていた。その瞬間から彼の心にはどんなことが去来しただろうか。その彼に対するエースのコメントが素晴らしい。「岩城で打たれたのならば仕方ない。」

やっぱり高校野球って良いなあ。

シェルリード線を交換してみた。

プレーヤー、フォノイコライザー、トーンアーム、カートリッジ、スタビライザー、ターンテーブルシート、カートリッジシェルと一通りあれやこれや試してみるとそのうちシェルリード線を替えたくなる。

というのは、オーディオ好きがアナログを始めるとみな共通して体験するのではないだろうか?順番と密度と速度は人それぞれだとしてもだ。

だいたい、このケーブルというのは質(たち)が悪い。まず、入口のハードルが比較的低いので、「このくらいなら良いか」という感じで始めるのだが、気を付けないとたちまち泥沼に落ちる。しかし、CDとアンプの間やアンプ間、それにスピーカーケーブルの場合、高級品は価格があっという間に天文学的数字になるので本当に泥沼に落ちる人の数は知れていると思う。何十万とするケーブルを中古で結構目撃するが、ああいうケーブルは特定少数の人達が何度も買い換えているに違いない、と思っている。

それに比べるとシェルリード線はある意味もっと質が悪い。たかだか数センチメートルのケーブルなので4本必要と言っても普通のオーディオケーブルよりもはるかに安いのだ。ボリュームゾーンは数百円から数千円。たまにたかだかリード線なのに数万円するものもあるが、これは詐欺に違いないと最初から決めてかかることにした。それだけの投資をするならカートリッジを追加する方が楽しい。

前置きが長くなってしまったが、最近、リード線をオークションで購入してみた。オークションでは自作のリード線がたくさん売られている。その中でもかなりの長期間、継続的に販売している方のものを選んで買った。価格はちょっとしたランチ代くらいだ。文章から音をイメージするのは難しいが、なるべく素直な音がしそうなものを選んだ。

興味がない方にはわからないかもしれないが、このリード線を付け替えたり、カートリッジをシェルに付けたりという作業自体がとても楽しいのである。最初はピンセット一本ですべての作業をしていたので難行苦行だったのだが、ラジオペンチと千枚通しを揃えてからは作業が圧倒的に楽になった。こうなるとこの細かい作業が楽しくて仕方がない。

購入したリード線は古い単線をベースにしたもので、カートリッジやシェルに付属してくる撚り線に比べるとかなり硬い。イメージ的には芯のある硬い音が出そうだが、実際に出てくる音はとてもしなやかで抜けが良い。特定の音域を強調するような癖もなくて聞いてて心地良い。カートリッジから取り出される最も繊細な電気信号が最初に通るケーブルだからか、たとえばCDプレーヤーからアンプをつなぐケーブルを取り換えた時と比べて交換前後の差は結構大きい。実感できる違いがある。では、いつもこれくらい違いが出るかと言うとそうとも言い切れない。中古で購入したカートリッジに付いていたリード線と別のシェルに付属のリード線を交換したりもしたのだが、正直、違いがわからなかった。線材や撚り方によって差があったりなかったりするのかもしれない。

目下一番の関心はSeries IVのリード線。ユニバーサルシェルと違って、何度も交換するのはしんどい。長い間飽きが来ないリード線を探そうと思う。

ブラームス ヴァイオリン協奏曲 : スターン

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「名曲名盤500」ではハイフェッツ/ライナー盤が1位、オイストラフがクレンペラー/セルと組んだ二枚が2位と3位。一昔前は順序が逆だったような気もするが、まあ、いずれにしても歴史的名盤が上位独占である。確かにそれぞれすごく良い演奏だから特に文句もない。

で、スターン/メータ盤だが残念ながら0点。う~ん、0点か。それこそ名曲なので無数に録音もあるから仕方ないが、この演奏はめちゃめちゃ良いと思うんだけどなあ。

スターンのヴァイオリンはいつもの通り、恰幅が良くて丸くて温かい。長い間かけて熟成されたウィスキーみたいに艶とコクがある。もう晩年なのでソロとか技術的にはどうなのかな?と思う瞬間もあるが、しかし、全体として実に聞かせ上手で達者な演奏である。

