ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 : グールド

gouldemperor.jpg

グールドがソロを務めたピアノ協奏曲と言うと、ブラームスのピアノ協奏曲第1番の演奏で指揮者のバーンスタインが演奏前にソリストとテンポの解釈で合わなかったことを釈明したという逸話が有名だ。このライブ演奏はCDにもなっているのだが、モノラル録音ということもあって入手していない。最近、グールドの録音をDSDリマスタリングしたボックスセットを購入したのだがこの演奏は含まれていなかった。。

このボックスセット、全部で81枚もCDが入っているのでどれを聴こうかと迷っていたところ「皇帝」のCDを発見。ベートーヴェンのピアノ協奏曲も2番以降はバーンスタインと録音していたが、4番収録後にブラームスのコンサートがあったこともあってかパートナーはバーンスタインではなくストコフスキーである。

グールドが独奏、ストコフスキーが伴奏という個性派同士の組合せは聴く前から何か特別な演奏を期待してしまうが、果たしてその期待は冒頭のオーケストラ一発ジャーンの後のカデンツァで早くも適えられる。ふつう滑らかに低音から高音に上がっていくピアノがふっとため息をつきながら徐々に進んでいくのである。この演奏を聴くまでこういう解釈があるとは思いもよらなかった。とてもロマンティックである。冒頭からグールドは歌っている。そんなピアニストを支えるオーケストラはどうかと言うと心もち低弦を強調しながら堂々たる演奏。ストコフスキーが創設したアメリカ交響楽団の音は残念ながら重みが足りず、管楽器もどこか物足りないのだが、ピアニストとの息は合っている。

第2楽章はこのコンビの方向性にぴったりの音楽でとても素敵な演奏である。第1楽章からそうだが、演奏は総じてゆっくりとしたテンポで進む。グールドは一音一音を慈しむように紡いでいく。ピアノの音が良い。終楽章はこの演奏の中に限れば最もふつうの演奏であるが、グールドのピアノがキラキラと輝いていて何でもないようなパッセージにもハッとするような瞬間がある。テンポは緩やかで終始、余裕を感じさせる独奏だ。それにしても録音時ストコフスキーは84歳だが、年齢から来る緩みのようなものはまったくない。それもまた見事である。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ばけぺん

Author:ばけぺん

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
Since 3/28/2013
検索フォーム
リンク