HITnRUN Phase One : Prince

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プリンスが昨年4月に急死したことで最後のアルバムとなってしまった「HIT n RUN」。そのPhase One、冒頭の曲は過去の名曲である「1999」とか「Purple Rain」の引用で始まる。単なる偶然であろうが、あたかも死を予感していたような始まり方である。

ウイキペディアによればこれはプリンスの38枚目のスタジオ録音アルバムである。プリンスはいつも膨大な数のストック曲を持っていてこの先何十枚でもアルバムが作れると言われていたが、結局、それらの曲が日の目を見ることはない。

個人的には2014年の「Plectrumelectrum」を買ったのが久々のプリンスだったが、どっちにしても2010年前後はネット配信による海賊コピーに対する抗議としてアルバムを出していない。ネット音楽の普及、ハイレゾ化に歩調を合わせたアナログリバイバルは考えてみればポップアーティスト(とレコード会社)によるパッケージメディア戦略の意味合いもあるのかもしれない。デジタルデータのまとめ方の違いでしかないCDは売れなくてもレコードは音楽を手に入れる以上の目的で買うユーザーがいるだろう。

「Plectrumelectrum」と続く「Art Official Age」がレコードで販売され、僕は嬉々としてそれを買ったわけだが、「HIT n RUN」はデータ配信がCD販売に先行し、レコードは今のところない。それ以前も既存の音楽チャネルを無視して特定のショップだけで独占販売させたり、新聞のおまけとして楽曲を提供したりいろいろ試してきたプリンスだが、それがどこに向かう予定だったのかも今となってはわからなくなってしまった。

90年代にリリースされたアルバム以降、プリンスの録音に対するクリティックの評価は必ずしも高くない。が、そんなことは関係なくこのアルバムに聴く音楽はファンキーでノリの良いまんまプリンスである。望むらくはレコード化して欲しいなあ。

ベートーヴェン交響曲第9番「合唱」 : ケンペ

出張中、機内で何曲かクラシックを聴いたのだが、その中でなかなかの演奏と思ったのがケンペ/ミュンヘン・フィルの演奏する「合唱付き」。行きと帰りの二度聴いたのだが、最初に聴いた時には演奏者のクレジットがどこを見ても見つからず、てっきり新しい録音かと思っていた。帰りのフライトでケンペ指揮と判明。

ケンペの指揮はR・シュトラウスにせよ、ブルックナーにせよ、ぱっと聞いてハッとするようなものではないが、良く言われるような「堅実」とか「地味」という形容も当たらないと思う。このベートーヴェンもそうだったが、音楽が盛り上がるに連れ、この人の指揮はだんだん熱さを増してくる。緩急のつけ方が非常に巧みでぐいぐいと引き込まれる。

調べてみると1973年の録音のようである。国内盤は昨年の秋にリニューアルリリースされているので、これを聴いたに違いない。良い演奏である。

ハイドン交響曲第92番「オックスフォード」 : 朝比奈

朝比奈ハイドン

長い冬休み開け、二日頑張れば三連休のはずが昨日今日と休日出勤。。二日とも半日勤務だったとはいえ、ちと残念。それでも明日がまだお休みで良かった。このところレコードを聴く時間が長く、CDはあまり聴いていなかったのだが、今日、帰宅すると朝比奈隆さんがベルリン・ドイツ響を振ったハイドンのCDが届いていたのでさっそく聴いてみた。

朝比奈隆さんは晩年ほとんどハイドンを演奏しなかったので全然イメージにないが、HMVの解説によれば若い頃は交響曲全曲演奏をもくろんだことがあるらしい。どういう経緯かわからないが、放送用にセッション録音されたのは実に幸甚。日本のオーケストラが悪いと思っているわけではないが、この演奏を聴くともっとたくさん海外の実力あるオケで録音していたらなあという思いを抱かざるを得ない。

92番と99番の組合せだが、一言で言って両方とも実に素晴らしい演奏である。70年代の放送用録音と聞いてどんなものかと思ったが、録音も文句なし。プラセボ効果か、あたかも良好な電波環境でFM放送を聴いているような感じである(笑)。