スターン/メータ/NYPの奏でるブラームスはゴージャズで明るいので、渋い枯れたブラームスが好きなら期待外れ間違いなし。僕はこの開放的な演奏が大好きだ。

録音は78年。終始、スターンのヴァイオリンの響きを中心に捉えた聴きやすい録音だ。

「名曲名盤500」その2

帰省からUターンして近くの本屋に立ち寄ったところ、レコード芸術の8月号がまだ残っていた。「名曲名盤500」の2回目が掲載されているので探していたのだが、実家の近くは全滅だった。

今回はベルリオーズの残りからドヴォルザークまでとなっていて、メジャーな作曲家としてはブラームス、ブルックナー、ショパン、ドビュッシーが含まれている。特に交響曲については「その1」同様、1位に選ばれた演奏はあんまり代り映えしない。複数の評論家の投票で1位に選出されるためには多数の評論家の票が必要になるので、どうしても著名な演奏が選ばれてしまうのだろう。

ブルックナーの交響曲では「石狩国音楽記」のsankichi1689さんも記事にされていたが、カラヤンの2番が1位に選出されていてオッと思った。カラヤンは2/7/8番で1位に選ばれている。加えてアバドの1番が選ばれているだけで後は全部ヴァントだ。(7番はカラヤンとヴァントが同点。)ヴァントのブルックナーは良いとは思うが、そこまでか?と思わなくもない。6番なんてきちんと聴いて選んでいるのだろうか。

ブルックナーで注目したのはアーノンクールの演奏が何気に高評価であったところ。5番と9番が2位。CDで聞いてこの二つの演奏はいずれもすごく良いと思ったので、この結果には納得。

アーノンクールは最近も活発に録音しているが、もっともっと頑張ってほしい。マゼールが亡くなったばかりだがレコ芸の表紙には「追悼 ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス」とあって、この日本人には親しみのある指揮者が亡くなったことを知った。80歳だと言う。追悼記事によれば読売日響を169回も振ったらしい。クラシックを聴き始めた頃は協奏曲の伴奏指揮者としてよく名前を目にした。上原彩子さんがチャイコフスキーコンクール優勝後しばらくして録音したピアノ協奏曲の伴奏も確か彼だったと思う。合掌。

そしてブリュッヘン。僕はごく最近になってブリュッヘンの演奏を聴いたに過ぎないが、モーツァルトの交響曲をあれだけ巨大なスケールで指揮できる人はほかにいないと思った。幸い、コンスタントに録音を残してくれているので、ブリュッヘンについてはこれからいろいろ聴いたみたいと思う。

ブリュッヘンは享年79歳。マゼールが83歳。アバドも80歳。

このくらいの年齢というと、活躍中の指揮者ではブーレーズが89歳!ブロムシュテットが87歳、アーノンクールが85歳、メータと小澤征爾さんが78歳。そういえば最近、ブーレーズはどうしているのだろう。いつまでもというのは不可能でも、ここに挙げた指揮者の皆さんにはできる限り長く活躍していただきたいなあ。

シベリウス「4つの伝説曲」 : グローヴズ

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レコードのジャケットには「4つの伝説曲」とあるが、どうやら最近は「レンミンカイネン組曲」と呼ばれることの方が多いみたいだ。いずれにしても4つある交響詩のうちの2曲目「トゥオネラの白鳥」だけがやたらに有名なので4曲揃って演奏される機会はあまり多くないと思う。僕自身はアナログ、デジタル通じて、録音メディアを買うのはこれが初めて。このLPもジャケ買いした。

初演は1896年に行われているが、現行版で出版されたのは1954年だそうだ。そうするとシベリウスの死後、誰かが改訂したのかと思ったのだが、調べたらなんとシベリウスが亡くなったのは1957年だった。失礼ながらもっとはるか昔に亡くなったものと思っていた。小学校か中学校で「フィンランディア」を音楽の授業で聞いた記憶があるが、そうするとあれは作曲者の死後20年くらいしか経っていなかったのか。

演奏しているのはサー・チャールズ・グローヴズ指揮のロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団。74年の録音で指揮者は75年に初来日している。もしかすると来日記念盤だったのかもしれない。

