ラロ「スペイン交響曲」 : カプソン/ヤルヴィ

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いつも遊びに来てくれるakifuyu102さんのサイトで紹介されていたカプソン/ヤルヴィ/パリ管によるラロの「スペイン交響曲」。「スペイン交響曲」はクラシック音楽を聴き出してすぐの頃に出会った曲で、最初に聴いた時からエキゾチックで親しみやすいメロディにすっかり魅了されたのだが、最近はしばらく聴いていなかった。共演がヤルヴィ/パリ管というのも魅力だし、加えて組合せがツィゴイネルワイゼンとブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番というのも最高。akifuyu102さんのサイトを見てすぐにHMVで買ったが、在庫切れでしばらく待たされた。ようやく昨日到着したので早速聴いてみる。

第1楽章冒頭から非常に溌剌とした演奏だ。カプソンという人を聴くのはこれが初めてだが、なかなかの美音の持ち主。技の切れ味も良いが、それ以上に存分にメロディを歌わせるところが素晴らしい。第三楽章のヴァイオリンなんて妖艶である。それに加えてこの演奏、バックのヤルヴィ/パリ管が大変良い。ヴァイオリンにきっちり寄り添いながら、ダイナミックな演奏を聴かせてくれる。録音は新しいコンサートホールで行われたということだが、ソロヴァイオリンをがっちり真ん中に据えた鮮明な録音である。
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マーラー交響曲第9番 : バーンスタイン

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マーラーの交響曲の中で9番が一番好きなので、この曲についてはもう何度も取り上げているが、その中で以前記述したことを今日は修正したい。

バーンスタインの9番にはNYP、BPO、ACO、IPOと4種類の録音がある。その中で一番最近リリースされたイスラエル・フィルとのライブ録音を聴いた時に書いた記事の中で、有名なBPOとのライブ盤を一言で言えば「イマイチ」と書いたのだが、今日、限定盤として販売されているSACDバージョンを聴いたところ、印象がガラッと変わってしまった。

まず、このバージョン、おそらく今までとは違うマスタリングだと思う。もちろん、SACDなのでDSD化されているが、それより重要なのは従来盤に比較してはるかにライブ感がそのまま収録されている点である。冒頭から聴衆ノイズのレベルが高い。一方、楽器の音は手持ちのCDに比べてダイレクト感が減っている。CDの編集の時にはオーケストラの音圧を高めて相対的に聴衆ノイズを減らしていたのだろうか。また、従来のCDでも聞こえたバーンスタインの声がより鮮明に聞こえる。それはオケに対する指示に聞こえることもあるし、ここ一番という時に唸り声だったり、あるいはメロディを口ずさむような声だったりいろいろだが、CDの時より存在感が大きい。

結果的に、このSACDからはバーンスタインとBPOの世紀の一期一会という雰囲気がビンビンと伝わってきた。不思議なもので、ノイズが多いにも関わらず、こちらの方がずっと演奏に没頭できるし、第一楽章からこんなに緊張感漲る演奏だったかと驚く。結構退屈してしまうことの多い中間楽章も手を変え品を変え変幻自在の音楽だし、何と言っても最高なのは最終楽章。バーンスタインの唸り声に続いて弦楽器が総奏するところなんてまさに鳥肌が立つ。確かにこれは良い演奏だ。

モーツァルト交響曲第41番「ジュピター」 : コレギウム・アウレウム合奏団

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先日買ったコレギウム・アウレウム合奏団のレコードはどれを聴いても素晴らしかった。3枚購入したアルバムのうち最後に聴いたのがこの「ジュピター」なのだが、古楽器の透き通るような音色で生き生きとした素晴らしい演奏が聴ける。このアンサンブルの演奏はハイドンやシューベルトでもそうだったが、音楽の愉悦に満ち溢れている。

響きが透明なので終楽章のフーガは各楽器の細かい動きまで鮮明に聞こえてくる。それぞれの楽器が織りなすメロディが一体となって迫ってくる様は印象的である。指揮者なしでこんなに有機的に演奏できるアンサンブルの技術に感動する。こんな良い演奏が今となっては話題にもならないのが不思議なくらいだ。名盤。

Origin Live Silver MK3A

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今までORBEのアームとしてSMEのSeries IV、Series III、3009S2を装着してきた。ORBEを買うと一枚付いてくるアームボードとしてSME用を発注したので自然の成り行きでアームはいつもSMEだった。3種類のアームには満足しつつ、いつかMichell Engineeringの純正アームを試してみたいと思っていた。

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これがMichell Engineeringから発売されているTechnoarm。このアームはRegaRB250がベースになっている。

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こちらがRegaのアーム。RB250は現行品ではないようで写真はRB202である。見比べると錘の形が全然違うし、Technoarmはアームチューブの下に穴をあけて中をダンピングしたりと結構手が入っている。価格はVAT抜きで£550。ベースとなっているRB202が£155なので4倍近くの価格だが、それでも現在、新品で買えるアームの中ではかなり安価な部類である。

先日、いろいろ下取りしてもらったのを元手にRega用のアームボードとともにTechnoarmを注文しようと思って海外ショップのサイトを見るといつの間にかMichell Engineering製品は国内のみ販売となっている。内外価格差が激しいブランドなのでどこからか横やりが入ったのだろうか。

残念と思いつつ、サイトを眺めていて見つけたのがOrigin Liveのトーンアームである。こちらもベースはRegaのアーム。Rega製品は一つのゴールデンスタンダードになっているのに、なぜ日本には正規代理店すらないのだろうか?昔はあったみたいだが、実に不思議な話だ。シェル交換式の製品がないから日本では売れないのかな。