ヨッフムのハイドンも格調高く立派と思ったが、朝比奈さんの演奏もそれに負けず劣らず立派である。加えて音楽が暖かく、愉しい。もちろんオケは万全。実はこのCDが発売された時に絶賛されていたのは知っていたのだが、評論家のバイアスを疑ってすぐに買わなかった。しかし、これは本当に良い演奏である。名盤。

p.s. 最後にドイツ語でインタビューが収録されているが訳がないのでちんぷんかんぷん。日本語訳を付けてほしい。。

ショパン ピアノ協奏曲第1番 : ブレハッチ

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考えてみれば今年はずいぶん長く冬休みをいただいたのだが、休みが過ぎ去るのはとても速い。始まりがあれば必ず終わりがあるということで、明日から仕事始めである。百貨店やスーパーに品物を納品する仕事をする従兄弟は正月休みは2日しかないらしい。銀行員の従兄弟もお休みは4日間だけ。それから比べると僕なんて小学生並みに長い冬休みが取れて幸せなのだが、そうは言っても休みの終わりはいつも感傷的な気分になる。大袈裟に言えば。。

こんな悲しい気持ちを癒すためにはこの曲が良いと思って選んだのがショパンのピアノ協奏曲第1番。ピアノはブレハッチ、伴奏はセムコフ指揮のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団。オケこそオランダだが、ピアニストも指揮者もポーランド出身のご当地音楽である。

このCD、2年前にポーランドに出張した際、現地で記念にいただいたもの。外国人に日本と聞いて思い浮かべるものと質問すると日本人にとっては意外な答えだったりするが、ポーランドと聞かれて何を思い浮かべるであろうか。僕が思いつくものと言えばショパンくらいだったので、このCDをもらって「やっぱりね。」と思ったのだが、実際、ワルシャワの街を歩いてみるとそれ以上に第二次世界大戦の爪痕をあちこちに感じて複雑な思いだった。もちろん、ワルシャワの空港にもその名を冠するショパンはポーランドの代名詞であることに間違いはないのだが。

恥ずかしながらこのCDをもらった時に僕はブレハッチもセムコフもまったく知らなかった。それどころか名前も読めなかった(アルファベットだとBlechacz)。わざわざ現地法人が用意したのだからポーランド出身のピアニストなのだろうとは思ったが、ショパンコンクールで優勝と同時に各賞を総なめした人であると知ったのはつい最近のことである。考えてみれば、DGからCDがリリースされているのだから只者のはずがない。

この人、85年生まれということなので、まだ30台になったばかり。録音は2009年なので24歳の時である。それにしては大人の音楽だ。テンポも落ち着いているし、音色も優しい。心に沁み込むような癒し系のピアノである。同時に、終楽章では抜群のリズム感覚と緩急自在のテクニックが聴ける。セムコフという指揮者もこのCDで初めて聴くが、コンセルトヘボウとともにピアニストにぴったりと寄り添った良い演奏を聴かせてくれる。ピアノを中央にどんと構えた録音でオケが重すぎず軽すぎず良い塩梅で収録されている。良いCDである。

ブルックナー交響曲第8番 : ヨッフム

ヨッフムボックス

ヨッフムのボックスセットからブルックナーの8番を聴いた。ちなみにこのジャケット写真はワーナーのクレジットだが僕が持っているボックスセットはEMI名義である。収録曲もCDの枚数も一緒なので、単に販売元の変更であって内容は同じだろう。ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーの交響曲全集+αの内容である。

以前も記事にしたのだが、僕が以前持っていたこの曲のCDは信じられないほど音の悪いものだった。あんまり音が悪かったのでドレスデンとの全集は長い間聴く気にもならなかった。ところがこのボックスセットで聴く限り、最新録音のような鮮明さはないものの、視聴になんの問題もない。一体、あれはなんだったのだろうか。こうなると、むしろ捨ててしまったのが惜しまれる。

この演奏の感想を一言で言うと、非常に硬派なブルックナーである。ふだん、クラシックの演奏に男性的も女性的もないと思っているのだが、この演奏からは確かにごつごつとした男性的な肌触りを感じる。ジャケット写真に写る柔和な笑顔の好々爺からこういう音楽が紡ぎ出されるのはちょっとクールである。

ヨッフムのブルックナーと言うとアッチェレランドが印象に残るが、この演奏でも随所で強烈なアッチェレランドを聴かせる。ヨッフムの指揮に慣れているはずのシュターツカペレ・ドレスデンですらついて行くのがやっとという感じで金管はあちこちで破綻している。これがスタジオ録音なのだからある意味すごい。これは、今日では商業録音として成立しないかもしれないなあ。それでも聴き終えると大いに感動する。良い演奏である。