シベリウスらしく全体通じて曇り空、霧か霞がかかっているような雰囲気の曲にイギリスの指揮者とオーケストラのこれまたくすんだ音が良く合っている。オーケストラの妙技を聞かせるような曲でもないし、グローヴズの指揮も穏やかで丁寧。色鮮やかなジャケットから想像する演奏とはちょっと違うが、夜、静かにレコード鑑賞するにはなかなか良かった。

個々の楽器の分離よりもオーケストラとホールの一体感を優先したような録音。これはこれで悪くないと思う。

エクストリーム・スーパームーン

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「音楽いろいろ鑑賞日記」のakifuyu102さんの記事で教えてもらったエクストリーム・スーパームーン。月が地球に最も近い位置で満月を迎えることをこう呼ぶそうで、18年に一度のチャンスだということです。

残念ながら帰省中で手元にはiPhoneしかなく、ひどい写真しか撮れないが一応、記録ということでお許しを。

実家の空も晴れているとは言い難いが、霞んだ雲も実物はなかなかです。

甲子園開幕

あれ、そろそろ夏の甲子園じゃなかったっけ?と思っていたら、今日が開会式だった。どうもなかなか始まらないなと思っていたら悪天候で二日順延だったのか。開幕が二日遅れるのは史上初らしい。

なにせ開幕が遅れているのも知らないくらいなので、甲子園ファンとは言い難いのだが、それでも不思議なものでこれまで生活の基盤を置いたことのあるところの代表には頑張ってもらいたいと思う。今年は開会式直後に埼玉代表である春日部共栄高校が春の覇者龍谷大平安高校と対戦した。

今年の埼玉大会は去年の選抜大会を制した浦和学院を筆頭に本命と言われた高校が次々と敗れた波乱の大会だった。春日部共栄高校は強豪の一つだが、戦前に優勝を予想した人は少なかったようだ。しかも相手は春の王者。開会式直後の緊張もあって勝つのは難しかろうと思っていたのだが、なんと完勝した。おめでとうございます!

勝利監督インタビューを聞いて誠実なコメントが印象に残った。興味を持ってインターネットの記事を読んでいるとこんな記事を発見した。以下は埼玉新聞のサイトからの引用である。

 抽選会が終了し、取材エリアに現れた本多監督と主将の小林は、ともに頭を抱えていた。
 先に引いて待っていた選抜王者・龍谷大平安の横に吸い寄せられるように飛び込み、しかも開幕戦。本多監督は小林に「おまえ、やってくれたな。びっくりしたわ。イメージが湧いてこないし調整の仕方も分からん」。
 小林も「優勝候補と当たらないようにと思っていたのが、良くなかったのかも」と苦笑いした。
 確かに前回出場した2005年も初戦で中田翔(現日本ハム)、平田(現中日)を擁した大阪桐蔭と当たり、そして9年ぶりにたどり着いた聖地で、またもや紛れもない強豪と激突。
 だが裏を返せば、開会式直後の大観衆の中で、相手は春のチャンピオン。“春日部共栄”の名前と力を全国に知らしめるのに、これほど整った舞台はない。
 エース金子は「日本一を倒せれば、論理的に考えて日本一。チームに自信が付くし、波にも乗れる」と悲観する様子もなくむしろ笑顔。4番原田も「全国で一番に試合ができる喜びをかみしめながらはじけたい」。
 締めに攻守の要・3番捕手の守屋が「メッチャ楽しみです。共栄はあまり注目されてない。これ以上の相手はいないので、一発かまさないと」と強気のコメントに決意を込めた。


なんというか監督と主将の良い関係が透けて見えるような記事だ。エースの「日本一を倒せれば、論理的に考えて日本一」というコメントが良い。監督さんは創部以来35年間ずっと監督をされているらしい。他の記事では笑顔が大事だということを強調していた。良い話だと思う。

これでこのまま勝ち続けられるほど甲子園は易しくないだろうが、この後の試合もぜひ頑張って悔いのない戦いをしてほしいなと思う。

ようやく

実家に帰ってきたら庭に新しい車庫を建てている真っ最中だった。今年の冬、二度目の大雪で屋根が完全につぶれてしまった車庫だが、実家周辺の様々な建築物が同じような被害を受けたために人出不足、建材不足で半年経ってようやく工事になったらしい。