Origin LiveもMichellやRegaと同じイギリスのアナログブランド。ターンテーブルやアームだけでなく相当変わったデザインのスピーカーも販売している。ここの製品は国内正規代理店を通じても購入できるが、同時に世界中どこからでも直販サイトでオーダーできる。これなら、日本語による購入時や導入時のサポートを受けたい人は代理店を通じて買えるし、そういうことが不要なら直接購入できる。他メーカーもこうあって欲しい。

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僕が買ったSilver MK3Aはラインアップ中、下から3番目の製品。たくさん種類があるので多少迷ったが、Technoarmと同じ価格帯ということを決め手とした。ベースがRegaなのでアームボードもRega用が必要になる。MichellのRega用ボードは買えないので、代わりにOrigin Live製のSMEアダプターを購入した。

届いたアームはウェイト、ケーブルを含めてすでに組みあがっているのでインストールは非常に簡単。今のSME用アームボードにアダプターをねじ止めしてアームを取り付けるだけである。上下からナットで締めるタイプなので取り付けにもなんら技術は要らない。あえて言えばシェル一体型なのでカートリッジを付ける時に多少の注意が必要ということぐらいである。

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開梱してから30分もかからず、無事、ORBEに装着することができた。

オリジナルのRegaアームは頑固に高さ調整ができないデザインを貫いていてRega製プレーヤー以外に装着する時にはアダプターが必要だが、このアームには"Bulit in VTA Adjuster"を装備していると書いてあったので、どんな凄いものかと思っていたのだが、実体は支柱にネジが切ってあって、ボードの上下に付いたナットで位置調整するだけだった。まあ、確かにこの機構のおかげで微妙な高さ調整も容易である。

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マニュアルには内部配線のエージングにしばらく時間がかかると記載されている。なので、まだ本領を発揮していないのかもしれないが、装着直後から音には満足である。ORBEとの相性はとても良いみたいだ。それに色を含めてデザインマッチングも悪くない。

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ストラヴィンスキー「春の祭典」 : ブーレーズ

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ブーレーズの「春の祭典」と言うとクリーブランド管と録音した新旧録音が有名だが、これはブーレーズのオーケストラ物初録音となるフランス国立管弦楽団との演奏。「春の祭典」の録音史においてはこれこそが画期的な演奏という評価を何度か目にしたので関心はあったのだが、CDを買ったのはこれが初めてだ。

以前、どこかでこの演奏をちらっと聞いたことがあるが、いかんせん録音が冴えない印象が強かった。「春の祭典」はオーディオ的要素がふんだんに含まれているところも魅力なので、正直、出来る限り良い音で聴きたい。そう思っていたところにTower RecordからSACDハイブリッドの限定盤が発売された。SACD層だけでなくCD層も新しくマスタリングされているから期待できそう。

発売前に予約したのでほぼ忘れかけていたところ思いがけず昨日CDが届いた。帰宅して早速聴いてみたのだが、はっきり言って音はやっぱり良くない(笑)。オリジナルのレコードやCDが手元にないのでどのくらい改善されているか比較はできないが、いずれにしてもリマスタリングによってマスターテープ以上の音になるわけではないし、仕方ないと言えば仕方ない。63年という録音年代から考えても残念ながら貧弱な音である。

録音の問題を除けば、演奏自体はとても興味深いものだった。僕の中でブーレーズの「春祭」と言えばクリーブランド管との最初の録音なのだが、比較してこちらの演奏はまずテンポが格段に速い。演奏全体はいかにもブーレーズらしい、客観的で冷めたアプローチに変わりないが、快速なテンポに加えて、クリーブランド管に比べるとフランス国立管の演奏が良い塩梅に荒れ気味なのでスタジオ録音にも関わらずライブ録音のような印象を受ける。録音も相まって高音域は少々刺々しく、これがまた演奏に攻撃的な表情を与えている。この演奏を聴くとクリーブランド管との再録が登場した時は衝撃的だっただろうなあと思った。グールドの新旧「ゴールドベルグ変奏曲」まではいかないが、この二つの演奏のコントラストも相当のものである。

ベルトの交換

DR. FEICHERT ANALOGUEのプロトラクターを先に開けたら面白くて、昨日はすっかり当初の目的を忘れてしまった。そう、そもそもの買い物の目的はMichell EngineeringのORBEの交換ベルトだったのだ。ORBEに限らずベルトドライブプレーヤーに使われているベルトは少なからずテンションがかかった状態で使用するので少しずつゴムが伸びる。少々、伸びたとしても機能的に問題ないし、実際、我が家のベルトも実用上なんの不都合もなかった。今回、交換ベルトを購入したのは、万一の備えという理由に加えて、このくらいの使用でどの程度の変化があるのか興味があったのである。

一口にベルトと言ってもプレーヤーごとに長さも形も材質も違う。他のプレーヤーに比べてORBEのベルトは細身の部類に入ると思う。材質は少し硬質のゴムで特殊な素材ではなさそう。それにも関わらず価格は4,000円くらいする。言っても仕方ないけど高い。ちなみにこのベルト、通販ではほとんど目にしない。(一つのショップしか見つけられなかった。) サービスパーツだから普通はプレーヤーを買ったお店に注文するのだろう。

文句はさておき、到着した新しいベルトを手に取ってみると思った以上にりリジットに感じる。つまり、今まで使っていたベルトがいつの間にか変化していたということだ。せっかくなので比べてみた。