マーラー交響曲第1番 : ジュリーニ

ジュリーニシカゴイヤーズ

このところマーラーは専ら「巨人」を聴いている。夜、ちょっと一曲という時に聴けるのが「巨人」か4番しかないのである夜テンシュテットの「巨人」を聴いたらこれが存外に良かった。そもそもここ数年、ほとんど「巨人」を聴いていなかったので、これを機に棚にあるLPやCDを一枚ずつ聴いてみようと思う。

テンシュテットに続いて聴いたワルターのLPも素朴でなかなか良かった。今日、次の1枚に選んだのがジュリーニ/シカゴ響の演奏。ショルティに招かれて首席客演指揮者を務めていた当時、71年の録音である。

デジタル録音とアナログ録音、デッカとEMI、シンフォニー・ホールとメディナテンプルと録音に大きな違いがあるとはいえ、同じシカゴ響を振ってもショルティとジュリーニの作り出す音楽があまりにも違うのがまず面白い。お互い重なるところがないのでショルティはジュリーニを招いたというのも納得である。

ジュリーニらしくスローなペースの演奏だ。バーンスタインともマゼールとも種類の異なる粘着質なフレージングである。寺院で収録されたEMI録音なので(?)一音一音鮮明でもなければ分離も好ましくないが、それぞれの楽器群が塊となって融合したり対抗したり実に微妙なバランスでブレンドされていて結果は素晴らしい。特に終楽章は良かった。ショルティ盤では金管楽器に抑圧されて目立たない弦楽器がジュリーニのバトンの下ではより活躍していて効果的である。

シューマン交響曲第2番 : ムーティ

ムーティボックス

クレンペラーの後任としてフィルハーモニア管の首席指揮者になったのを皮切りとして、オーマンディに才能を認められてフィラデルフィア管の音楽監督に就任し、アバドの後任としてスカラ座を成長させ、2010年からは長年ラブ・コールを送られていたシカゴ響の音楽監督を務め、ウィーン・フィルが現在おそらく最も敬意をもって接する指揮者。リッカルド・ムーティの経歴をみると実はこの人こそが20世紀後半最大の指揮者ではないかとすら感じる。

そんな大指揮者にしては日本でのムーティの評価はパッとしない。イタリアものとモーツァルトが得意なオペラ指揮者くらいの評価と言っては言い過ぎかもしれないが、交響曲の演奏でムーティの名前が挙がることは少ないと感じる。

そんなムーティがウィーン・フィル、フィラデルフィア管を振ったモーツァルト、シューマン、ブラームスの交響曲演奏をまとめたボックスセットを購入した。レーベルがデッカになっているのが紛らわしいのだが、音源はフィリップスである。

シューマンの交響曲第2番を取り上げるのはこの曲が特に良かったからではない。ボックスセットの最初、モーツァルトからすごく良くて、そのままシューマンの1番と4番を聴いたが、これも良かった。次のCDが2番と3番だが、2番も良かったので「これはいいわ」と思ってようやく記事にしただけである。

どの曲も一言で言うと生命力に溢れた演奏である。テンポは概して速く、疾風怒濤という感じ。そしてどの曲をとっても音色がすごく明るい。ネアカである。いじいじしたところや薄暗さとは無縁である。このあたり、わが国でこの人がもう一つ評価が高くならない(と個人的に感じる。)理由であろうか。

ウィキペディアによればチェリダッケが認めた指揮者はムーティだけらしい。アバドとは仲が良くなかったようだが、アバドの代わりにムーティがBPOの音楽監督になっていたらまたずいぶん違っていただろう。とにかく、このボックスセットはお買い得だと思う。

シベリウス交響曲第3番 : マゼール

シベリウス3マゼール

マゼールの録音には時々、ハッとするほど素晴らしいものがあるが、正直、その頻度はそれほど高くない。それでも嵌った時の輝きは(個人的に)他の指揮者と違うレベルである。そういう大穴的要素があるのでついついいろいろマゼールのアルバムを集めてしまう。

今日、ちょっと久しぶりにそういうキラキラと光るような演奏を見つけた。ピッツバーグ響と録音したシベリウスの交響曲第3番である。マゼールのシベリウスは古いウィーン・フィルとの全集の方が評価されているようだが、それはそれ、これはこれ、で、僕はマゼールがピッツバーグ響と組んだ録音は押しなべて嫌いではない。