3月には立て直す車庫の見積もりが終わっていたのだが、半壊状態の車庫の取り壊しが5月、さらに3か月経って先週から新しい車庫の設置になった。家庭用の車庫なのでそれぞれの作業はそれほど大げさなものではなく、取り壊しは一日、建てるのにも二日しかかからない。それぞれの作業にあたる人たちも片手くらいの人数である。

そもそも建設業に従事する人の人数が減っているうえ、東北の震災復興でいまだに相当の建設需要があるようだし、当然、大きなお金の落ちる大都市の工事が優先されるだろうから、田舎の家までなかなか人出が回らないようだ。

お盆前の猛暑、しかも折悪く天候不順が重なったが、昨日も今日も職人さん達はわき目も振らず黙々と作業を続けている。何人かで作業をしていても雑談の一つもない。何かに憑かれたように無心で早朝から夕方まで作業を続けている。母親が3時のおやつを提供するときだけ手を休めるが、その間も無口なまま。ただ、喉が渇くだけでなく、猛烈にお腹が空くようでとにかくたくさん食べる。さもありなんだ。どんどん飲んで食べてください。

工事全体を請け負った会社の現場監督に聞くともう何年もしないうちにこの当たりではこうした工事もままならなくなるだろうという話だった。外国人労働者を使ったこともあったそうだが、プロフェッショナルとしての意識を共有するのが難しかったらしい。作業の様子を眺めているとそれも納得である。

物の輸入はできても職人さん達の輸入はできない。今の子供が大人になる頃、日本はどうなっているのだろうか。

夏休み

今日から待望の夏休み!さー、ゴルフだ!

って、今週の初めからすごく楽しみにしていたのだが、蓋を開けてみたら予想外の雨。まあ、もちろん、雨にも負けずラウンドしたのですが。しかも、そのせいもあってか、某大手ゴルフコースチェーン得意の詰め込みすぎか、毎ホール順番待ち。朝遅めのスタートだったこともあって、終わったらすっかり夕方になってしまった。

それでも久しぶりのゴルフは良い気晴らしになった。やっぱりたまには身体を動かさないと。

SHURE Audio Obstacle Course

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オークションでSHUREが販売したオーディオチェック用レコードを入手した。その名も「Audio Obstacle Course」、オーディオ障害物競争である。

SHUREが誇るV15シリーズカートリッジのパフォーマンスを自宅のオーディオで測定するために作製されたレコードでV15シリーズがVersion Upするにつれてテスト用レコードも何種類か発売されている。途中で欠番があるかもしれないが、このレコードの初期バージョンがTR101、僕が入手したのはジャケットのとおりtype V登場時のものでTR117となっている。

ネット上の情報で見るとTR101は楽器の音を使ってtrackabilityのテストを行うようだが、TR117は様々なテストトーンを合成して人工的に過酷な音溝を作り出している。音楽を聴きながら楽しくテストという感じではない。

両面とも45回転で再生する。A面は左右、位相に加え、インサイドフォースキャンセラーの効き方のチェックができる。B面は本命のカートリッジのTrackabilityのチェックに加えてカートリッジとアームの共振周波数の測定ができるようになっている。

テストは英語のナレーションとともに進む。声の主はSHUREの開発者らしい。左右も位相も問題なく進んだが、インサイドフォースキャンセラーのチェックでまずつまづいた。ほぼすべてのアーム/カートリッジの組合せで加重が足りなかった。レコードのこの部分、針圧とインサイドフォースキャンセラーの組合せをきちんと調整しないとひどい音でしか鳴らない。真剣に調整するのはなかなか大変そうだが、後で時間をかけて調整してみよう。

テストそのものはB面の方が面白い。まずはTrackability。初めにmiss track時の音が収録され、miss trackするとどういう音が鳴るか教えてくれる。この音を記憶したうえで、録音レベルが1から6まであるテストパターンを再生するのだが、Series IIIとV15 type4の組合せがレベル4まできちんと再生できただけで、他のカートリッジは惨敗。さすがSHURE主催の障害物競争だけのことはある(笑)。コンプライアンス値の低いMCカートリッジはレベル3か4で軒並みmiss trackが始まる。聴感上の性能と機械としての性能は必ずしも一致しない。