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なんだか事件の現場写真みたいになってしまったが、言うまでもなく左側が使用前、右側が使用後である。思った以上に違うので少々驚いた。結構伸びるものなんだなあ。

こうして取り出してしまったので早速交換してみたのだが、プレーヤーに掛けるところからテンションが全然違う。ここまで違うとやはり多少は音に影響しそうである。しかし、どっちが良いのかは定かでない。プラッターが定速に達した後は出来る限り小さなトルクの方が音が良いと言う話もよく聞くし、ベルトは必要悪とすればテンションは少ない方が良いに違いない。一方である程度のテンションがある方がモーターの駆動力は正確に伝えそうな気もする。

頭で考えてもわからないことは聴いてみるに限ると思ってすぐに聴いてみたのだが。。結論、すぐにわかるほどの違いなし(笑)。とりあえずスリップするか切れてしまうまで今までのベルトを大切に使うことにした。

今年もまた。。

今日は年に一度の健康診断。そう今年も胃カメラの日である。振り返れば昨年は年度末ギリギリの31日に人間ドックに行ったのだった。自分は初めてだったのだが、31日に駆け込み健診という人は大層多く検査箇所ごとにずいぶん待たされた。

その経験を踏まえ、今年は一週間早く行ったところ、たかだか一週間違いでもクリニックを訪れている人の数はぜんぜん違って、今日はとてもスムーズだった。と言うわけで毎年最後の大関門である胃カメラの時間もすぐにやってきた。そして、今年も拷問だった。。

毎年の健診結果の推移が見れると思って毎年同じところに通ってきたが、来年こそは鎮静剤で眠らせてくれるところに行こうかなあと思う。

DR. FEICKERTANALOGUE PROTRACTOR NG

ORBEを使い始めて早いものでもうじき2年。ゴムのベルトと言うのはどのくらいで劣化するのかはっきりわからないが、消耗品は気づいた時に用意しておこうと思ってORBEを買ったショップのサイトを覗いたところ、ふと見つけたのがDR. FEICKERT ANALOGUEが販売するPROTRACTOR NG。このサイトにいつも遊びに来てくれるキタサンのブログで最近、同社のターンテーブルと別の会社が販売するアナログ関連のセッティングツールに関する記事が掲載されていて、なんとなく気になっていたところだったので思わずベルトと合わせて購入してしまった。18日に発注したので月末くらいに到着かと思っていたら、早くも昨日到着した。記録を見るとショップを出たのが19日なので3日で到着したことになる。まあ便利な世の中になったものだ。

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商品はシンプルな段ボール箱に梱包されている。箱を開けるとプロトラクターと同社のメインであるターンテーブル各種のリーフレットが入っていた。DR. FEICKERT ANALOGUEの製品はいかにも精密な感じで好印象だがそれ相応に高い。あんまり見ないようにしよう。

プロトラクターは組み立て式だが実に簡単な構造なので間違いようがない。早速組み立ててORBEと3009S2のセッティング状態をチェックしてみることにした。

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こんな感じでスピンドルにプロトラクターの穴を合わせ、垂直に差し込まれた棒の先端をトーンアームのピボットに合わせる。本来は水平に差し込まれた棒に刻まれたゲージをアームの有効長に合わせて、その時の棒の位置にトーンアームをセットするのだが、今回は順序が逆である。で、その時のゲージの数字を読んでみると、

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215mmと少々というところだろうか。はて、S2の有効長って何ミリだったっけと調べてみるとこれが不思議なことにどこを探しても書いてない。もっと探せばあるのかもしれないが、今日、見つけられたのはImprovedの数字だけ。それもEffective LengthじゃなくてスピンドルからSMEのマウントベースの中心位置までが217.9mmという記述のみ。うーん、S2が同じだとすれば3mm近くずれてるなあ。良く分からなくなったので次にTD124とSeries IVを調べてみた。

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同じように調べてみるとゲージは、

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またまた215mm少々。完全一致と言っても過言でない。で、こちらはいまだに現行品なのでハーマンのサイトでチェックするとスピンドルからピボット中心までは215.35mmと書いてある。どうやらこちらは正解らしい。

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プロトラクターの説明を読むとご覧のとおり、カートリッジとのアラインメント線がB,L,Sと3種類ある。それぞれBaerwald, Lofgren, Stevensonですね。そう言えばどこかでそういう話を読んだと思うけど、さて、どれがどれだったっけ?

ちょっと厳密に調整してみようかと軽い気持ちでツールを導入したら思わぬ深い沼に足を踏み入れてしまった感じ。とても今晩中に全部解明できそうにない。しかも、明日は健康診断だし。。ということで続きはこの週末にでも。とにかく思いもかけずとても楽しい玩具が手に入った(笑)。

ちなみにS2とSeries IVの数字が一致したのは偶然でもなんでもなく、S2の調整をSeries IV付属の簡易プロトラクター(紙製)で行ったからである。SeriesIVの調整はBaerwaldに基づいているようだ。

アームの入れ替え

タイトルをご覧になって「またかいな?」と思われてしまっただろうか。。そう、またなのだ。と言っても、今回はさすがにまた新たなアームを買ったわけではない。プレーヤーとアームの組合せを変えてみただけである。何と言ってもまだまだビギナー。どのプレーヤーにどのアームが良いかは、雑誌やネットでいろいろなな情報が溢れているが、やっぱり試してみないとわからない。なので今回はこういう組合せを試してみた。

