ブルックナー交響曲第5番 : チェリビダッケ

ブルックナー交響曲第5番。チェリビダッケ/ミュンヘンフィルが1986年に来日した時の録音である。手持ちはSACDシングルレイヤー盤。

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この演奏はオープニングシーズンのサントリーホールで録音されたとのことで、ライナーノーツを読みながら、サントリーホールのオープンが1986年だったことにまずちょっと感慨深い思いだ。バブル経済、日本がどこまでも成長するのではないかという幻想の真っ最中だ。

あの頃、世の中は浮かれていたと思うし、いろいろな歪みが生じていたのは事実だと思うが、サントリーホールのような、勢いのない時代にはちょっと作れそうにないものが後世に残ったことは素晴らしいことだ。バブル時代には大勢の日本人が「日本ならできる。何でもできる。」と信じていた。もちろん金もあった。よし、世界一のコンサートホールを造ってやると思って本当に造ってしまった。オープニングの年からこの録音を聴く限り、とても良いホールエコーだ。とにかく「日本はダメだ。」とネガティブに発想する時代よりもずっと良かった。

当時、貧乏学生だった自分にはバブルはむしろ生活しづらいだけだった。が、不思議とつまらなかった記憶はない。もちろん若かったこともあるだろうが、回り中、楽しいことに囲まれていると自分が楽しいことを実際には体験しなくてもなんだか明るい気持ちになるものだ。

なんだかすっかり、演奏の話ではなくなってしまった。さて、この演奏が実際に行われた時、自分がサントリーホールに行って演奏会を聴くなんてことはとてもできなかった(クラシックコンサートのチケットは今もそうだが、学生にはとても買えない値段だから。)し、もちろんインターネットもないわけだが、それでもチェリビダッケ来るというのは話題になっていたと思う。

録音を極端に嫌ったチェリビダッケは幻の指揮者とか伝説の指揮者とか言われていた。死後、かなりの数の録音がリリースされたことで最近ではその演奏に接することも容易になり、ようやく最近になって、彼の演奏を聴き始めたところだ。

輸入盤で格安のボックスセットが入手できるので何曲か演奏を聴いたが、今のところ僕が接した演奏はすべて判をついたようにテンポが遅い。まあ、それがチェリビダッケの特徴のようだが、おそらく初めて聴いたら誰もがびっくりするようなスローテンポだ。しかし、チェリビダッケの場合にはたとえば晩年のベームの演奏とはまったく違い、遅くても緊張感が薄れることはまずない。不思議なのだが、テンポは遅いのにフレーズが遅いと感じることがないのだ。あるいはアタックが緩いと感じることもない。

察するに、この人の指揮で演奏するのはオーケストラにとってかなりの重労働だろうと思う。なんというかすべての音を普通の指揮者の場合の1.2倍に拡大して最後まで演奏しなくてはならないのだから、特に管楽器奏者の負担はすごそうだ。残っている録音はすべてライブだと思うが、それでも金管が破綻していることは非常にレアだ。オケも優秀なんだと思う。

チェリビダッケの演奏がダメだという人は徹底的にダメだと思うが、僕はほぼ全面的に好きだ。とはいえ、もちろん曲想とものすごく合うと思う演奏、そうでもない演奏というのはある。

このブルックナーはその中でもとびきりチェリビダッケ節にあう曲だと思うし、指揮者の解釈も本当に素晴らしい。荘厳な建築物が組み立てられていくのを見るような演奏だ。そして最後のフーガで建物が完成して圧倒される。この後、93年に録音された同じミュンヘンフィルとの演奏、こちらはホームグラウンドでのライブ録音も素晴らしい。どっちがというよりもどっちも聴いて欲しいと思う。

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