個人的にこのLP全体の白眉は共振周波数のテスト。共振周波数は8Hz以上、できれば10Hzから12Hzが望ましいということだが、測定してみるとSeries IIIとType IVを除く組合せはすべて7Hzから9Hzまでの間で共振が起きた。総じて少し低めなのでシェルを取り換えるとかカートリッジとの組合せを考えた方がいいかもしれない。

このテストは実効質量が公表されていないアームとコンプライアンスの公表されていないカートリッジを使用する場合にはすごく便利。一方が公表されていれば、他方を推定することもできる。組合せたカートリッジの質量と公表されているコンプライアンス値から求めてみるとWE308の実効質量は14g~15gだった。オーディオテクニカとデノンの公表コンプライアンスは100Hzを基準にしているせいか実測から推定すると実際のコンプライアンスと相当違う。アーム側で公表されている実効質量から計算すると実測でAT50ANVが20前後、DL103PROが12前後だった。

共振というのは概念として理解していても実感したことがなかったのだが、このLPで測定すると一目瞭然。耳で聞いてもわかるのだが、その前に視覚的にはっきりと実感できる。WE308もFR64sもSeries IVも共振周波数のポイントでカートリッジがびっくりするくらいはっきりと飛び跳ねる。これでは確かにレコードの反りや床からの共振によって生じる周波数(~8Hzくらいらしい。)がプレーヤーに乗ると再生に影響するだろう。

テストLPのナレーションによれば「良くデザインされたシステムでは振動が押さえられる。」ということだ。確かにRigid FloatとSeries III/Type IVの組合せは共振時にもカートリッジが跳ねることはなかった。Rigid Floatは流体で、Seiries IIIに付けたType IVはダイナミックスタビライザーが振動を吸収しているようだ。試しにスタビライザーを上げて見ると13HzでType IVも激しく振動した。この結果から、このブラシの効果が見た目に反して絶大であること、他方、Type IVのカタログデータと僕の持っている実物でコンプライアンスにかなりの差があることがわかる。ダンパーが本来の柔らかさでないのかもしれない。SHURE製なのにTrackability試験に落ちたのもこれが原因かな。

上にも書いたとおり、このレコードのテスト結果と聴感上の良し悪しは必ずしも一致しない。とはいえ、これはなかなか楽しい遊べるレコードである。

Technics EPC205C-IIX

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テクニクスという名前もずいぶん懐かしくなってしまった。個人的にはパナソニックというブランド名よりもテクニクスあるいはナショナルという名前の方がずっと親近感が湧くのだが。

昔、レコードを聴いていた頃には全然知らなかったのだが、テクニクスはアナログターンテーブルに一大革命を起こしたメーカーだ。時代がデジタルに移行した後もずいぶん最近までDJ御用達のターンテーブルを販売し続けていた。今でも内外問わずテクニクスのターンテーブルを使用している人は多いと思う。特に海外ではSL-1200シリーズにしっかりとしたトーンアームを移植して聴いている人も多いみたいでウエブサイトではそうした自慢の愛機の写真をよく見かける。

そんなテクニクスは全盛期、プレーヤーだけでなくたくさんカートリッジも販売していて今でも中古で入手できる。その中でも一番ポピュラーと思われるEPC205シリーズを購入した。EPC205Cシリーズはカートリッジ本体と針の組合せでハイインピーダンス・ローインピーダンス、標準インピーダンスといろいろなバリエーションがある。なにせ70年代後半という古いカートリッジなのではっきり自信もないが、僕が購入したのはハイインピーダンス・高出力型のカートリッジ。

写真をご覧のとおり、海外製の軽針圧カートリッジと比較して実にどっしりとしたデザインだ。ぼってりとしていると言った方がいいか。実際の質量はShureのV15シリーズとほぼ同じだが、見た目はかなり大柄だ。

