マーラー交響曲第2番「復活」 : キャプラン

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僕がギルバート・キャプランの名を知ったのは高校生の時だった。その時目にした記事には「復活」しか指揮をしない彼が日本に招かれて新日フィルを指揮すると書かれていた。クラシックを聴くようになって、楽器もろくに演奏できないのにいつかオーケストラを指揮してみたいと思っていた僕にとって、キャプランは大スターである。

大学生の時にはロンドン響を振った「復活」の録音がリリースされた。これまた痺れる話である。私財をはたいてオケを買い上げて演奏するだけでも凄いことなのに、ついにそれが評判となって世界的オーケストラとレコード録音するなんて!この演奏を聴きながら「いつかは自分も!」と密かに思った人は多いに違いない。

最近、知ったのだが、ロンドン響との「復活」は古今東西すべてのマーラー録音の中で最もたくさん売れたらしい。話題性があるとはいえ快挙である。しかもそこで終わらず、共演するオーケストラごとに微妙に違うスコアを見て自筆譜に立ち返り、ついにはキャプラン改訂版を発行してしまうのだから、この人の探求心と行動力は本当に素晴らしい。

ウィーン・フィルとの「復活」はこの改訂版を使用して2002年に録音されている。今度はウィーン・フィルである。いよいよ男の夢が現実になったという感じではないか。

実はこの演奏、アメリカ駐在から帰ってすぐにCDを買ったのだが、正直言うとその時はあんまりピンと来なかった。ショルティやメータの演奏に代表される明快でオーディオ的快感に富んだ演奏が好きなこともあって、じっくりとしたテンポでどちらかと言うと地味なこの演奏の良さがわからなかったのだ。買ったはずのCDもいつの間にか見当たらなくなってしまった(笑)。

キャプランさんは今年の元旦に74歳で亡くなった。ということを知ったのは3月になってからである。キャプランさんの名前もここ10年ばかり忘れていたが、もう一度聴いてみようと思って再度CDを買った。

第一楽章冒頭、弦楽器の斉奏からそれはそれは丁寧な演奏である。20年間研究して自ら改訂したスコアから一滴の水も漏らさず全部汲み上げるぞという思いを感じる演奏である。ウィーン・フィルは著名な指揮者に対しても簡単に歩み寄らないオーケストラという印象が強いが、この演奏を聞いて僕は、仮に指揮者の技術が足りなくても自分達が支えるという思いを感じた。音楽家、演奏家としてのキャリアがどれだけ違っていても最高の演奏を作り出そうという思いは同じ、そんなことを感じる演奏だ。

フィナーレを聞き終えた瞬間、キャプランさんがこの時、どれだけの達成感に満ち溢れていただろうかと想像して軽く震えた。本気で物事に取り組めばとてつもないことが実現できるんだなぁ。感無量である。
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おはようございます

またユニークな指揮者が亡くなりましたね。私はまゆつばものとして敬遠してきたのですが、彼の真摯な姿勢に肯定的な意見を持つ方が多くて驚くとともに、少し反省です。VPOとの後にも3回目の録音をされているようですね。
ちなみに私は死去の報をいつも読んでるこのブロガーさんの記事で知りました。
http://monzen-t.blog.so-net.ne.jp/2016-01-30

おはようございます。

sankichi1689さん、おはようございます。コメントありがとうございました。

キャプランさんの努力は認めつつ、僕もどこかで彼の指揮には懐疑的だったのですが、今回、あらためてVPOとの「復活」を聴いてみたところ、純粋にとても良い演奏だなあと感じました。この曲に対する思い入れは並大抵ではないですし、それを感じられる演奏だと思います。

最近になって数年前に小編成版を録音したことを知りました。こちらも機会があれば聴いてみようと思います。
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