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まずはORBEに3009S2を付けてV15Type4を組み合わせてみた。3009S3からS2に交換したが、同じS2でもImprovedなら王道の組合せと言えよう。比較してS2はスペック上実効質量が重いのだが、ライダーウェイトを後ろ側だけにすれば感覚的にはかなり軽快である。実際、組み合わせてみると錘の位置も良い感じだし、音も良かった。S3も決して悪くなかったのだが、フローティングモデルとは言えプラッターも重厚なORBEには少々軽すぎるような感じだったので、組合せとしてはむしろS2の方が良いかもしれない。ポップスやジャズだけでなくクラシックを聴いてもイケる。これで聴くショスタコーヴィチもなかなかおつである。

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S2を取り上げられてしまったTD124にはSeriesIVを装着してみた。こちらは年代的には明らかにミスマッチ。とは言え、マグネシウム製で堅牢な造りのSeries IVはアイドラードライブの勢いある回転も楽々と受け止めてくれる。この組み合わせに合わせて最初は久しぶりにAT-50anvを使ってみたのだが、このカートリッジ、磁力がよっぽど強いのか防磁が足りないのか鉄製ターンテーブルに引き寄せられてゼロバランスの状態で中心近くでは適正針圧以上の針圧がかかってしまう。ということで光カートリッジに戻した。光カートリッジはロープロファイルなのでそのまま装着すると反ったレコードではアームの根元付近を擦ってしまう。なのでシェルとカートリッジの間にカーボンスペーサーを挿入した。以前、ORBEにこの組合せで聴いていた時には優秀すぎてどことなくつまらない音がしたのだが、TD124との組合せはなかなか良好である。見た目も最初は違和感があったが、見慣れると黒とグレイの組合せも悪くない感じ。しばらくはこれで聴いてみようと思う。

真空管アンプ探しのその2

X-PM100を試聴した時、Stageを駆動するのにクールで駆動力のあるデジタルアンプも悪くないなと思ったのだが、結局、どちらかと言えばその逆のウォームで少し音が厚めな真空管アンプを欲しいと思ったのは、考えてみれば以前所有していたESLの音を懐かしんでいたのかもしれない。クールとかウォームとか言う区別はあまりにも乱暴ではあるが、ESLにあってStageにないものと言うと僕の中では音の温かみなのだ。どちらも繊細で精緻な音を出す。非常に細かい筆致で描写するのは共通しているが、たとえて言えば、その筆先がStageは鋭利でESLは丸い。そこに出来の良い真空管アンプを組み合わせればきっと良い音で鳴る、そう思ったのである。

さて、期待して試聴した真空管アンプはトランスが盛大に鳴いて音楽どころではなく、すっかり出鼻をくじかれたのだが、正直、あのアンプはひどかった。誤解のないように付け加えれば、それが仕様であるとは思っていない。試聴した個体が外れだったに違いない。しかし、ショップ経由で代理店に確認したところ、答えは「仕様」と言うことだった。まあ、有名メーカーの真空管アンプを有名ショップで買ってもそういうことがあると言う勉強になった。

次に探したのは国内のガレージメーカーである。それなら製作者の顔が見えるし、自分のシステムを伝えた上で必要ならばカスタムメイドしてもらえる。先ほどの体験からトランス鳴きは絶対避けたいと思ったし、製作段階でスピーカーとの相性も確認できる。いくつか真空管アンプをカスタムメイドしてくれるメーカーのサイトを見た上で、とあるメーカーに問い合わせしてみた。まずはStageとの相性について尋ねたのだが、答えは明快だった。僕はStageのインピーダンスを心配していたのだが、アウトプットトランスを積んでいる真空管アンプはスピーカーのインピーダンスが低いのは問題ないという。むしろ、ネットワークの方が問題で回路次第では十分な電流が流れないことがあるらしい。ならばとネット上でStageのネットワーク回路図を探してメールで送ったところ、「シンプルで真空管向きである。」とのことだった。であれば、悩む必要はない。早速、メインアンプを製作してもらうことにした。

せっかくカスタムメイドに対応してくれるのでスリムなモノラルアンプをお願いしてみたのだが、今時クロストークの問題はないし筐体代がもったいないということで却下(笑)。ではと、このメーカーの定番であるEL34のステレオアンプをお願いしたところ駆動力のあるKT88の方がお薦めということだったので、もう仰せのとおりと思ってそれでお願いした。こちらのメーカーではオーナー自ら一人でアンプを製作しているようだが、定番アンプをお願いしたので納期は思いのほか短かった。正式に発注してからはだいたい2週間くらいだったろうか。

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ご覧のとおり、最新のアンプとは思えない質実剛健、頑固一徹といった感じのデザインである。比較してヨーロッパのアンプってお洒落だなあと思う。今、これがスピーカーの間、音楽を聴いている時には正面に鎮座しているのだが、後ろの壁に掛け軸でもかけようかという風情である。真空管にチューブラジエーターを巻き付けたせいか一層和の雰囲気が増している気がする。

さて肝心の音なのだが、これはもう素晴らしいの一言。そもそも今までプリアンプの交換に比べてメインアンプの交換による変化は凄く小さいと思っていたのだが、今回ばかりは違った。思惑どおり音は厚くウォームに変化したのだが、それと引き換えに音の抜けが悪くなったりぼやけたりといった弊害がない。スピーカーの駆動も制動も何ら問題なし。特筆すべきはアンプが静かなことで、無音時のSN比は相当良い。このアンプの場合、トランスはうんともすんとも言わない。ご覧のとおり電源を入れると正面に赤色のLEDが点灯するが明るさはほどほどで、昼間は特にはっきりしない。すると電源を入れたかどうかわからなくなることがしばしば。そのくらい静かである。メイド・イン・ジャパン万歳\(^o^)/と言いたくなるような造りの良さである。

