トーンアーム

アナログを始めて5か月。ビクターのQL-A7を皮切りにケンウッドのKP1100、トーレンスのTD321Mk2とプレーヤーを買い替えてきた。QL-A7とKP1100はとても使い勝手が良く音も良いプレーヤーだったが、個人的にはTD321Mk2の何というかしっとりとして落ち着いた雰囲気の音の方が好みだった。

QL-A7とKP1100に同じカートリッジを付けてみてはっきりとした音の違いを感じたからプレーヤーが違えば音も変わることは間違いない。とはいえ、もしもこれらのプレーヤーにTD321Mk2についていたMicroのMA-707Xを装着することができたとしたら、TD321Mk2の方が確実に好みの音かというと定かではない。Rigid Floatを買い足してみてわかったのは同じプレーヤーに同じカートリッジを付けてもアームが違えば音はずいぶん変わることだ。

それに同じアームで鳴らしてもカートリッジによっては上手くならないこともわかった。MA-707Xに付けたAT-F7は価格の割にとても良い音で鳴っていたが、Rigid Floatではパッとしなかった。アームによって調整可能なカートリッジの重さが違うことは知っていたが、カートリッジによって針圧や針の動きやすさが違い、アームにもカートリッジによって得意不得意があること、したがって両者には相性みたいなものがあることはこうした体験でようやくわかってきた。

音楽を聴きながら、針がレコードの溝をなぞっているのを眺めていると不思議な気持ちになる。こんな細い溝にフルオーケストラのすべての楽器の音が詰まっているなんて驚くべきことだ。

ゆらゆらとレコード盤のわずかな反りに合わせて上下するアームを見つめながら、僕の関心はだんだんアームに移ってきた。基本の原理は秤ややじろべえと同じだが、目に見えない細い溝の中のさらに細かい一つ一つの音を取り出す作業を任されたカートリッジができる限り良い仕事をするためにはしっかりとした土台が欠かせない。上下左右に細かく振動するカートリッジをがっちり支えながらレコード盤の上を滑らかに動かなくてはならないという二つの相反する仕事がアームに任されている。

アームを交換する術を知らなかった僕が、ただ置くだけで良いという理由だけで見つけたRigid Floatは、この二つの相反する仕事を達成するために長年にわたって世界中のメーカーが重ねてきた工夫の最新のソリューションを提案していたのだが、ようやくこのことがわかった途端、それまで高い評価を受けてきたアームからはどんな音がするのか知りたくて知りたくてたまらなくなった。

手始めに交換したのが何度か記事を書いたSMEのSeries III。このアームは基本的に軽針圧、ハイコンプライアンスカートリッジを想定して造られていると言われている。この目的のためにユニバーサルシェルを捨て、軽いチタンのアームに非金属のシェルを装備しているのだが、実は錘の重さも針圧も調整次第でほとんどのカートリッジに対応可能であり、フレキシビリティを併せ持っている。とはいえ、手持ちのカートリッジでは一番軽いAT-F7が一番相性が良く、最近追加したStantonの881Sはさらに好印象だった。やはりこれくらいの重さ、柔らかさのカートリッジが得意分野なのだろう。

同じ組み合わせをお持ちの「のす爺ィさん」のブログを運良く発見できたのでTD321Mk2に無事Series IIIを搭載できたが、このプレーヤーにあれこれ違うアームを取り付けるのは簡単ではない。それはそうだ。メーカーに言わせれば、そもそもあれこれアームを交換することが想定外だろう。

複数のアームを同時に搭載することを前提としているプレーヤーは決して珍しくないが、結局、それぞれのアームの固定法とアームの支柱の太さが異なることから対応するアームベースを手に入れなければならず、そこがネックである。なかなか悩ましい思いでいたところ、最近、僕の欲求を満たすのに最適なプレーヤーを見つけた。

