ブルックナー 交響曲第5番 : クナッパーツブッシュ

昨日の夜、チェリビダッケを聴いたあとだけにこのクナッパーツブッシュを聴くとその解釈のあまりにも大きな違いにあらためて驚く。

活躍した年代もあり、クナッパーツブッシュの演奏もあまりたくさんの録音が残されていない。少なくとも良い音で残っている録音は多くないと思う。

手持ちのCDは2002年にユニバーサルが販売した1000円シリーズ。国内盤である。CDジャケット裏面に「デッカのオリジナル・マスターテープを使用している」旨記載がある。そうは言ってももちろんデジタル化する際にリマスタリングは経ているだろう。

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1956年という録音年を考えると贅沢は言えない。少なくとも聴き取りづらいような録音ではないし、きちんとステレオ感もある。ただ、ダイナミックレンジが狭く、小音量時は比較的鮮明なのだが、フルオーケストラの強奏時にまったく迫力がない。演奏が良いだけに残念である。

知られているとおり、この演奏は交響曲第5番の初演時にブルックナーの弟子であるシャルケによって改訂されたシャルケ版を使用している。第4楽章は演奏時間が3/4くらいの短さになっているし、シンバルが追加されていたり相当違いを感じるが、それ以外にも演奏開始直後からちょくちょく細かい差異があるようだ。たびたび違和感を感じながら聴いた。

では、この改訂版はダメか、というと、それはまた別問題だと思う。ほとんど哲学的問題とも感じる。改訂版は原典版をよりわかりやすくすることがテーマなんだろう。シンバルを追加して演奏効果を強調するということもその一環だと思う。

しかし、「わかりやすい」と「内容が浅い」とは紙一重のことも多々ある。演奏がイマイチの場合、ちゃちな曲に聴こえてしまうだろうが、このクナッパーツブッシュの演奏で聴けば、これはこれで一つの立派な曲であることに間違いない。他方、作曲者の意図とのずれを問題視する方にはこの改訂版はとうてい受け入れられるものではないだろうとも思う。

演奏だが、とにかく第一楽章導入部からチェリビダッケとは正反対の意味で驚かされる。ベースの刻むテンポが早いのだ。ものすごく早い。主題以降のテンポは少し早め程度だが、全体に早いことは変わらず、第二楽章も相当早い。遅い演奏の代表であるチェリビダッケの演奏と比較すると時間は半分くらいしかかからない。では、音楽が軽いかというとそれはない。早い分、全体像が掴みやすいとも言える。

この録音に聴くウイーンフィルの演奏は(僕には)いつもと同じようにうまいのか下手なのか良くわからないものだ。時々オーケストラ全体の縦のラインが合わないし、録音のせいもあって、低弦やティンパニの音はもこもこしてて良く聞き取れない。しかし、特に弦の音はいかにもウイーンフィルの音がする。クナッパーツブッシュもウイーンフィルも練習が嫌いということだから、この曲の録音をしたときも練習しなかったのだろう。そういう感じの演奏だ。

さて、約1時間のへたうまな演奏(といったら失礼か。)を聴き終えて思うのは、技術レベルと音楽のインパクトは比例しないということだ。たいへん印象的な演奏である。この演奏はスタジオ録音だが、両者のライブ演奏をその場で聴きたいと叶わない思いが募る。

せめて朝比奈やヴァントやチェリビダッケの録音と同じレベルの鮮明な録音でこの演奏を聴けたらどんなに良いだろうか・・・。
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