あんまり良いので対になるプリアンプも借りてみることにした。

久々のゴルフ

連休の中日、今日は久しぶりにゴルフに行ってきた。2月7日以来なので1か月半ぶりくらいである。あまりゴルフをしない方にとってはそのくらいの期間大した間隔ではないだろうが、なにせ振り返ってみればこの前回のゴルフのせいで、ひどい風邪を引いてしまってコンペも含めて予定していたゴルフを3回もキャンセルしたし、打ちっぱなしすら行かなかったので、気持ち的にはずいぶん長い間ゴルフから遠ざかっていたように感じる。

昨日今日と関東は暖かくゴルフ日和だったのだが、午後にかけてだんだん風が強くなってきた。逆風の中、球を上げてしまうと想定よりはるかに手前に落ちてしまうし、そもそも久しぶりだったこともあってずいぶん叩いてしまった。まあ、練習もぜんぜんしなかったし、スコアは仕方ない。一日、楽しく過ごせただけで良しとしよう。

ここ数週間、肩や腰、日によっては首や腕とあちこち身体が痛くて不快だったのだが、一日ラウンドして来たらずいぶん楽になった気がする。やっぱり身体を動かさないとダメなんだなあ、と実感した。

マーラー交響曲第1番 : ラトル

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真空管アンプの話を書き始めたら予想外に長くなって結構夜遅くなったので昨日は尻切れトンボで終わってしまった。で、今日はその続きとも思ったのだが、また長々と書いてしまいそうなので、アンプの話は時間に余裕のある時に。

サイモン・ラトルがバーミンガム市響の首席指揮者になったのが1980年。ラトルは55年生まれだから首席指揮者になった時は若干25歳。それが10年もしないうちに録音を通じて無名の地方オーケストラを世界的に有名にしたのだから、大したものだと思う。最近、ラトルとバーミンガム市響の録音をまとめたボックスセットが発売されたので早速入手したのだが、マーラーは5番と9番が欠けるだけであとは全部録音している。9番がVPOと録音され、その後、BPOとのライブも発売されたのでもっと多くの曲がBPOやVPOで録音されているような気がしていたが思い違いだった。結局、全集としては3つのオーケストラの組合せで発売されているが、そもそも特に全集を意識して録音したわけではなさそうである。

そういうわけでこのボックスセットには番号付き7曲+「大地の歌」という8曲が収められている。このコンビの最初のマーラーである「復活」が86年、「巨人」は音楽監督就任間もない91年に録音されている。今やBPOの音楽監督というクラシック界の頂点に立つ有名人だけにラトルも最近毀誉褒貶相半ばな感があるが、僕はこの人の演奏は何を聴いても面白い、さすがだなと思う。ラトルはバーミンガム市響時代が一番良かったという人がいるが、若さゆえの輝かしさに目を奪われすぎではなかろうか。ラトルが5番をようやく録音したのは「復活」の録音から15年も後のことだ。他の指揮者の全集であれば5番はどちらかと言うと早期に録音する方の曲目だろう。僕はその辺りにこの人の楽曲探求の深さと誠実さを感じる。その上、今や機能的に数段上のオーケストラを手にしているのだから、鬼に金棒である。

いつもながらアルバム自体の感想が最後で短くて恐縮なのだが、この「巨人」、やはり青年指揮者とともに成長するオーケストラの勢いを存分に感じるしなやかでいて熱い演奏である。もちろん若さに任せていたずらに暴走することはなく、どの楽章においてもゆるやかなところ、静かなところはとても美しいし、それでいてここ一番では瞬発力、爆発力を見せてくれる。特に終楽章は多彩な表現で聴き応えがある。良い演奏だ。録音レベルが低いので音量をいつもより上げる必要がある。

真空管アンプ探しのその1

ApogeeのStageを導入してからもうすぐ1年。幸い、これまで壊れそうな兆候はなく、これならしばらくは安心して楽しめそうである。プロダクトサイクルの比較的短いソース機器と違ってスピーカーは本来じっくりと長期間使うものだと思うので何よりだ。Apogeeを買った時にショップには「アンプを選ぶ」と言われた。確かにネットで調べるとKrellとか大型のGoldmundみたいな大出力モノラルアンプを使っている記事が多い。Apogeeの中で最小モデルとは言え、万一アンプが故障して結果的にスピーカーを壊したりしたら困るので、Apogee購入に合わせてPass LabのAleph 0sを買った。このアンプ、出力は40Wと大きくないがA級アンプで力はある。インピーダンスも2Ωまで保証されている。実際、Aleph 0sでの駆動はなんの問題もなく、また、決してブーミーではないがガリガリの筋肉質でもない柔らかな音は音楽を楽しむにはとても好ましいものだった。

このままAlephでも良かったのだが、NmodeからX-PM7、次いでX-PM100が発売された時に自宅試聴させてもらったところ、Alephとは毛色の違うクールでタイトな低域がそれはそれでなかなか魅力的だった。とは言え、Alephを全面的に圧倒するようなこともなかったので結局、買い替えるまでには至らなかった。むしろNmodeを聴いて気付いたのは、実はStageは言うほどアンプ食いではないということだった。たぶん、ある程度電源のしっかりしたアンプなら普通に鳴らせる。