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それがMicroのDDX-1000というプレーヤー。このプレーヤー、見た目は確実に好き嫌いが分かれそうだが、僕みたいなアーム取り替えたい病患者にはこれ以上、最適なシステムはない。しかもMicroのプレーヤーの中では例外的に安い。古いこともあるが、Microの代名詞である糸ドライブではなく、一時期のみ販売されていたダイレクトドライブであることも人気がない理由の一つと推察する。

僕が買った個体は金属部分はくすみ、ターンテーブルはシミだらけ。ターンテーブルのシミは掃除しても綺麗になりそうになかったので薄いターンテーブルシートを敷き、すっかりへたっていた脚も交換した。ただ、ありがたいことに回転系だけはしっかり手入れされていて、コントローラーの基盤も修理済だった。

ご覧の通り、このプレーヤーには120度おきに三か所アームを取り付けるための支柱がついていて、そこに当時はMicroが、今は一般の金属加工業者の方が販売している数種類のアームベースを装着する。これで実に簡単に各種アームを取り付けることができる。

取り付けた3つのアームはすべて日本製。3つとも販売開始は70年代だが、入手した個体はいつ頃生産されたものだろうか。アームの仕事を全うするため、それぞれが少しずつ違う工夫を凝らしているが、眺めているとそれは大した問題ではなくなってくる。機能が姿をなした造形が実に美しい。オルトフォンやSMEといったヨーロッパの先達を手本にデザインされたことは間違いないが、日本製には日本製にしかない造りの良さがある。

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もっとも古いSAECのWE-308。いかにも真面目に造りましたという形で操作しても堅牢感は最も高い。このアームのことはまた追って詳しく紹介しようと思う。
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マイクロ精機いいね!

こんばんは。
3点支持のインシュレーター取り付けベース上にアームをマウントするなんて
現在でもこれはグッドデザイン賞ものですね。いやグッドデザイン大賞か。

アームとカートリッジの組み合わせを変えて、そして針を下ろす。この瞬間がオーディオの醍醐味ですよね。結果が良いに越したことはないが、悪くてもその原因が何だったのかを考え検討する(苦悩する)。
ばけぺんさんにとってはこんな苦労も楽しみになっているようですね。(^^)

こりゃあ、また!

凄いプレーヤーに、凄いアームを…! 国産の古典がオンパレードですね、サエクにオーディオ・クラフト、それにFRとは! こんな3本が120度間隔で取り付けてあっては、33.3回転で目がグルグルグルグル・・・。

それにしてもアナログを始めてたった5ヶ月でこんな所まで来てしまわれるとは…末恐ろしや~。
写真とレポート、すごく楽しみにしてまーす。

akifuyu102さん、こんにちは。

こんにちは。コメントありがとうございました。

そうなんですよ。このプレーヤーは当時、かなり斬新なデザインだったと思います。しかもメーカーが3本アーム付けられるようにしようと思ってくれたことに感謝です。海外製のものに同じようなものがあるかどうかわかりませんが、アームとカートリッジをとにかくたくさん試してみたいというニーズは日本ならではのことではないかと思います。

仰るとおり、新しいアームとカートリッジを取り付けて針を下す瞬間はワクワクしてたまりません。それぞれの
組み合わせには相性がありますが、相性が必ずしも良くない場合でも意外と楽しめてます。というか、そんなにクリティカルに聴けるほど耳も良くないので。。。とにかく時間が足りないくらい楽しんでます。

のす爺ィさん、こんにちは。

こんにちは。コメントありがとうございました。

いやはや、自分でもちょっとやり過ぎかと思いつつ走り続けて、とりあえずここまで来てしまいました。

さすが3本ともご名答です。って、のす爺ィさんのご経験からすれば当たり前ですね。120度ずつとはいえ操作を考えると1番地から3番地までなので、どこにどれを付けるかだけでも悩みました。。

Series IIIも含め、どのアームにどのカートリッジがベストマッチかを試すだけでしばらくゆっくり遊べそうです。組み合わせ次第でどのカートリッジも良く鳴るので、新しい発見続きです。

ボチボチとまた稚拙な感想文を載せようと思ってますのでお付き合いいただければ幸いです。
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