ベートーヴェン ピアノトリオ「大公」 : スーク・トリオ

スークトリオ大公

お正月の福袋に入っていたレコードの中で最も頻繁に聴いているのはロジェヴェンスキーのチャイコフスキー全集、その次がこのスーク・トリオによる「大公」トリオである。

LPの帯には「レコード派のあなたに、デンオン最後のアナログ・ディスク」と書かれている。オリジナルの録音は75年だが、プレスは93年。CDが完全に普及してレコードがまさに風前の灯だった頃に発売されたLPである。ちなみにこのシリーズのほかのラインアップが裏側に記載されており、インバルのマーラー5番やブロムシュテットの「英雄の生涯」も並んでいる。両方とも欲しいなあ。

スーク・トリオの「大公」は村上春樹の「海辺のカフカ」の中で取り上げられていて、そこでは登場人物の一人がこの演奏のことを「美しくバランスがとれていて、緑の草むらをわたる風のような匂いがする」と評している。およそ凡人には発想できないような表現である。正直言うとそう言われても実際匂いは連想できないのだが、美しくバランスが取れている演奏であることは間違いない。透明で温かい演奏だ。三人がこの曲を慈しむように演奏しているさまが鮮明に録音されている。

この録音はチェコのルチャニーという町にある教会で録音されている。ライナーノーツによればここはスメタナ四重奏団の別荘が近くにあるらしい。草創期のPCM録音だが実に良い音だ。伸びやかでホールトーンも自然。演奏と録音の方向性がぴったり合っていると思う。こういう録音をLPで聴くと「デジタル録音だから・・・」とか「アナログ・ディスクだから・・・」とかいう議論はほとほと意味がないと思う。方法論はともかく、良いものは良いのだ。
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スークトリオ

ばけぺんさん、こんばんは
「緑の草むらをわたる風のような匂いがする」は本当に印象的な一節でした。とてもいい演奏ですよね。車に入れていて時々聴いていますが、村上氏のイメージどおり春、夏に似合う曲かと思っています。

こんばんは。

sankichi1689さん、こんばんは。コメントありがとうございました。返信遅くなりました。

この曲に限らず、村上春樹の小説は音楽の使い方が本当に素晴らしいですね。この曲も小説の重要なパートだと思います。スーク・トリオの演奏、録音ともどもすごく良いので、最近、このLPに針を落とすことが多いです。心が落ち着いてよく眠れます。
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