前置きが長くなってしまったが、このことがわかって以来、俄然、興味が沸いたのが真空管アンプである。

真空管アンプは以前、同じNmodeのV-LA1を短期間所有していたのだが、アンプをセパレート化する過程で手放してしまった。その時点ではセパレートアンプ化によるアップグレードに夢中だったが、一通り試した後に思い出してみるとV-LA1は魅力的なアンプだった。正直、上も下もそれほど伸びてないし、解像感もほどほど。中低音はふっくらとしていて切れ味は1ビットアンプと比べるまでもない。でも、音楽を聴いててなんとも心地良いのである。1ビットアンプの専門家であるNmodeの設計者の方が突然この真空管アンプを販売したのも理解できる。真空管アンプでも鳴らせるかもしれないとわかったので、X-PM100を試聴した昨年の夏以来、ずっと真空管アンプを探していた。

最初はMcIntoshやMarantzといった往年の名器やLuxman、Uesugiといった国産の雄が欲しいと思って探したのだが、評判の良い古い機種はやたら高い上にコンディションに不安が残るし、その後生産されたレプリカや後継機種はおおむね過去の名声に比べて評判がよろしくない。だいたい、真空管アンプでも大丈夫という仮説を検証しようにも中古品を自宅試聴する機会は限られてしまう。ならば現行品と思って調べてみると中国産以外はお値段が張るものが多い。かなり前に聴いたOctaveなんて見た目もすごく魅力的だが100万円コースだし。EARも結構高い。V12なんてデザインもネーミングも車好きにはたまらないんだけど。。AH!が手に入りずらくなって、頑張ればなんとかなりそうなのはRogersかUnison Researchくらいである。

そうこうするうちに運良くUnion ResearchのP40を試聴することができた。アンプの前面にムラノガラスを使ったデザインが印象に残るアンプである。以前オーディオ雑誌の賞を取った時に記事を読んで記憶に残っている。丸っこい可愛いデザインで大きさを想像しずらいが、実機は意外なほど大きく、それ以上に25kgと重い。トランスがある後ろ半分が特に重い。苦労してセッティングして使ってみるとPPで40WのP40は予想通りStageを何ら問題なく駆動することができた。しかし、このアンプは全く違うところで大問題な点があって、導入するには至らなかった。なぜならば、我が家ではこのアンプ、尋常ではないレベルでトランスが鳴くのである。耳を近づけると小さく「うーうー」言っているアンプは他にもあるが、「ジイイイイ」というまるで油蝉のような音が2m離れた視聴位置でも聴こえてくる。クラシック音楽なんてとても聞けないレベル。こりゃ、ダメだ。そう言えばV-LA1も小さく唸っていたし、もしかして真空管アンプって多かれ少なかれみんなトランスが鳴くのかも。。。

この一件以来、アンプ探しはほぼ白紙に戻ったのだが、それでもなんとなく諦めきれず調べていたところ、ようやく最近になって、これは良いかもというアンプを見つけることができた。

MCトランス

学生時代にレコードを聞いていた時はお金も知識もなかったのでカートリッジと言えば当たり前のようにMMかその派生のものしか所有したことがなく、レコード針が減ったら針先だけ交換して使うものだと思っていた。MCカートリッジという名前はかろうじて知っていたものの、原理的にどう違うかもわからないし、ましてや針を交換することができないなんて思いもしなかった。まったく縁のない高級品だったのである。

アナログを再開するに当たってあれこれインターネットで情報を収集したのだが、知れば知るほど目から鱗状態だった。高級品のMCカートリッジの出力が実はMMよりも小さく、昔のプリメインアンプには当たり前に付いていたフォノ入力に直接入れても十分な音量に達しないというのも僕には驚きだった。えー、高級品の方が出力が小さいの?ってな感じである。まあ、そんな状態だったにもかかわらず怒涛の勢いでアナログ製品を揃えていく中で、最初の背伸びが昔は手の届かなかったMCカートリッジだったのだが、その時合わせて買ったのがMCトランスである。

インターネットの発達のおかげで何を調べるにも本当に便利なのだが、ネット上の情報は体系的でないし真偽も定かでない。昔であれば本をじっくり読んだり、あるいはその道に通じた人に少しずつ教えてもらうことで防げる間違いを犯してしまう可能性も高い。僕みたいにせっかちでそそっかしいとなおさらである。

僕にとってMCトランスはまさにそういう対象だった。なにせ一番最初に買った時にはカートリッジとトランスのインピーダンスマッチングも増幅率もまったく気にしていなかった。その後、少しずつ知識を身に着けたはいいものの、ネット上のあちこちに記されたあのトランスが良い、このトランスが良いという情報に踊らされて気が付けば6個もトランスを買ってしまった。で、今はそのいずれも使っていない。なんとも馬鹿丸出しである。

6個買ったトランスはそれぞれ特性が違うが、僕が使っているカートリッジは(というよりたぶんほとんどの人が使うカートリッジがSPUの2ΩからDL103の40Ωの中に入るだろうから)結局のところどれを使っても許容範囲に入る。その中であえて一つ音が良かったものを挙げればMy Sonic LaboのStage302だったので、MCカートリッジをトランスで増幅する時にはこれを使っていたのだが、最近になってフォノイコ内蔵のプリアンプを使うようになってからはまったく使わなくなってしまった。もちろん、プリアンプにもよるだろうが、きちんと設計されたトランス内蔵のフォノイコ付きプリアンプであればスタンドアローンのMCトランスを繋ぐより音が良いという製作者の言葉通り、Stageを繋いでMM入力で受けるより内蔵トランスを経るMC入力の方がずっと音が良いのだ。

その昔、ずっと昔に作られたWEのトランスは素晴らしいと言う。そうかもしれない。でも、簡単には手に入らないし、何よりプリアンプそのものよりはるかに高価である。そこまでは要らないかな。ということで手元に残った4つのトランスももうすぐお別れである。

