ケーブルについて考える

オーディオに興味のない人と会話していて、たまたまオーディオがトピックになったとする。僕はそういう時、相手がもういいと言うまで、あるいは表情でもう十分ですとわかるまで、できるだけ懇切丁寧に説明することにしている。親切心というより、単に聞いてほしいのだ。

たいていの人が驚く事実として、機器本体もさることながら、その機器をつなぐケーブル、あるいは機器を置く台がびっくりするほど高いということがある。

親がオーディオ好きだとか、ジャズ喫茶を経営しているとか、オーディオショップを経営しているなんて場合には物心ついたときからそうした高級品に接していることもあろうが、そうでない場合、おそらく最初のケーブルは付属品で、そのうちなんとなく家電量販店の片隅に置いてあるやたら箱が豪華なケーブルにあこがれ、いつの間にか機器本体の価格より高いようなケーブルをなんとも思わなくなる。慣れというのは恐ろしいものだ。

僕の場合、初めて本当に高額なケーブル体験をしたのは10年前くらいのことだ。ダイナミックオーディオというオーディオショップがある。オーディオ好きならみんな知ってる有名な高級ショップだ。ここでエソテリックのP-70、D-70というCDトランスポート+DACを借りた。言わずと知れたエソテリック最後のCD再生専用機だ。その際、親切なことに試聴機にケーブル一式、電源2本、デジタルケーブル1本、アナログ(RCA)ケーブル1対、すべてエソテリックの高級品がついてきた。それぞれ70万円、80万円の機材にもたまげたが、ケーブル一式でさらに70~80万円するという事実に驚愕し、同時に、なんというか感心した。「価格を形成するのはコストではなく価値である。」という経済の真実を目の当たりにしたからだ。

そこから出てきた音は、とっても良い音だった。すごく鮮烈で刺激的だ。同じCDからそれまで聞こえなかった音が聞こえ、あるいは隠れていた音が解き明かされ、スペキュタクラーな音楽が聞こえてきた。少なくともその時点で僕が使っていた国産高級メーカーのユニバーサルプレーヤーとはまったく鮮度の違う音だった。ここまで鮮度が高いとこの音が嫌いな人もいるだろう。それに聴く人というか聴く部屋を選ぶシステムだと思った。僕は、この音を小さな部屋で聴きたいとは思わない。

この時、エソテリックの方向性はケーブルを含め入口から出口まで完結することでより徹底できていると感じた。高価だし好みも分かれるだろうが、それがメーカーの主張なのだ。

僕はその音が嫌いではなかったが、でも、ケーブルに10万円単位を投入するのは辞めようと思った。ケーブルに色や香りや味を求めるか、伝送手段と割り切るか、で価格はゼロが一つ増えたり二つ増えたりするのだ。そして僕は後者を選ぶ。

世の中には高いケーブルを親の敵のように非難する人もいるが、それは余計なお世話だ。高級ケーブルでメーカーがぼろ儲けするのがけしからんという人もいるが、儲けないメーカーなんてそもそも存在し得ない。もし広告に明らかな嘘が書いてあったら許しがたいと思うが、そもそも音を言葉で表現すること自体相当難しい。その人にとっての「価値」は万人共通ではないのだから、所有していて満足できるなら10万円でも100万円でもいいじゃない。と思う。

そう言いつつ、伝送手段で十分と考える僕が使っているケーブルは今ではすべてネット商品だ。ネット上で買えるケーブルもたくさんあるが、僕はあのプロケーブルの大ファンである。ここのサイトは本当に笑える。でもケーブルは間違いない。

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プロケーブルもshimaケーブルも吉田苑ケーブルもラダーケーブルも試してみた。みんな5000円から1万円くらいの商品だ。高いと言えばまだ高いし、エソテリックのケーブルや名の知れた他のメーカーのケーブルと比べればべらぼうに安い。

比較してどうか?いずれのケーブルも気分の差以上に差はないというのが結論だ。耳が悪い?自分ではそうでもないと思う。だって器材による音の違いはわかるし。でも音楽家が楽器の音色の違いを聞き分けるほど耳が良いとも思えない。このくらいの程度の耳には十二分のクオリティのケーブルであることは間違いない。

ネット通販がなければこうしたショップの商品には一生縁がなかっただろうから、便利な世の中になったと思う。






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