ベルリオーズ「幻想交響曲」 : ミュンシュ

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「幻想交響曲」の録音の中でお薦めの演奏を一枚挙げよと質問されたら最も多くの回答を集めそうなのが、このミュンシュ/パリ管の演奏だ。

67年録音だからもうずいぶん古い録音になるが、フランスの威信をかけて創設されたパリ管の記念すべき第一回コンサートもミュンシュ指揮の「幻想交響曲」だし、結局、このアルバムがこのオーケストラの代表作と言えそうである。

この曲に初めて接した頃にはすでに絶対的な定番という評価が確立していたし、何度かCDを買ったり売ったりしたこともあるのだが、今まで手放しで良いと思ったことがなかった。結局、それが売ってしまった原因なのだが、初めてアナログ盤を聴いて印象は一新された。

これだけの名盤になるとCD初期からずっと現役なので複数のマスタリングが存在すると思うが、僕が今まで購入したCDはみな、ミュンシュの情熱的で激しい指揮ぶりを強調したかったのか、いたずらにコントラストがきつく、結果として録音が荒っぽく、刺々しいものばかりだった。最近になってパリ管初演のライブ録音もリリースされたが、それも同様の傾向があって、聴き終えるとほとんど暴力的な印象しか残らない。

今回、入手したアナログ盤は76年にプレスされたごく普通の中古LPだが、ライナーノーツの最後に東芝が新しい技術でカッティングしたと記されている。要するにレコードを作成する際に用いる針と再生する際の針の形状の差により生じる歪を低減するために、その歪を打ち消す補正信号をマスターに追加して作成したということらしい。今となってはそんなことはしないで欲しいと思わないこともないが、演奏効果の強調のためにマスターそのもののバランスを変更するよりはきっとマシだろう。

LPからピックアップされる音はCDのそれと比べて実に自然だ。演奏そのものは同じだから情熱的で激しい演奏であることに変わりはない。テンポや音量は時として大きく変化する。しかし、オーケストラの響きは常に美しく、ヴァイオリンがささくれ立って聴こえることもないし、金管がヒステリックに咆哮を上げることもない。これは実に良い演奏である。高く称賛されるのも宜なるかな。半世紀近く名盤とされてきたことにようやく納得が行った。
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