ブルックナー交響曲第9番 : シャイー

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昨日の晩、akifuyu102さんからコメントをいただいた。ありがたいことに僕の記事を読んでシャイーのブルックナーのCDを図書館からお借りになるという。曲目は4番と9番。これまで3番と5番を聴いた感じでいうと4番はとても自然で良さそうだが、どちらかというと肩から力が抜けたシャイーのアプローチで9番がどうなるかあまりイメージできなかった。せっかく借りていただいて凡演だったら嫌だなあと思ったので今日早速聴いてみた。

結論を短く言うと凡人の心配は杞憂であった。いや、これはなかなかの名演奏である。こちらはコンセルトヘボウとの演奏で、やはりベルリン放送響との録音に比べるとかなりホール成分を多めに含んだものになっている。直接音がビシバシと飛んでくる音ではなくてホールトーンに包み込まれるような録音である。これにシャイーの指揮が相まってこけおどし的な迫力には乏しい。が、徹頭徹尾、実に安定した堂々たるテンポで音楽が進むし、強奏でも混濁せず、加えて対位法のオーケストレーションがとてもわかりやすい。

9番の録音は96年なので5番の5年後ということになるが、この間にシャイーとコンセルトヘボウの間の相互理解が進んだのか、はたまた3番の録音から10年以上経ったことによるシャイーの成熟によるものか、おそらくどちらも良い方向に影響していると思うが、この演奏は実に丁寧だし、そして何より美しい。できれば大きめの音で聴いてほしい素敵な演奏であった。

ブルックナー交響曲第3番 : シャイー

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5番に続いてシャイーの3番を聴いたみたところ、5番にも増して良い演奏だった。こちらはコンセルトヘボウではなくベルリン放送響との演奏である。ベルリン放送響というと東西あってややこしいがその昔はRIASと呼ばれていた西側のオーケストラ。考えてみればこの演奏が録音された頃、というかシャイーが音楽監督時代はまだ東西ドイツが統一されていない時期である。壁が崩壊したのはずいぶん前に感じるが、不思議なことにクラシックレコードの場合、85年録音というとかなり最近のことに感じる。

まだ2曲聴いただけ、コンセルトヘボウとベルリン放送響をそれぞれ1曲ずつ聴いただけなので結論めいたことを言うのはあまりにも性急とは思いつつ、少なくともこの2曲だけを比較するとベルリン放送響との演奏の方が充実している。先に書いたとおり5番が悪いのではなく、この3番に聴くオーケストラの盛り上がり、アンサンブルの精度、さらにはホールの違いによると思うが録音の鮮明さ、どれを取ってもベルリン放送響とのコンビの方が良い。オーケストラのネームバリューというかブランド力で言えばコンセルトヘボウが上だと思うのだが、意外と言えば意外な結果である。

3番においてもシャイーのアプローチは至極真っ当なもので、全曲通して聴いてみてもどの楽章のどの部分が特に印象に残ったといった局地的な感動はない。じゃあ、退屈かと言うとそんなこともない。聴いている間ずっと3番って良い曲だなあと思い続けられるような演奏なのである。ヨッフムとかヴァントとか、あるいは朝比奈さんのような、どこか武骨で風格ある演奏とは違って、言ってみればすごくユニバーサルな演奏だ。録音は凄く良い。

チャイコフスキー交響曲第4番 : 小澤

小澤チャイコ4番

若い頃はそんな風に思わなかったのだが、あらためて小澤征爾さんのキャリアを辿ると日本人として本当に奇跡的と言うしかない。もちろん若くして国際コンクールを制する才能があってのことではあるが、その後、カラヤンに見出されたのも凄いし、さらにその宿敵とも言えるバーンスタインに預けられたっていうのが驚きである。

普通、スポンサー通しがあまり良好な関係でない場合、両方に通じていると言うのはかなり微妙であろう。この人の場合、どうしてそういう中をすいすいと泳げてしまうのか。実力さえあれば関係ない、なんて綺麗な世界とも思えないのだが。

70年にパリ管とチャイコフスキーを録音できた背景には、69年からパリ管の音楽監督を兼務していたカラヤンの影響があると勝手に思ってしまうのだが、それはともかくとして当時若干35歳の小澤青年が、ミュンシュの後の音楽監督はみな短命という、魅力的ではあるが一筋縄では行かないオーケストラを指揮したこの演奏は「お見事」な出来である。

第1楽章冒頭からオーケストラは抜群のアンサンブルを聴かせてくれるし、小澤さんの指揮は後年に比べてずっと爽快感に溢れるものだが、だからと言って若さに任せた荒っぽさとは無縁。両端楽章のフィナーレでわずかにテンポを上げる意外、終始落ち着いたテンポで細部を磨き上げたスタイルは当時から変わらない。こういう演奏を聴くと小澤さんはやっぱり若い頃の輝きに満ちた演奏が良いなと思うのであった。

シューベルト弦楽五重奏曲 : コレギウム・アウレウム合奏団

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ハイドンの交響曲が思った以上に良い演奏だったのでコレギウム・アウレウム合奏団のアルバムを探していたところ、神保町の「レコード社」の新入荷コーナーでシューベルトの弦楽五重奏曲のアルバムを発見した。コレギウム・アウレウム合奏団の演奏と言うと、僕はなんとなく交響曲や協奏曲のイメージを持っていたのだが、実際はその名の通り三重奏からフルオーケストラ曲まで幅広く「合奏」の録音を残している。