見た感じ、鈍重な音がしそうなのだが、このカートリッジは実にバランスの取れた良い音がする。色付けが少なく解像感も良い感じ。音の抜けが良く低音もたっぷり出るし、高音域にも強調感がないので快適に長時間、音楽を聴くことができる。この安心感はたとえて言えばDL103みたいだ。ただし、こっちの方が音色はだいぶ明るい。

とっても安かったので手に入れてみたが、思わぬ収穫だった。

シベリウス交響曲第1番 : マゼール

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プレーヤー到着前に購入した「デッカ・サウンド アナログ・イヤーズ」6枚組の中にマゼールのシベリウス交響曲第1番の演奏が含まれている。この6枚組セット、厚手の重量盤LPなのだが作りが実に雑。この演奏の場合、僕のLPはスピンドルの穴が円盤の中央にきちんとない。つまり偏心している。しかもその上にレーベルを貼っているので穴の直径が小さく、スピンドル軸になかなかきちんと嵌まらないのだ。。。ひどいクオリティコントロールである。

モノとしては残念だが、マゼール/ウィーンフィルの演奏は飛び切り良い。交響曲第1番はシベリウスの後期の交響曲と比較して音楽の深みや革新性には乏しいかもしれないが、メロディの親しみやすさや抒情的な美しさがそれを補って余りあると思う。僕はとてもこの曲が好きだ。

シベリウスの交響曲の名演というとベルグルンドに代表される母国、あるいは他の北欧の指揮者によるものが定評あるようだが、僕はどちらかと言うとそうじゃない指揮者による演奏の方が好きなものが多い。オーマンディ、コリン・デイヴィス、カラヤン、プレヴィン等々による演奏はみな好きなのだが、その中でもこのマゼール/ウィーンフィルによる第1番はリズミカルで若々しいだけでなく、終楽章なんてウィーンフィルをたっぷり歌わせていて実にロマンティックで素敵な演奏だと思う。そしてこれがわずか34歳の指揮者による演奏ということにまた驚かされてしまう。

マゼール/ウィーンフィルによるチャイコフスキーとシベリウスの交響曲全集をまとめたCDが最近発売されているのだが、買ってみようかなあ。

ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」: クリップス

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僕がクラシックを聴き始めた頃すでにヨーゼフ・クリップスは亡くなってしばらく経っていたので、名前は聞いたことがあるものの、これまでこの指揮者の演奏は一度も聴いたことがなかった。そもそもどういうキャリアの人か知らないので調べてみると戦前、31歳でウィーン国立歌劇場の常任指揮者、33歳でウィーン国立音楽大学の教授という凄い経歴。ナチスに協力しなかったのでオーストリアを追放されたが、逆にそのおかげで戦後の復帰も早かったらしい。この「新世界より」が録音された61年にはBPOはBPOでもアメリカのバッファロー・フィルの音楽監督を務めている。最晩年はウィーン交響楽団の首席指揮者。ウィーンフィルとも縁が深い。とても重要な指揮者であることがわかった。

「新世界より」はチューリヒ・トーンハレ管弦楽団との演奏。録音年代を考えても音は良くない。オーケストラホールの音響にも問題がありそうだが、特に低音楽器の抜けが悪く、ティンパニの音はかなりこもり気味。比較して中高音はかなりマシで特に木管の音が非常に目立つ。木管を強調するのはクリップスの個性のようだ。

最新のCDを聴いているのと比較すると実に貧相な音なのだが、にもかかわらず、聴き手をがっちりと惹きつける演奏である。全楽章通じてスマートで都会的な演奏だが、そこここでテンポの上げ下げがあり、ちょっとライブ演奏のような高揚感を感じる。有名な第二楽章はしっとりとして心に染みる演奏だ。思いもかけず良い演奏を聴くことができた。

バッハ「管弦楽組曲」 : マゼール

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先日、購入したマゼールの「管弦楽組曲」を聴いた。64年にマゼールは亡くなったフリッチャイの後任としてベルリン放送交響楽団の首席指揮者に就任している。マゼール、34歳の時になるが、この録音はその翌年に行われている。

ベルリン放送響とは「ブランデンブルク協奏曲」も録音しているが、それ以外でマゼールとバッハというのはあまり結びつかない。CDの解説を読むとこの頃のマゼールは奨学金をもらってイタリアでバロック音楽の研究をしていたらしい。その研究の成果としてこれら二つのバッハの管弦楽曲が録音されたのかもしれない。

