マーラー交響曲第9番 : インバル

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去年の始めからしばらくアナログばっかり聞いていた時に痛感したのだが、マーラーやブルックナーの大曲をLPで聴くのはけっこう面倒くさい。LPの片面は長くて30分だし、フルオートのプレーヤーでない限り片面が終了したら間髪入れずにプレーヤーを止めて盤を裏返さなければいけない。たったそれだけのことだが、これが毎回となると意外と面倒である。面倒なだけでなく、立ち上がって盤をひっくり返す時に結構な割合で違う曲を聞きたくなったりする。だから、1枚で完結する曲でも表だけで聞くのをやめてしまったり、しまいには片面で終了する曲ばかり聞くようになった。交響曲でいえばハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンの初期のものを聞く頻度がかなり増え、あれだけ大好きだったマーラーやブルックナーの交響曲を聞く頻度は激減した。デジタル時代が訪れなかったらマーラーブームは今ほどではなかったのではないか?と思う。

ESLとPitRacerの導入以降、僕の音楽鑑賞はCDとLPがだいたい6対4くらいになっている。結果として最近はまたマーラーとブルックナーを聞く時間が増えた。どんな機器で聞くかで何を聞くかがこんなに違ってしまうのだから、マーラーやブルックナーのファンと言っても実にいい加減なものだ。音楽の世界がダウンロード音源とポータブルプレーヤーに席巻されるのも良く分かる。世の中の大多数の人々にとって利便性は聞く音楽と同じくらい大切なのだ。自分もその一部だが、最近ではアナログ回帰がある程度進んでいるらしい。だからといってアナログのシェアがデジタルを再び上回ることは絶対ないだろう。CDが登場した時にLPから人が離れた理由は歴然としている。スペースファクターもメンテナンス性も費用対効果もアナログが劣っていることは間違いない。

閑話休題。インバル/フランクフルト放送響のマーラー交響曲全集は、絶賛発売中の都響とのチクルスの影に隠れてしまった感があるが、僕は誠に遅ればせながら4番、5番と聞いてみて実に優れた演奏であると感じている。一番好きな9番については間違いなく聞いたことがあるはずなのだが、なぜか全く記憶に残っていなかった。そういえばずいぶん前におそらく初出の中古CDを見つけて買ったと思って収納ケースを探してみるとあったあった。87年に発売された2枚組のCD、定価6,000円とある。まだまだCDが十分高価だった時代の代物だ。

早速聞いてみたのだが、以前に聴いた時になぜ印象に残らなかったのかが不思議なほど良い演奏である。オーケストラはべらぼうに上手いし、造形は完璧。最初から最後までひんやりとした感じの音色も良い。基本的にマイク2本で収録された録音がまた実に優れていて、スピーカーの奥に音像が広がる。それでいて部分部分、強調されるべき楽器の音も鮮明。優秀なエンジニアの方の手によるものなのだろう。見事な出来だと思う。

終楽章を聞いて、個人的にこの演奏の記憶がない理由がわかった。以前の僕の趣味から言うと終楽章のテンポが速すぎて、きっと物足りなかったのだ。昔はじっくりとしたテンポで切々とした演奏が好きだった。そうした演奏が好みであることに変わりはないが、今日聴いてみると確かにテンポは速いものの、緊張感に満ちたこの演奏も決して悪くない。バルビローリの演奏が好きになったと同様に好みが変わってきたのだろうか。あるいは、当時聴いた時よりも機材のグレードが高い分、演奏の意図やその場の空気といったものがようやく理解できたのかもしれない。いずれにしても好演だと思う。
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なるほど

こんばんは。

なるほど!と思いながらブログを読ませていただきました。

私はジャズがメインですが どちらかと言うと短い曲が多いです。それ故 アナログの使い勝手等の不便さをそれほど意識しませんでした。

クラッシックは なるほど 短編小説ではなく ある種 物語が多いですね。
途中で盤面を裏返したり あたふたするのは興ざめします。

曲の長さに対する機器、メディア(CDやLPなど)の利便性など自分の聴くジャンルでの狭い了見の中でしか考えず CDを捨ててアナログに走った事を自分のブログでも堂々と宣言し それが素晴らしいというニュアンスで書いた事を反省しております。

話は少し変わりますが
 >最初から最後までひんやりとした感じの音色も良い。

こういう表現は中々出来ないですね。素晴らしい感性だと思いました。

キタサン、こんばんは。

こんばんは。コメントありがとうございました。

ジャズファンの方にアナログファンの方が多そうなのはLPの音の良さやアナログ独特の音の良さがメインの理由だと思いますし、クラシックが好きな人にとってはCDのSN比の良さは大きなメリットだと思うのですが、加えてメディアの利便性はかなりの影響があるのではと思いました。アナログを始めて、ものぐさな私はジャズを聴く頻度も増えました。

> 曲の長さに対する機器、メディア(CDやLPなど)の利便性など自分の聴くジャンルでの狭い了見の中でしか考えず CDを捨ててアナログに走った事を自分のブログでも堂々と宣言し それが素晴らしいというニュアンスで書いた事を反省しております。

キタサンのブログをいつも読ませてもらっていますが、私はそんな風に感じたことは一度もないのでなんら気にされる必要ないと思いますよ。

> 話は少し変わりますが
>  >最初から最後までひんやりとした感じの音色も良い。
> こういう表現は中々出来ないですね。素晴らしい感性だと思いました。

お褒めいただきありがとうございます。ブログを始めて以来、音楽を聴いた感想を文章で記すことの難しさを毎日感じており、恥ずかしい限りです。音楽やオーディオ評論家の方々の表現力は凄いですね。
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