この演奏においても5人の奏者はみな古楽器を持って古楽器の奏法で臨んでいるはずなのだが、ぜんぜんそんな感じがしない。むしろ、今まで聴いた中で最もロマンティックな演奏である。テンポは遅く、リズムは粘っこくて表情は非常に濃い。第1ヴァイオリンを務めているマイアーが終始演奏を引っ張っていて、この人の影響力がすごく大きい。ヴィオラやチェロの音もたっぷりとしたふくよかなもので骨太に音楽を支えている。

こういう人達が古楽器演奏に取り組んだというのが面白いし、演奏そのものも説得力溢れる快演である。名盤。

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 : スターン/オーマンディ

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以前、このアルバムについてはメンデルスゾーンの協奏曲の方を記事にしたが、今日は組み合わせのチャイコフスキーを聴いてみた。メンデルスゾーンの時に書いたことがチャイコフスキーの協奏曲にもほぼ当てはまるが、芳醇で美しいスターンのヴァイオリンはチャイコフスキーでより一層輝いていると感じた。

とにかく全曲を通じてスターンのヴァイオリンの上手いことったらない。まだ30歳代の演奏だけに第1楽章のフィナーレみたいな部分ではなかなかにスピード感溢れる演奏を聴かせてくれるし、第2楽章は情感たっぷり。終楽章は爽快この上ない演奏である。オーマンディ/フィラデルフィア管の伴奏は出ず引っ込まず、スターンに見事に寄り添ってソロを引き立てている。決して主張しないが完璧な伴奏である。ホロヴィッツをして「オーマンディとならいつでも共演する。」と言わせるだけのことはある。

2曲とも僕が初めて買ったレコードがこの演奏だった。それだけに僕の中ではこの演奏が永遠のスタンダード。名曲中の名曲だけに古くはハイフェッツ、オイストラフからチョン・キョンファ、ムターと言った女流、それに最近の名手による名演には事欠かないが、僕は結局この演奏に戻ってきちゃうなあ。58年の録音だけに特にオケの録音には多くを望めないが、スターンの美音は十分に聴こえる。

ブルックナー交響曲第5番 : シャイー

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先日のインバル同様、シャイーもブルックナーとマーラーの交響曲全集を完成させた指揮者の一人だ。しかしながらこの二人のアプローチは全然違う。ものすごく割り切って言うとインバルの音楽は根っからの陰性、対するシャイーの音楽はいつも陽性である。ブルックナーの場合、そういう明るさが時として音楽を軽くしてしまいそうだが、だからといって厳格で重厚なブルックナーばかりではつまらない。たまには元気で陽気なブルックナーも良いではないか。

この交響曲全集は90年代の後半には完成していて何度か買ってみようかと思ったのだが、10枚組で1万円近い価格にちょっと足踏みしていた。それが今年に入って輸入盤が手に入るようになった。こちらは10枚組で3,700円。これなら買いである。

ボックスセットが届いてまず最初に聴いたのが5番。最近のシャイーはゲヴァントハウスに移ってから録音したベートーヴェンの印象が強くて、勝手に快速演奏を想像していたのだが、予想に反して冒頭の低弦によるピチカートはとてもゆっくりだし、その後の展開もオーソドックス。この人の演奏はなんと言うか実に自然体で良い意味で力が抜けている。オーケストラが強奏している時も威圧感はあまりない。音楽の流れが止まることなく、次々とフレーズが沸き出てくるような感じ。どうしてそう感じるのかと思ってよくよく聴いていると、シャイーはほとんどの場合、フレーズの始点にアクセントを置かない。普通の指揮者だったら「エイッ!」って感じに威勢よくタクトを振り下ろす様なところもシャイーの場合はさらっとしている感じ。結果として音から力みが取れて心地良い歌のようになるし、受け取り方によっては迫力不足になる。とても個性的な指揮だと思う。コンセルトヘボウの演奏は素晴らしいし、録音も良い。

ラヴェル「ダフニスとクロエ」全曲 : アンセルメ

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クラシックを聞き始めたばかりの頃、レコードショップにはアンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団のレコードがたくさん並んでいたのだが、なぜかあんまり積極的に聴きたいとは思わなかった。デッカに膨大なレパートリーを残し、「バレエ音楽の神様」とか「オーケストラの魔術師」とか呼ばれていたが、優秀録音という化粧を纏った軽めの指揮者というイメージを持っていた。亡くなる少し前に初来日した時の評判があんまり芳しくなかったからかもしれない。

今までこの人のレコードはサン・サーンスの「オルガン付き」しか持ってなかった。このレコードは発売当時大ベストセラーになったそうだ。確かに押さえるところを押さえた手堅い演奏だとは思ったが、正直、ものすごく感心はしなかった。むしろ超優秀録音ということで買った割にはあまり感動しなかったという残念な気持ちの方が強い。

にもかかわらず、今回「ダフニスとクロエ」を購入したのは新譜でLPがリイシューされていたからという単純な理由である。これも当時デッカ録音の素晴らしさで売っていたと思うが、今となってはかなり古めかしさを感じる。録音そのものは鮮明なので、各楽器の音を正面からクローズアップしたようなマルチ録音が古臭いのかも。

ただし、演奏は思ったよりずっと素晴らしいものだった。テンポは総じてゆっくり。丁寧な演出で表現はとても濃い。この演奏を聴いていると若い頃にストラヴィンスキーやディアギレフに見出された指揮者であることも納得である。日の出からフィナーレまで合唱も含めてとっても聴き応えがある。満足できる一枚だった。
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