二枚組のCDのうち、まずは一枚目、組曲の一番と二番を聴いたが、先日のリヒターの楷書的な演奏と比較して実にしなやかで表情豊かなバッハである。今となっては珍しくなってしまった感のあるフルオーケストラによる演奏なので、響きも大きく豊かでとても良い。バロック音楽であっても管弦楽曲は古楽器よりもモダンな楽器の方が良い。古楽器の鋭くて細い響きはどうしてもあんまり好きになれない。

それぞれの序曲はゆったりとしたテンポ。どの曲をとっても若々しいマゼールの天才がキラキラ光っている。これは実に良い演奏だ。特にマゼールのファンではない人でも十二分に満足できると思う。

SAEC WE308

今年の初めまで、SAECといえば中堅ケーブルメーカーという認識しかなかった。同社のSupraシリーズは確か以前に使用したことがある。もちろん今は、SAECといえば僕の中ではトーンアームの会社である。すっかり時代が逆転しているが。

WE308はSAEC, Sound of Audio Engineering、オーディオエンジニアリング株式会社が第一号として世に放ったトーンアームである。1971年発売、会社創立が1970年なので同社の初めての製品なのかもしれない。ちなみにこの後、改良型のWE308Nが登場しているが、この二つの製品の間の違いが調べてもわからなかった。僕が持っているアームが初代なのかNなのかも実はわからない。アームリフターにはWE308としか書いていないので初代だと思っているが、見分け方をご存知の方、教えてください。

WE308に限らずSAECのアームは型番にも反映されているとおり、ダブルナイフエッジで有名である。ナイフエッジと言えばSMEのアームだが、それを上下ダブルで組合せるという実に技術立国日本らしい凝った仕組みを採用している。ガタつきがない、スムーズな動きが売りだが、このアームを取り扱っていると、なるほど工作精度の高さを実感できる。古い製品なのに、他のアームと比べてもカートリッジの交換調整が実に楽なのだ。カートリッジとの嵌合だったり、ウェイトの調整だったり。ラテラルバランスもゼロバランスも本当に楽。結果、このアームと組み合わせるカートリッジは交換頻度が最も高い。

インターネットのおかげで古い製品でも説明書をはじめ一通りの情報が手に入るのだが、有名な割にはこの製品のスペックは良く分からないところが多い。まず、標準シェルが用意されていたにも関わらず実効質量のカタログデータがない。標準のウェイトはやたら軽量なのだが、当時のオプションとしてはかなり重いカートリッジまで対応する追加ウェイトも用意されているので、どのあたりのカートリッジを念頭に置いているか定かでない。オークションで補助ウェイトを作成販売している人がいるので一番小さいものを購入してある程度の重量のカートリッジを使ってもみたのだが、今はもっぱら標準ウェイトで対応可能な範囲のカートリッジとシェルを組み合わせている。結果として比較的軽針圧、ハイコンプライアンスカートリッジになる。したがって、MCカートリッジに興味津々だった間は出番が少なかった。

そんな不遇な時を過ごしていたWE308が最近では一番稼働時間が長くなった。このところ仕事が本当に忙しくなってきて、平日に音楽を聴ける時間がどんどん短くなっている。せめて寝る前のわずかな時間でも何か聴こうと思った時に、なぜかMMカートリッジで音楽を聴くことが多い。同じLPを聴き比べたら、MCカートリッジの解像力とか切れ味にMMカートリッジは及ばないと感じるのだが、疲れた身体にMMカートリッジの音は優しいような気がする。

数えてみたらいつの間にかMMカートリッジも8個も集めてしまった。そのうち現時点のエース2つはSeries III用にキャリングアームに装着している。残りの6個をその日の気分次第で取り換えながら聴くのにこのアームが大活躍なのだ。1g前後の軽針圧のものから2g近い針圧を要求するものまでいろいろだが、WE308は気難しいことを言わずに活躍してくれている。とっても使いやすいユーティリティプレイヤーだ。

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今日は2M Redを装着してビル・エバンスを聴いた。
休日前、束の間の至福の時間だ。
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