シベリウスの3番は最近まで聴かなかった曲なのでこの演奏も初めて聴いたのだが、表面的にはサラッとした流れの演奏でありながら、これはマゼール節全開の実に面白い演奏だ。冒頭の低弦しかり、第二主題のヴァイオリンしかり、普通スポットライトが当たりそうな場所は基本スルー、快速テンポのはずがいつの間にか相当スローになっていたり、こっそり得意のタメが入っていたりと気が抜けない。圧倒的に良いのは終楽章のアレグロから切れ目なく続くフィナーレの部分。

終わってからついついもう一度聴き直したくらい、僕的にはヒットの演奏だった。(いかにもシベリウスに合いそうな)抜けの良い透き通るようなタイプの録音ではないが、音は良い。

ブラームス交響曲第1番 : メータ

メータブラームスボックス

メータがNYP時代に録音したブラームスの交響曲と協奏曲をまとめた8枚組のボックスセット。メータのブラームスについては以前、スターンと共演したヴァイオリン協奏曲について書いたことがあるが、バレンボイムと組んだピアノ協奏曲同様、ソリストがメインの協奏曲ならまだしも、交響曲を今、メータ/NYPで聴きたいと思う人はレアだろう。しかし、ロサンゼルスでの成功を引っ下げてNYに凱旋した頃のメータである。当時はそれなりにスポットライトを浴びての登場だったに違いない。

メータはこれよりちょっと前にVPOと1番だけを録音していて、そのあおりかNYPと演奏したこの演奏は録音後、LP化もCD化もされなかったらしい。ちょっとした秘蔵の演奏、お宝である。僕の場合、それを目的に買ったのではなく、買ってからそれを知っただけなのだが。

そういったこともあり、また、スターンと組んだブラームスのヴァイオリン協奏曲はお気に入りの一つなので、それなりの期待をもって聴いたのだが、結論から言うと「う~む」という感じであった。と言っても決して悪い演奏ではない。まだ40歳そこそこの若者指揮者とは思えないじっくりたっぷりとした演奏である。ところどころ大き目の緩急や強弱でメリハリをつけた、古典派ではなくロマン派の文脈の味付け。ただ、どうも少しぬるいかなあ。。パッションとかテンションとかに少し欠けているような。そういえば、以前、シューマンの「ライン」を聴いた時も同じように感じた。

メータ本人の弁によれば、彼はブラームスの交響曲とR・シュトラウスの交響詩を指揮することを夢見て指揮者の道を選んだそうだ。そのくらい思い入れが強いはずなのにその気持ちがあんまり伝わってこないような。。気がした。

プロコフィエフ交響曲第5番 : ドラティ

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先日ラトル/バーミンガム市響の演奏で聴いたもののいまいちピンと来なかったプロコフィエフの交響曲第5番を再チャレンジ。今日はマーキュリーのボックスに入っていたドラティ/ミネアポリス響の演奏で聴いてみた。このCD、交響曲の他にロンドン響とのコンビでスキタイ組曲と「三つのオレンジへの恋」組曲も収録されている。

スキタイ組曲から始まるが、この曲はラトルのCDにも併録されていたせいか、前回の視聴に比べてすいすい頭に入ってくる感じ。この曲も「三つのオレンジへの恋」組曲も気持ちを入れて聴いたら、なかなかエキサイティングで良い曲である。

肝心の交響曲だが、一度聴いて全体のイメージがあるせいか、冒頭いきなり出てくる第1主題からとてもしっくりくる。ドラティの指揮はいつもどおり明晰なもので、過度な思い入れや強調なくオーケストラを節度を持ってコントロールする。前回聴いた時はいつまで続くのかと思った第一楽章もわかりやすく盛り上がるし、どこかで聴いたことのある親しみやすいメロディの第二楽章もメリハリがはっきりしていてとても良い。よくわからない曲だなあと思っていたが、今日は結構好きかもと思えてきた。

二つの組曲が57年、交響曲は59年とステレオ初期の相当古い録音だが、そうは思えないほど音は鮮明。最新録音のようにコンサートホールの空気感のようなものは感じられず、どことなく人工的な音ではあるが、それでも当時のマーキュリーの録音技術は凄いと思う。
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