ブルックナー交響曲第4番 : チェリビダッケ

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80年代の終わりくらいまでチェリビダッケは幻の指揮者だった。録音嫌いなので正規録音はほとんどない。その演奏を聴くためには実演に触れるしかないが、海外は夢のまた夢、日本に来た時にも学生だった僕にはまったく手が届かなかった。ようやくこの人の演奏が聴けるようになったのはチェリビダッケが亡くなった後のことである。家族の了承が得られたということだろうが、結構な数の録音がリリースされた。しばらくするとだんだんCDというメディアそのものの人気が無くなってきて一昔前だったら考えられないようなお買い得パッケージのボックスセットが流通するようになった。チェリビダッケのブルックナー選集はそうした中でも最たるものの一つである。12枚組のセットがたしか3,000円くらいだった。演奏が良いだけでなく、80年代終わりの録音ですこぶる音も良い。ベストセラーになったのも納得である。

ボックスセットに収められた3番から9番までの交響曲の中でもっとも聴く頻度が低いのが4番と7番。クラシックを聴き始めた頃にはメジャーだった二つの曲だが、ブルックナーにのめりこむにつれてだんだん聞かなくなってしまった。4番を聴くのはショルティの全集を聴いて以来かもしれない。

チェリビダッケの演奏自体、久しぶりに聴いたが、相変わらずすごい熱量だ。時間のない時に聞くことは間違ってもお奨めしない。冒頭から終始大胆に遅いテンポだが、特に終楽章は猛烈に長い。この楽章だけで27分かかる。しかし、圧倒的である。以前、ズヴェーデンやショルティの演奏を褒めたが、どちらもこの演奏に比べれば実に普通の演奏だと感じる。

前にもチェリビダッケの演奏について書いたが、この人の演奏はテンポが遅くても緩かったり間延びしたりすることはない。常に緊張感が漲っているし、音楽には弾力がある。この人にしかできない不思議なフレージングである。この曲の演奏ではそれに加えて他の指揮者にはない独特の解釈が聞ける。弦楽器の音は終始美しいが、いつしか旋律と対旋律があたかも独立したように動き出したりそれが交じり合ったりして今まで(少なくとも僕は)聞いたことのない音楽を紡ぎ出す。フィナーレでは弦がずっとリズムを下支えして果てしなく息の長いクライマックスを迎えていくが、これは素晴らしい効果を上げていると思った。これは名盤である。
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チェリビダッケのブル4終楽章は現実の時の流れから分け隔てられたような唯一無二の世界で、ときどき聴きたくなります

通りすがりさん

コメントありがとうございます。ほんとうにこの解釈は唯一無二ですね!僕もこれから折に触れて聴くと思います。
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